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『検証 政治とカネ』上脇 博之著(岩波新書)をオス。

2024年8月19日

梓澤 和幸

裏金。問題をカネにまみれる自民党政治家、政治不信の問題とみるだけでは著者の情熱の根源に迫れない。
南西諸島への自衛隊配備、軍備拡大、40兆円もの軍事費支出、マイナンバーカードの強行、健康保険証の廃止、集団的自衛権の容認、改憲強行など国会無視の内閣暴走(独裁)政治に歯止めがかからない。
本書は戦争も止められないか、とのあきらめを作り出す真犯人を「裏金」だとする。
そのゆえんを書こう。

政治資金規正法の抜け道を解明する。政治不信をうけて法は政治家の下に集まるカネの出入りの透明化をはかろうとした。しかし、自民党は抜け道をこっそりと盛り込んだ。
著者は二つの抜け道を指摘している。

第1 政党はカネについて法の規制を受けない
自民党が企業からいくらカネをもらっても、もらったカネを政治家個人に渡しても法は規制をしていない。軍需産業やマイナンカードに関わるIT産業がいくら献金しても闇の中。
自民党は政党交付金と企業献金により年間248億円も収入があります。
(15頁)ここから幹事長(たとえば二階議員)に年間10億円のカネが支出され、その中から議員個人にカネが渡される。この流れは法による記載義務がない。
二階議員ももらった政治家も記載義務がないから自分の好きに使えるお金ができる。
そこで国民の目が届かない「裏金」ができる。
こうして巨大企業は政治家や内閣が繰り出す政策をカネで動かす。カネを持つ政党幹部に議員は逆らえない。

第2 企業と個人による政治家個人への寄付を禁じた法は政治家個人主催の政治資金パーテイーを禁止しなかった。企業がパーテイー券を買えば売り上げは政治家に入る。

一枚2万円が相場のパー券だが9枚までなら政治家は法の定める収入の政治資金収支報告書に記載を免れる。しかも年間通しての買い上げ上限規定はないから政治家を何度もパーテイーを開いてカネを集金できる。
今国会で自民党が提案した改正案は法の欠陥に目をつむったままだった。

第1の抜け穴、政党から政治家への資金の動きは、寄付は禁止したが政策活動費の名目をつければ見逃し。
第2の抜け穴政治資金パーテイーについては一回の上限を20万円から5万円に下げただけ。禁止はしない。
政党への企業献金には禁止がかかっていないので、軍需産業から自民党、IT産業から自民党、その後自民党から議員個人に政策活動費の名目で政治資金を流しても政治資金報告書への記載義務はない。
何も変わらなかった!

<何が状況を変えるか。――本書の示す方向性>

地元の政治家の政治資金報告書を読むことそこから政治家の資金生活をイメージすること。告発などの行動を考えること。
それは市民の政治感覚、市民団体の行動の質をも変えてゆく。
裏金問題で検察の捜査は終わったかのごとき報道がある。
しかし著者の刑事告発はまだ途中である。不起訴になった世耕弘成議員と萩生田光一議員については検察審査会への申し立てをして起訴をもとめた。

結びのことばが胸に残る。
「国民が怒りを忘れ、政治を本質的に変えることをあきらめてしまったら金権政治は続きます。怒りは今後も続いて日本政治を大きく変えることになるのか。注目したい。」

検証 政治とカネ – 岩波書店 (iwanami.co.jp)

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