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安倍国葬反対記者会見 外国特派員協会

2022年9月14日


安倍国葬反対記者会見 外国特派員協会

安倍元首相の国葬に反対する実行委員会
コーディネーター
 梓澤和幸 : 弁護士
発言者
 高田 健 : 戦争させない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会共同代表
 稻 正樹 : 国際基督教大学教養学部元教授、同大学平和研究所顧問
 郷路柾記 : 弁護士、霊感商法弁護団共同代表
 坂本洋子 : NPO法人mネット・民法改正情報ネットワーク理事長

スピーチテキスト
高田 健

● 私の所属する「戦争させない・9 条壊すな ! 総がかり行動実行委員会」は、2014年から2015年にかけての安倍晋三政権による憲法違反の集団的自衛権行使を合憲解釈するための「安保法制」に反対して、従来の日本の様々な違いを持った平和運動が大同団結して結成した組織です。加盟団体規模で言えば、現在の日本の平和運動団体の最大のネットワーク組織です。
 当時、安保法制反対の署名を1500万筆ほどあつめ、2015年 8 月30日には国会周辺に12万人、全国で50万人のデモを組織した。
● 今回の安倍国葬に際しては総がかり行動実行委員会が呼びかけて、現在首都圏の82の市民団体が参加して「安倍元首相『国葬』反対実行委員会」を結成 ( 8 月 6 日) され、全国の市民運動と連携して連日の反対行動をしている。
 すでに 8 月31日は国会正門前で4000人の大行動を行い、このあと、9 月19には代々木公園で、10000人規模の大集会を予定している。ここには国会議員や、落合恵子 (作家)、澤地久枝 (作家)、鎌田慧 (ルポライター)や福島原発、沖縄基地闘争、青年、女性などが発言し、渋谷の街を 2 コースに分かれてデモ行進する。
● 国葬予定直前には実行委員会は、多様な形で、連日、街頭行動を入れており、とくに26日の新宿駅西口の大行動と、27日、国葬当日の国会正門前大行動には力を入れている。
 私たちは、政府が「日本武道館周辺について参列者以外の立ち入りを制限する」と決めた「実施概要」に抗議し、立憲主義の象徴である国会議事堂正門前で反対の大行動を実施し、武道館に参加する人々を上回る規模の市民の結集で、世論の多数派の意思表示をおこないたい。
 ここで、立憲野党各党国会議員と、市民から前法政大学総長の田中優子さん、政治学者 (高千穂大学) の五野井郁夫さん、劇作家の坂手洋二さん、日本の伝統仏教から浄土真宗の小武正教 (念仏者九条の会事務局長) さん、在日外国人組織から、韓国の「日本軍慰安婦問題」に取り組むヤン・チンジャさん、在日ビルマ人市民労働組合のミン・スイ会長などが発言する。
● 安倍氏の国葬には実施のための法的根拠が存在せず、憲法が保障する信教の自由、良心の自由に反する憲法違反の企てだ。岸田首相が安倍国葬を強行するねらいは、多くの人びとが疑問や批判を持っている安倍氏の政治的立場や政治姿勢を全面的に容認し、国家として安倍政治を賛美、礼賛することにある。
● 死を悼む人々の心につけこみ、戦争を賛美した戦前のように安倍元首相が推進し、岸田首相が継承する憲法「改正」や大軍拡など「戦争する国づくり」に人々を動員することは許されない。

