表現の自由を侵害する東京都安全・安心まちづくり条例改正に反対する
1 2009年2月開催の都議会で東京都は東京都安全・安心まちづくり条例 (以下 「安全安心条例」 という) の改正を狙っている。
しかし、この改正は表現の自由の重大な侵害をもたらす。
私たち自由法曹団東京支部は東京の弁護士から成る法律家団体として安全安心条例の改正に反対する。
2 都は安全安心条例に 「来訪者は、・・・繁華街に関する指針に基づき、当該繁華街等の安全・安心を確保するために必要な措置を講ずるように努めるものとする。」
との規定を追加しようとしている。
上記改正文言中の指針に関し、2月9日発表された 「東京都安全・安心まちづくり有識者会議報告書」 では繁華街等の来訪者に対し
「街頭や歩行者天国において大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為を慎む。」 とあり、この種の指針が定められる恐れがある。
しかし、「大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為」 とは極めてあいまいな表現であり、憲法を守り活かす取り組み、反貧困の街頭行動、
労働組合等のストリート相談・社前行動などが禁止される危険性が高い。
これは表現の自由の重大な侵害であり憲法21条、28条に反する。
新自由主義、構造改革路線の矛盾、破綻により政府や大企業への要請行動が大きく、しかも創意を生かした多彩なものが東京都の各地で繰り広げられている。
この改正はそうした 「パフォーマンス」 の抑圧をもたらすものである。
昨年の映画 「靖国」 上映の自粛に見られたように表現の自由の危機が進行している。
安全安心条例の改正は表現の自由の危機をさらに深化させるものであって認められるものではない。
3 安全安心条例の改正案はその 「対象地域」、「対象者」、「とられる措置」 のいずれも限定がなく、三重の無限定となっており、警察の行動が規制されず、
著しい人権侵害を招くであろう。
どこか一箇所で「街頭や歩行者天国において大衆に多大な迷惑となるパフォーマンス等、街の秩序を乱す行為を慎む。」 との規制が適用されれば、
顧客はどこの町の商店街でも規制されることを恐れて、その商店街のお祭りやパフォーマンスなどにも参加を控えるようになる可能性もある。
これは商店街の発展にもつながらない。そればかり住民間の対立、相互監視につながるであろう。
4 安全安心条例改正の理由として秋葉原事件などがあげられる。
しかし、秋葉原事件は 「多大な迷惑となるパフォーマンス」 を行っていた者が起こした事件ではなく改正とは何の関係もない。
むしろ秋葉原事件は新自由主義、構造改革路線の矛盾を市民につきつけるものとなった。
秋葉原事件の教訓は新自由主義、構造改革路線の見直しであり、安全安心条例改正は進むべき方向をそらせてしまうものである。
5 私たち自由法曹団東京支部は表現の自由の重大な侵害となる安全安心条例改正反対のため全力を尽くすことを宣言するものである。
2009年2月12日
自由法曹団東京支部幹事会
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