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首都圏建設アスベスト訴訟(損害賠償請求事件)

2014年5月5日

事件名

首都圏建設アスベスト訴訟(損害賠償請求事件)

事件の内容

国及び石綿含有建材製造企業に対し、慰謝料として1被災者あたり一律3500万円と弁護士費用350万円、合計3850万円を請求

係属裁判所

(1)東京訴訟 東京高等裁判所第10民事部

事件番号 平成24年(ネ)第8328号(原審 東京地裁民事第41部)
第1次訴訟 平成20年(ワ)第13069号
第2次訴訟 平成22年(ワ)第15292号

(2)神奈川訴訟 東京高等裁判所第5民事部

事件番号 平成24年(ネ)第4631号(原審 横浜地方裁判所第9民事部)
第1次訴訟 平成20年(ワ)第2586号
第2次訴訟 平成22年(ワ)第2160号

次回期日:
(1)2014年4月11日(金)午後3時~東京高裁101号法廷
(2)2014年4月15日(火)午前10時~東京高裁101号法廷
※当事者が多数のため、一般傍聴席の数が限られており、抽選になることが予想されますので、傍聴希望の方はお早めに法廷にお越し下さい。

紹介者:武井一樹弁護士
連絡先:首都圏建設アスベスト訴訟統一本部
(東京土建一般労働組合内 電話 03-5332-3971)

当事者

原告ら)東京、千葉、埼玉、神奈川各都県在住の建設作業従事者で、1960年代以降、建設作業に従事し、石綿含有建材を使用して直接、あるいは間接的に、 石綿粉じんに曝露したことにより、重症の石綿関連疾患 (石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性石綿胸水) に罹患し、 労災又は石綿救済法上の認定を受けた被災者及びその遺族

1、東京訴訟原告

第1次 169名(東京137名、埼玉21名、千葉11名)
第2次 139名(東京112名、埼玉22名、千葉5名)

2、神奈川訴訟原告

第1次 40名
第2次 36名
(原告の人数は、患者単位)

被告ら 国及び石綿含有建材製造企業46社(提訴時)
石綿含有建材製造企業約200社の中から、(1) 原則として資本金が3億円以上の大企業 (中小企業基本法で3億円以下を中小企業としているため。) で、 (2) 10年以上主要な石綿含有建材を製造している企業を選定

請求の趣旨の概要

国及び石綿含有建材製造企業46社に対し、慰謝料として1被災者あたり一律3500万円と弁護士費用350万円、合計3850万円を請求

原審での主張の概要          

ア 国の責任

(ア) 判断の枠組み
憲法13条、25条及び27条2項に基づき、国は生命・健康の侵害から国民を保護する義務 (基本権保護義務) を負っているという基本的視点に立ち、 筑豊じん肺最高裁判決及び水俣関西訴訟最高裁判決が示した 「国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、 目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、 その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。」 という判断枠組みを踏まえて国の規制権限の不行使が著しく不合理であったこと

(イ) 旧労働基準法・労働安全衛生法に基づく責任
旧労基法・安衛法に基づく内閣総理大臣及び厚生労働大臣の規制権限の不行使の責任として、 石綿粉じんの発ガン性が明らかになっているにもかかわらず、規制が余りにも遅すぎたこと。

具体的規制権限に基づく義務としては、(1) 石綿の製造等の禁止 (1975年)、(2) 石綿吹付に関する規制として (ア) 石綿吹付け禁止措置(1970年)、 (イ) 作業従事者への送気マスクの支給・使用の義務付け(1965年)、特化則改正で石綿含有量5%以下の吹付け作業での送気マスクの支給・ 使用の義務付け除外(1975年)、(3) 石綿粉じん曝露防止の規制として、 (ア) 定期的粉じん測定の義務付(1960年)と個人サンプラーによる測定(1965年)、(イ) 石綿含有建材加工時における曝露防止規制(集じん機付電動工具、 作業場所の隔離及び排気措置、局所排気装置の使用〔1960年〕、プレカット工法〔1970年〕)、(ウ) 電動ファンマスクの支給・使用の義務付け(1965年)、 (エ) 吹付石綿の剥離・除去対策(1965年)、(オ) 建材メーカー等に対する警告表示義務に関する規制・監督(1972年)、 (カ) 作業現場における石綿取扱上の注意事項等の掲示に関する規制・監督、(キ) 石綿関連疾患についての特別教育(1960年)の各義務がありながら、 これらの規制権限の行使を怠ったこと。

(ウ) 建築基準法に基づく責任
ⅰ 建築基準法2条ないし9号に基づく内閣総理大臣及び建設大臣の責任として、(1) 石綿建材について、(ア) 内閣総理大臣・建設大臣は、 1975年以降建築基準法2条7号ないし9号に基づく政令・告示で石綿含有建材の指定・認定を行うべきではなく、 (イ) 1975年以前に行った指定・認定等を行った石綿含有建材を取り消し又は削除すべきであったこと  (2) 石綿吹付けについて、建設大臣は、1970年に耐火構造を指定した告示から石綿吹付けを使用した構造の指定を取り消すべきであったこと。