稻 正樹
 私は、憲法研究者の観点から国葬に関する憲法上の問題点を指摘したいと思います。
1. 国葬は⼈の命に序列を設けるものであり、⼤⽇本帝国憲法の下での⾝分制秩序に起源をもつ。戦前の⽇本においては国家に偉勲のあったものを、天皇が特に選んで国葬とすることが⾏われていた。戦前の国葬は、「天皇や国家に尽くした⼈を国をあげて悼む」という論理のもと、天皇の⽀配イデオロギーや国家の統制を⾼めるための⽅法として利⽤された。
2. 従って、今回の国葬儀の執⾏は、法の下の平等を定めている現⾏憲法の⽇本国憲法14条 1 項と⾝分制度の廃⽌を定めている14条 2 項に反するおそれがある。
3. 旧憲法のもとで国葬を実施する根拠となっていた国葬令は1947年に、「⽇本国憲法施⾏の際現に効⼒を有する命令の規定の効⼒等に関する法律」によって、失効した。
 憲法の規定する思想・良⼼の⾃由、政教分離原則と相容れないためである。
4. 政府は 7 ⽉22⽇に内閣府設置法に基づいて閣議決定を⾏い、9 ⽉27⽇に国葬儀を実施しようとしている。しかしこの法律の規定は国の儀式と内閣の⾏う儀式を実施する場合の所管が内閣にあることを定めているだけで、それ以外に国葬の実施を定めた法律は存在していない。したがって、国葬にはいかなる法的根拠もない。
5. ⽴憲主義のもとにおいて、内閣をはじめとした国家機関は、法律が授権していないことを⾏うことはできない。⼀⽅的・恣意的な決定を⾏い、国会においてきちんとした説明を⾏わないという政府の姿勢は、国⺠代表機関である国会を無視・軽視するものであり、⺠主主義の根幹を揺るがす⾏為である。
6. 野党は臨時国会の召集決定を要求したが ( 8 ⽉18⽇)、内閣は不当にも臨時国会の召集を拒んだ。そのかわりに、衆参の議院運営委員会でわずか1時間半ずつの閉会中審査で説明を⾏い ( 9 ⽉ 8 ⽇)、批判をかわそうとした。このような姿勢は、国権の最⾼機関である国会 (41条) を愚弄し、野党の臨時会開催要求権 (憲法53条) を否定し、また国庫⽀出を国会の議決のもとにおいた財政⽴憲主義 (憲法83条) をないがしろにするものである。
7. 官房⻑官は「国葬当⽇の公⽴学校の休校はない」としているが、政府の国葬の実施やテレビで流れる映像は、⼀般国⺠に⼤きな影響を与える可能性がある。政府は、国⺠が弔意を表すための時間を指定して要請したり、公共機関での弔旗の使⽤を推奨したりする可能性がある。現在、⽂部科学⼤⾂が国公⽴⼤学に対して⾏っている国旗掲揚の⾏政指導は、強⼒かつ広範に実施されるかもしれない。
8. これらはすべて、憲法が保障する基本的⼈権の侵害にあたる。第⼀に、⽇本国憲法第19条が保障する「思想・良⼼の⾃由」を侵害することになる。この⾃由を⾔い換えれば、⼈間の核となる思想を守る「内⼼の⾃由」ということになり、この⾃由を制限することは厳しく吟味されなければならない。第19条によれば、特に注意しなければならないのは、国葬が学校⾏事として⼦どもに参加を強制してはならないことである。
 第⼆に、第20条で保障された「信教の⾃由」を侵害するおそれがある。⽇本政府は、国葬は宗教⾊のない形で⾏うことを想定しているというが、⽇本では、個⼈の死に関するものである以上、宗教儀礼の⼀環として受け⼊れる⼈が多いだろう。
 第三に、憲法21条で保障された「表現の⾃由」を侵害することになる。最後に、このような国葬は、政府の説明では強制されないとされているが、実際には、個⼈の信念に反して⾏われることになるので、「個⼈の尊厳」や、13条で保障された個⼈の⼈間としてのあり⽅を決定する権利に反する。
9. もしも、国葬をもって死者を必要以上に美化し、それを国⺠の記憶に残し、政治的効果を意図し、現政権の継続を願うのであれば、そのことこそ国家の⾏為を厳格に制約しようとする、⽇本国憲法の構造に反することになる。

郷路柾記
 私は1987年 3 月19日に札幌地方裁判所に統一協会の伝道・教化活動、信者獲得の方法が、対象となる国民の信教の自由を侵害して違法であるという訴訟に発展する裁判を起こしました。この裁判は、その後20名の原告でおこなわれるようになり、14年後の2001年 6 月29日、正体を隠した伝道は、「原告らの信教の自由を侵害するおそれがあったもので違法」として原告らが全面的に勝訴しました。この訴訟は、最高裁まで闘われましたが、原告の勝訴判決が維持されました。その後私は、現在まで、合計100名程度の原告によって、合計 7 件の訴訟の原告ら代理人として活動しています。
 そのような体験から私は、統一協会の教義や、受講生や統一協会員の心理についての認識を持つようになりました。その経験にしたがって、発言をします。

