オススメ図書
「ひめゆりの沖縄戦 一少女は嵐のなかを生きた」 伊波園子著
飯室 勝彦
第二次世界大戦の末期、沖縄は本土決戦に備える防波堤として地上戦に巻き込まれた。徴兵とは別に若者から高齢者までさまざまな名目で動員され県民の半分以上、二〇万人余が戦死した。一〇代の少女たちも動員され、その実態は出版、語り部活動などによって伝えられているが多くは大人の目を通したもので若者によるものは少ない。
この本は動員され戦力として戦争のなかを生きざるを得なかった少女によるレポートである。“飯あげ”(食料運搬)、傷病兵の看護、兵舎がわりの壕堀りなどの作業は彼女たちを死の危険にさらした。米軍に追われた日本軍はついに最南端まで追い詰められ少女たちの犠牲も増えていった。
読みやすい平易な文章はいわゆるひめゆり部隊の一員だった一八歳の一少女の目を通して、多数の住民を死に巻き込んだ沖縄戦の実相を浮かび上がらせる。
関係者の高齢化が進み、戦争の実相を伝える担い手の後継者難が伝えられるなかで貴重な記録である。
(岩波ジュニア新書・860円+税)
こんな記事もオススメです!