シーファー大使の集団的自衛権行使発言に抗議する

1 シーファー駐日アメリカ大使は1月14日、集団的自衛権の行使を認めるよう憲法解釈を見直すべき旨を発言した。
  私たち自由法曹団東京支部は、東京の弁護士から成る法律家団体として、シーファー大使の集団的自衛権行使発言に抗議する。

2 シーファー大使はミサイル防衛 (MD) の円滑な運用など日米同盟を強化するために集団的自衛権(の憲法解釈)は議論すべき旨を述べた。
  憲法9条は戦争放棄と戦力不保持・交戦権否認を規定している。政府は解釈改憲を進めてきたが、 それにもかかわらず憲法の規定によって集団的自衛権の行使は禁じられているとの政府解釈を示している。 シーファー大使の発言はこの解釈を変更し日本をアメリカとともに海外で武力行使のできる国に変えようとするものである。
  集団的自衛権行使に向けての動きは麻生首相自身が行っている。今年1月の年頭記者会見でも集団的自衛権行使について議論される必要があると発言した。 その発言の中では福田前首相の下では事実上たなざらしであった 「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、 いわゆる安保法制懇の報告書を持ち出し、それを踏まえて検討したいと述べた。

3 シーファー大使が集団的自衛権行使の理由としてMDをあげたのも重大である。自衛隊は迎撃ミサイルPAC3などの配備を進めようとしている。 政府は集団的自衛権行使に触れないとしているが、アメリカ大使自身がMDの円滑な運用のためとして集団的自衛権行使を発言し日本政府の説明の欺瞞を示した。 さらにMDの円滑な運用が日米同盟のため、すなわちMDが日本防衛のためではなくアメリカのためであることも明らかにした。 PAC3の新宿御苑での展開・ 「調査」 など行われている下、東京都に暮らし働く人々はシーファー大使の発言を深刻に受け止めざるを得ない。

4 そもそも憲法解釈は日本国民が決する問題であり、外国の大使がその変更を迫ることは内政干渉である。 しかもシーファー大使は1月15日の離日を前にしてこの発言を行った。離日すれば大使としての責任を問われることはない。 しかし、このこと自体発言に正当性のないことを示している。

5 私たち自由法曹団東京支部は、集団的自衛権行使の動き、またアフガニスタンへの派兵を含めた自衛隊の海外派兵策動に強く反対するものである。

2009年1月15日
自由法曹団東京支部
支部長 島田修一