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戦争を回避しよう。

寄稿:法政大学名誉教授・元総長 田中優子

2025年4月11日


 2025年3月、米国のピート・ヘグセス国防⻑官は、日本を「中国共産党の軍事的侵略を抑止する上で不可欠なパートナー」とし、「⻄太平洋でのいかなる有事においても、日本は最前線に立つことになる」と位置付けました。そして「平和を求めるならば戦争の準備が必要」と言い切り、「戦闘力、殺傷力、即応力を高めていくことを期待」 している、と日本政府に伝えました。
 すでに日本は、世界で最も多くの米軍基地と米軍関係者を受け入れ、駐留経費2000億円以上を負担しています。2022年12月には、政府は軍事費を従来の2倍にすることを決め、攻撃能力のある武器を準備すると明言し、地対艦ミサイル、トマホーク、JASSM-ERなどの長射程ミサイルを米国から購入しています。米国はこれ以上、日本に何を期待するというのでしょうか? トランプ政権となり、米国が日本を助けないことは、はっきりしてきました。日本が戦って米国を守るべきだ、と思っているのは、明らかです。そして、米国によるこれらの要求で、中国は武装をよりエスカレートさせていくことでしょう。
 恐ろしいことに、日本は武力以外の安全保障対策をしていません。日本の食料自給率(カロリーベース)はわずか38% で、これは欧米諸国や中国に比べ、信じがたいほどの低さです。米農家は今や時給10円となり、あと10年で米を作る人がいなくなると言われます。エネルギー自給率もわずか12-13%です。シーレーンが閉ざされたら、私たちは戦う前に死に絶えます。
 食料自給率を上げることもせず、国民の避難の方法も考えず、攻撃された場合の医療体制も整えず、原発への攻撃可能性に至っては、防御と停止を考えるどころか再稼働と新設を進めています。
 このような状況下では、私たちの選択肢は「全力で外交努力をすることで戦争を回避する」以外に無いのです。しかしいまだに米国に追従し、中国との外交努力をしているようには見えません。
 「平和を求め軍拡を許さない女たちの会」では日常的に情報交換しています。熊本、大分からは自衛隊と米軍の共同訓練、民間空港・港湾の自衛隊による利用の拡大など、沖縄と同じ軍事拠点化が全国に進んでいる様子が、毎日のように伝わってきます。最初に犠牲になるのは沖縄、特に軍事化が急速に進んだ南西諸島です。次に、現在、合同軍事訓練を展開している九州です。無論、その状況は全国に及ぶことでしょう。そうすれば、日本列島全体が戦場になります。
 戦争は足もとまで来ています。それを止めるのは市民の声と投票行動だけです。

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