ⅱ 建築基準法90条に基づき内閣総理大臣は、1960年以降、石綿粉じん暴露防止の技術的基準を定め、順次上記ア (イ) の規制をすべきであったこと。

イ 石綿含有建材メーカーの責任

石綿含有建材メーカーの不法行為責任ないし製造物責任。

(ア) 共同不法行為(民法719条)
建材メーカーは製品生産者として高度な安全性確保義務を負い、注意義務の内容として (1) 1955年(遅くとも1960年)以降、 石綿含有建材使用に係る警告義務 (ⅰ 石綿含有の事実、ⅱ 粉じん吸引により肺ガンを含む重篤な石綿疾患に罹患する危険性、 ⅲ 危険を回避するため石綿粉じんを吸引してはならないこと)、(2) 1965年(遅くとも1975年)には石綿不使用義務があり、いずれの義務にも違反していること。

(イ) 製造物責任法3条
建材メーカーが製造・販売した石綿含有建材は、(1) 製造上不可欠ではない発がん物質である石綿が含有されているという設計上の 「欠陥」、 (2) 使用過程において石綿粉じんを吸入した場合には重篤な石綿疾患に罹患する可能性があること等の警告・表示が欠けているという警告・ 表示上の 「欠陥」 があり、製造物責任法が施行された1995年7月1日以降に石綿含有建材を製造・ 販売したメーカー30社は製造物責任法3条に基づく責任を負うこと。

提訴までの経過

石綿は 「魔法の鉱物」 と言われ、使用禁止された2006年までに約1000万トンが輸入されており、 その7割とも9割ともいわれるものが建築材料に使われてきた。 しかし、国と石綿含有建材製造企業は、既に1950年代半ば、遅くとも1972年には、石綿が発ガン性を有する極めて危険な物質であるということを知りながら、 経済性や効率性を優先させ石綿含有建材を広範かつ大量に使用させて、建設作業従事者の生命と健康を犠牲にしてきた。                         そして、「クボタ・ショック」 を契機に、石綿被害は社会問題化し、石綿新法が制定されたが、国と建材メーカーは、石綿新法の制定をもって、 自らの法的責任を否定したまま建設作業従事者の石綿被害問題についても決着をつけようとしている。 このまま国と建材メーカーの誤った石綿政策と不十分な施策を抜本的に改めさせなければ、(1) 過去の石綿粉じん曝露により、 今後も建設作業従事者の中から多数の石綿被害者が発生することが確実に予測されるが、 これらの被害者が石綿被害に見合った補償が得られないだけでなく、 (2) 建物の建替えや解体で発生する石綿粉じん曝露の完全な防止対策がなされず、新たな被害者を生み出す危険性がある。
そこで、これらの思いを共有する建設作業従事者である石綿被害者たちが、国と建材メーカーの法的責任を明らかにすることによってこそ、 「あやまれ、つぐなえ、なくせ石綿被害」 という自分たちの要求を全面的に解決する展望が開けるものと確信して、各所属労働組合の支援を受け、 首都圏の石綿被害者とその遺族が大同団結し、本件訴訟を提起した。

提訴後の経過

1 東京訴訟

第1次 2008年5月16日提訴
第2次 2010年4月23日提訴
第1次訴訟と弁論併合

2 神奈川訴訟

神奈川訴訟においては、横浜地裁が2012年5月25日、原告らの請求を棄却する判決を下したため、原告らは東京高裁に控訴し、 東京高裁第5民事部において審理されている。
東京訴訟において東京地裁は、2012年12月5日、1979年ころには国も建築現場における石綿ボードの切断作業等について、 石綿粉じん暴露による健康障害の危険性を容易に認識し得たにもかかわらず、防じんマスクの備え付け義務にとどめていたことは不十分であったと認定し、 その上で、遅くとも1981年には、労働者に防じんマスクを着用させることを罰則をもって事業者に義務付けるなど、 規制権限を適切に行使すべきであるにもかかわらず、これを怠ったことは著しく不合理であるとして国の責任を認めた。
しかしながら、判決は、労働安全衛生法の保護対象は労働者であり、また建築基準法90条は労働災害を防止する規定ではないとして、 一人親方・零細事業主であった原告の請求を棄却したほか、それ以外の国の責任及びメーカーの責任を認めなかった。 このため、原告は控訴審において判決の誤りを正すべく全員一致して東京高裁に控訴した。 一方、国も敗訴部分について控訴し、現在、東京高裁第10民事部において審理されている。

【本件訴訟のめざすもの】

原告団、弁護団及び支援する労働組合は訴訟統一本部を組織して活動している。 そして、国と建材メーカーの法的責任を明確にして政策を抜本的に転換し、アスベスト被害を根絶する必要があると考えている。 そのために、裁判とともに、下記の4項目の実施を求める 「全てのアスベスト被害者を補償し、被害の根絶を求める請願」 の200万筆の署名運動にも取り組んでいる。

1 「石綿の健康被害の救済に関する法律」 を、すべてのアスベスト被害者を対象とし、十分な救済・補償が受けられるよう抜本改正すること。
2 「被害者救済基金」 制度を、被害を生んだ責任のある国・石綿含有建材製造企業が拠出して設立すること。
3 建設現場従事者と近隣住民のばく露防止対策を徹底すること。
4 アスベスト疾患の医療体制と治療方法、アスベスト除去対策など総合的なアスベスト対策を行うこと。

asbestos-20080516

2008年5月16日
文責 弁護士 武井一樹

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