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 「グレーゾーン」――それは尖閣での戦端開始準備だ

寄稿:NPJ代表 弁護士 梓澤和幸

2014年5月28日

2014年5月21日毎日新聞朝刊一面トップ記事にぞっとした。

「グレーゾーン 首相判断で自衛隊出動」の大見出し。本文に「尖閣列島への自衛隊の出動を相手国が開戦の口実に使う可能性もゼロではなく、一歩間違えれば戦争に発展しかねない」とあった。首相判断一任の点、5月25日共同47ネットニュースでも報道。

「グレーゾーン」は自公協議の論点とか、集団自衛権の陰に隠れたマイナーな論点と扱われている。私見によれば、このとらえ方、報道の仕方は弱い、弱すぎる。本論稿はこの弱さの克服のために書かれた。

グレーゾーンとは何か。尖閣列島に大量の中国漁船が押し寄せ、島に漁船の乗組員たちが上陸しようとするか、上陸して占拠してしまった場合に、自衛隊は出動できるか、という問いである。

現行の武力攻撃事態法、自衛隊法の下では防衛出動はできない。漁船による離島の一時占拠は、日本への武力攻撃事態でも、同予測事態でもない、と解されるからである(自衛隊法76条参照)。

かかる場合、海上保安庁、沖縄県警の警察力をもってしては対応できないときに、どうするか。自衛隊の出動を可能にする法整備を、という自民党と、海上保安庁の銃火器を強化すること等で対応しようとする公明党の対応等が対立しているとの解説が主流である。しかも、集団的自衛権の容認の可否という「大論点」に付随する小論点とされる。その分扱いが小さい。

しかし、憲法問題として相対的にマイナーであるにすぎない。差し迫って日本が戦争に突入する、あるいは引きずり込まれる現実の可能性が大きい。そのリアリティにメディアと法律家の目が向けられていない。首相による集団的自衛権容認のクーデター的記者会見は、尖閣列島での銃火交錯をねらっている(控えめに言えばそれに備えている)。 グレーゾーンは憲法学的にみて、集団的自衛権固有の問題ではない。個別的自衛権の問題である。しかし、尖閣で事を構えようとする公権力総体(首相とそのとりまき、防衛官僚)とすれば、アメリカが尖閣紛争で日本に軍事協力をするか否かは重要であろう。集団的自衛権の容認で、イラン、イラク、アフガニスタンといった遠隔地の軍事紛争に自衛隊の輸送力、武器、隊員の生命を差し出すから、かわりに尖閣で何かあったら米軍にも出動してもらいたい、ということなのだ。集団的自衛権容認とグレーゾーンの二つは、別の憲法的概念問題だが軍事的政治的には一つである。アメリカは日米関係より米中関係を優先している。日本と中国の対立が激化して紛争に発展することを望んでいない。

安倍首相の2013年12月26日の靖国参拝に際し、「失望した」とアメリカ大使館報道官は強い調子の言明をした。オバマ大統領は来日時の記者会見の際に、日中関係の対立をエスカレートさせようとするのは「重大な過ち」と言明した(マスメディアの報道では、「正しくない」とやわらかい表現の翻訳が伝えられた(四月二八日)。たしかに、同時通訳は「正しくない」と通訳したが、原文をたどってみると「重大な過ち」とすべきで、琉球新報ははじめの報道を訂正した)。

アメリカの消極性を示す三つの事実が伝えられている。「日米軍事訓練の突然の中止」「(日米)各級の軍事交流を中止するよう指示が来ている」(アメリカ大使館関係者)「中国軍が尖閣諸島に上陸し、自衛隊が排除にかかったとき米軍はどうするか」と聞かれた在日米軍アンジェレラ司令官は、明示の回答を避けた(いずれも『日本は戦争をするのか』半田滋著 岩波新書 10ページ、11ページ)。アメリカはいざという場合、中立を決めこんで静観するであろう。他方、中国の軍事関係者はアメリカの出方を注目している。そして、日本にやられたら軍事手的に報復するとくり返している(『検証 尖閣問題』孫崎亨編 岩波書店44ページ)。

戦争をさせないためには、安倍首相に退陣してもらうほかない。そこに一点集中すべきだ。

梓澤和幸 (弁護士、NPJ代表)

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