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戦争法案反対! 国会で、街で、市民の声がこだました日曜日

寄稿:尾崎 孝史(写真家)

2015年6月17日

「いま、参加者みなさんの輪で国会を包囲することができました!」

梅雨空から晴れ間がのぞいた日曜日の午後。東京・永田町に2万5千人の市民が集まった。呼びかけたのは、「戦争をさせない・9条を壊すな!総がかかり行動実行委員会」。国会周辺の歩道に54台のスピーカーを設置し、正門前のステージでリレーされた演説を生中継した。

国会正門前を行進する参加者  6月14日

国会正門前を行進する参加者  6月14日

「追い込まれているのは我々ではなく、政府・自民党だ」と訴えるルポライターの鎌田慧氏。

「みなさんの闘いに勇気をもらいました。平和を守るため共にがんばりましょう」と話す沖縄の女子学生。

「ポイント・オブ・ノーリターン(後戻りできなくなる局面)を迎えてしまう前に、ぜひ廃案に追い込みたい」と、野党の幹部たちも声をあげた。

列をなす警官隊のそばに2人の男の子を連れた家族がいた。中野区で暮らす友森末菜(とももり まな)さん一家だ。最近、末菜さんはソーシャルメディアを通じて友人たちと安保法案について意見を交わしたという。

「閣僚が言ってることってめちゃくちゃね、という声が増えてきました。国会で3人の憲法学者が違憲と表明してから潮目が変わってきたような気がします」

集会に参加した友森さん一家

集会に参加した友森さん一家

小学2年生の長男は、自宅でニュースを見ながら「ぼくも反対」と話すという。この日初めて目にする国会議事堂を前に、父の肩に乗りプラカードを掲げた。

「たくさんの人が反対している姿を見て欲しくて連れてきました。この法案が通れば息子たちが戦場に送られる。いま、声をあげて止めなくては子どもたちに申し訳なくて」

母の願いが人々の声と響き合いバリケードを越えた。

夕方、渋谷の宮下公園は若者たちであふれかえった。胸に「NO WAR !」とプリントしたTシャツで参加したグループ。折鶴ひとつひとつに「憲」「法」「ま」「も」「れ」「!」の文字をあしらったグループもいた。

リズミカルな音楽を流すサウンドカーを先頭にデモが始まった。渋谷センター街や駅前のスクランブル交差点を練り歩く1時間。「え! 何これ?」「戦争反対?」。同世代のアピールに、沿道の若者たちは携帯電話で写真を撮るなどして目をとめた。

渋谷センター街で声をあげる若者たち 6月14日

渋谷センター街で声をあげる若者たち 6月14日

飲食店に勤める30代の男性は、「普段、ニュースや新聞を見ないので国会で何がおきているのか知らなかった。これからはネットニュースでチェックするようにします」と話す。

デモは総勢3500人にふくれあがった。1人、地方から参加した会社員の村上万里さん(27)は、ゴール地点の広場でこう語った。

「みんなと声を出しながら歩けて楽しかった! 平和でなきゃと思うけど、なかなか自分のまわりでは行動を起こせなくて。これからは憲法のことをもっと知って、友だちと話してみたいです」

デモを主催した若者憲法集会はこの日、戦争や人権、沖縄の問題などについて分科会を行った。「学生が考える憲法9条の価値」には2百人ほどが参加し、2人のゲストと意見を交わした。太平洋戦争で亡くなった学生が遺した絵を展示する無言館館長の窪島誠一郎氏は、「戦死した学生のことを美談にしてはいけない。彼らの生への渇望から戦争にあらがう勇気を受けとって欲しい」と語った。人権派弁護士として数々の裁判を闘ってきた梓澤和幸氏(NPJ代表)は、「敵は空気なんだ。みなさんが家庭で、街で、学園で、『政治の話なんかしたらまずいかな』という空気を感じたら自分に問いかけて欲しい。『こんな空気に負けるのか!』と」と訴えた。

主催者の1人、大学2年生の黒田朝陽さん(19)は、1日の取り組みを振り返ってこう話す。

「『空気に負けてはいけない』という梓澤先生の言葉は心に残った。この政権を生み、戦争法案を作らせてしまったのは私たち市民の責任なのかもしれない。これからも、おかしいと感じたことを声にして伝えていきたい」

若者憲法集会で話す梓澤和幸氏と窪島誠一郎氏 世田谷区民会館

若者憲法集会で話す梓澤和幸氏と窪島誠一郎氏 世田谷区民会館

文・写真 尾崎 孝史(写真家)

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