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軍拡に舵を切った岸田内閣

寄稿:飯室勝彦

2022年12月5日


 自民・公明の与党は自衛隊が「敵基地攻撃能力」を保有することに合意した。また岸田文雄首相は2027年度に安全保障関連予算を国内総生産額 (GNP) の 2 %とするよう指示した。
 政府・与党側は「抑止力としての敵基地攻撃能力」であり、「抑止力を高めるための安保関連予算」であることを強調するが、海に囲まれて国境線がはっきりしている日本の場合、要するに他国の領域で軍事活動するための能力を保有しようと言うことになるのではないか。
 安倍晋三政権が強引に推進した安保法制と同様、安保政策の大転換である。
 客観的には中国、北朝鮮を念頭において軍備拡張競争への参加を宣言したように聞こえる。周辺諸国には抑止力とはみなされず、抑止どころかかえって軍事的対抗を誘発して国際情勢の緊張を招かないか。

◎「専守防衛」で憲法と整合性
 かつて日本は軍事力を過信し、多数の国や地域、住民などに大きな被害を与えた末に自らも悲劇的破綻を招いた。
 その教訓から憲法で戦争とそのための軍備を放棄することを宣言し、平和主義の旗を掲げて再出発した。国際情勢、日本国内の政治情勢の変化で自衛隊が誕生し、年々増強されてはきたが「専守防衛」との枠を設けることで、憲法との整合性はかろうじて守られてきた。
 政府側は「専守防衛は今後も堅持する」と強調する。しかし安全保障関連予算の伸びを事実上青天井にし、長距離ミサイルなど米国製兵器を次々購入する日本の動きを見ればどう見ても「専守防衛の方針転換」と映る。周辺各国、とりわけ中国、北朝鮮は日本側が連発する “抑止力” というキーワードに納得しないだろう。
 岸田内閣の “方針転換” は軍備を飛躍的に増強している中国、急ピッチで核兵器開発を進める北朝鮮をにらんだものだ。しかし繰り返す。敵基地攻撃能力とは現実的には他国の領域内で軍事行動ができる能力のことであり、両国を刺激し「抑止」「自衛」のための戦力とみなされないおそれがある。
 岸田首相のキャッチフレーズは「決断と実行」だ。そのことをうたった自民党の選挙用ポスターが街のあちこちに残っている。ポスターの中の岸田首相の笑顔は今回の決断を誇っているように見える。確かに中国などの軍事的膨張という現実を前に肯定的にとらえる向きが少なくないようだ。
 
◎求められる「決断と実行」とは
 だが国民が本当に期待している決断はそんなことではないはずだ。
 例えば外交の場面での岸田首相は西側各国の声明や合意に賛意を表明するばかりで独自性を発揮することはない追随外交に見える。世界に誇るべき平和憲法を持つ国の首相に求められるのは、憲法を生かす外交であり政治であって軍拡ではない。

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