 統一協会員にとって、すべての亡くなった人は霊界で生きています。それは統一協会員にとっては、おとぎ話でも空想でもなく、リアルな、現実的な認識です。安倍元首相も例外ではありません。安倍元首相は、これからも永遠に霊界で生き続けます。
 人間は神のような人格に成長して地上天国=神主権の国で生活するようになる。そして、死んだらそのまま天上天国で生活するようになる。それが、統一原理による理想国家論です。ところが、アダムとエバの堕落によって、国家主権もサタンに奪われたため、現在の国家はサタン主権国家、地上地獄になってしまっています。その主権を神に取り戻し、地上天国=神主権の国家を作らなければなりません。それは、サタンの勢力との激しい闘いを神側の勢力が勝ち抜くことによって、実現されます。統一協会員は、教義によってそう信じています。
 2012年、第二次安倍内閣について、次のような一信者の、統一教会での講義を受けての感想文があります。「神様の願う世界が地上に創られるように、今後、大変化が現れる時に入っていきますね、日本は国民が目覚めてきていますが、安倍首相を棟梁として国民が頑張りましょう。」すなわち、統一協会員にとって、生前の安倍元首相は「神様の願う国を地上に実現する」という統一協会の宗教的、政治的目的のために棟梁=指導者、中心の人として教えられていたのです。現在、霊界で生きている安倍元首相は、生前の行いや、その悲劇的な死の故に、神の願う国実現のための事業を、天から助けてくれる人・サタンや悪霊に対して共に闘ってくれる人達の指導者として位置づけられると思います。
 これからのことを考えてみても、国の進路を決める重要な選挙や、憲法改正のための国民投票などの課題があります。それらの一つ一つについて、統一協会員は神主権の国家建設の道程における神側とサタン側の闘いの一里塚という捉え方をします。その闘いの中心に国葬によって国民全体の弔意を受けたとされる安倍元首相が霊界から私達の闘いを励ましてくれている、サタンや悪霊人に対し、共に闘ってくれていると認識すると思います。統一協会員は上司の指示があれば違法な行為も正しいこととして実践することができる人達です。したがって統一協会員の違法な、あるいは社会的に不相当な行為をも、国葬が励ますことになってしまうだろうという危惧を禁じ得ません。信教の自由が侵害された状況の統一協会員を、さらなる違法行為者とさせないためにも、私は国葬に反対します。

坂本洋子
 日本には結婚すると姓を夫婦で一致させないといけないという夫婦同姓強制の制度がある。そして、日本ではほとんどの女性が男性の姓に変えており、これが不平等に当たるということで、私はその民法改正の運動をしているNPOの理事長をしている。
 安倍氏の国葬反対運動の理由としては、統一教会との関係、霊感商法などが問題として挙げられている。しかし、反対の理由はそれだけではない。安倍氏が教育に介入してきたこと、ジェンダー平等を否定し、それを教育で教え込もうとしてきたという点が挙げられる。
 今年アメリカで中絶は憲法上の権利ではないという判決が下された。判事のうち 9 人中 6 人が政治に影響されてこうした判断を下した。これと同じような人事による政治的な介入をやってきたのが安倍元首相である。
 家族の多様化を攻撃し、また「リプロダクティブヘルス&ライツ」の「ライツ」を攻撃し、性教育を徹底的に攻撃してきたのが安倍氏であった。
 自由、民主主義、法の支配を共通認識として持っていると、安倍氏は国際社会で高々と言ってきたが、実際にはこれを否定してきた。女性・ジェンダー問題に取り組んできた者からすれば、安倍氏は、女性・ジェンダーの分野において不平等を推し進めてきた人物である。こうした理由から、私たちは国葬に反対している。

 
収録日 : 2022年 9月14日
制作 : NPJ

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