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憲法問題は冷静に

寄稿:飯室勝彦

2022年6月26日


 ホットな場面で決めようとするのは危険なテーマがある。憲法や安全保障の問題は政治的思惑にとらわれない冷静な雰囲気のもとで議論したい。

◎高まる? 改憲論議
 昨今、少なくとも政治家の間では改憲論議が活発になっているように見える。昨国会、憲法調査会は改憲に前向きな維新、国民民主党の牽制もあって、改憲に消極的な立憲民主党も開催に応じ複数回開かれた。7月10日の投票に向けた参議院の選挙戦でも、これまでのように憲法、安保に関する意見表明をためらう候補者は減ったように見える。
 メディアの調査によれば、参議院選候補者の68%は「日本の防衛力強化」に賛成しているという。「改憲に賛成」は前回参議院選の44%から61%に急増した。増加傾向は与野党を問わない。参議院選挙戦では自民、公明両党に維新や国民民主党も加えると改憲発議に必要な 3分の 2に迫る勢いだという。

◎同調改憲論か
 「改憲賛成」の候補者の多くはこれまでどおり「自衛隊を明記する」ためだが、「防衛力の強化」が憲法問題たり得ることを明確に理解しているか疑問が残る。同じように維新や国民民主を支持する有権者はどれだけ憲法を意識しているだろうか。
 むしろウクライナ情勢や中国、北朝鮮の軍拡に影響された雰囲気に同調した同調改憲 (支持) 論という、多くのメディアの指摘が当たっているだろう。ロシアの悪質な侵略行為に対し、日本を含む西欧各国は全面的にウクライナを支援している。支援は当然だが莫大な武器援助を含む支援は「戦争の後押し」とも受け取れる。日本の支援品の中にはドローン、毒ガスマスクなど、冷静に考えれば非軍需品か疑問に思えるものもあったが冷静に議論した様子はないし、それを正面から指摘しにくいのが現状だ。それどころか台頭したのが改憲推進論だ。しかし「自衛隊明記」「防衛力増強」の先に何が予想されるのか、そこまで丁寧に考え、国民に示すのが政治であり、政治家の役目である。

◎へいわをポケットに
 せんそうがこわいから / へいわをつかみたい / ずっとポケットにいれてもっておく / ぜったいおとさないように / なくさないように / わすれないように / こわいをしって、へいわがわかった
 6月24日の沖縄全戦没者追悼式で小学 2年生の徳元穂菜さんは自作の「平和の詩」をこう結んだ。
 「へいわをポケットに」、いまこそ人類が目指すべき道筋を語ってくれた。平和を守るのに保守も革新もない。「皆で大事に平和をポケットに入れておく」それが日本国憲法の大事な精神である。

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