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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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読売新聞憲法世論調査の結果が示す憲法改悪に与(くみ)しない世論

2014年4月23日

3月15日に発表された読売新聞の全国世論調査(2月22~23日、面接方式)は改憲派の読売新聞の調査したデータであるだけに注目に値する。
これによると、「改憲しないほうがよい」 は昨年3月時の調査よりも10%増加して41%となり、「改憲するほうがよい」 は9%減り42%となって、 改憲への賛否がほぼ拮抗した(この場合、「改憲が必要」 というのは9条だけでなく多様な理由があり、その合計であることに留意する必要がある)。 この両者のあいだには昨年、一昨年と20ポイントの差で改憲派が多いという流れで、改憲派が過半数を占めたのだったが、これに変化が生じた。 この背景をどのように見るかは重要な問題だ。 過去のデータでみると、今回のように両者が拮抗したのは、安倍政権が倒れた直後の2008年と政権交代直後の2010年だ。 なお、この13年ほどで最も改憲が多かったのは小泉政権当時の2004年で改憲が61%、反対が23%というものだった。 ちなみに宮澤自民党政権から、細川連立政権に交代した1993年は、改憲賛成が50%で、反対が33%だった。

年代別では30~60歳代では 「改正」 が 「反対」 を5~10%上回ったが、20代では5%、70代では14%、改憲 「反対」 が 「賛成」 を上回った。 この20代の数字を見ると、先の都知事選での田母神候補の得票数などから 「若者の右傾化」 という議論をストレートに展開するのは必ずしも当たらないと言うことができる。読売は 「30~60歳代 『改正』 多数派」 という中身出しをつけた。

改憲が必要と答えた理由(複数回答)を見ると、「時代の変化から解釈・運用では混乱する」 が49%で最も多く、 次が 「国際貢献に対応できない」 が35%、「自衛隊の存在を明記する」 は30%、「押しつけ憲法だから」 は24%、「権利の主張が多すぎ」 が20%だ。

現在、安倍政権が懸命に進めようとしている解釈変更による 「集団的自衛権」 行使については、「行使できなくてよい」 が6%増えて43%、 「憲法の解釈変更で行使」 が27%で昨年と同じ、「改憲して行使できるようにする」 が6%減って22%となった。 読売新聞は中身出しで2つ合わせて 「集団的自衛権 『容認』 49%」 と書いたが、その実、これも昨年より6%減っており、 安倍政権がねらう 「解釈の変更」 は4分の1しか支持していない。 読売紙はこの 「集団的自衛権」 の項だけ、男女比を示したが、それによると男性は容認が60%で、女性は39%だったという。 他の項目でも男女比や年代別比のデータがほしいものだ。

改憲派が究極のターゲットにする憲法 「第9条」 については、「これまで通り解釈や運用で対応する」 が3%増えて43%、 「厳密に守れ」 が3%増えて17%で計60%が 「改憲しない」 という意見であり、これは2002年以来で見ると2008年、2010年と並ぶ最高値で、 「改正する」 が6%減って30%で完全にダブルスコアであり、ここしばらくの読売の調査では最低値だった。 現在、国会では与党が 「改憲手続き法」 の改定を提案し、将来の改憲国民投票にしなえる動きを示しているが、 この結果をみると、少なくとも 「9条改憲国民投票」 で改憲派が勝利するのは夢のまた夢であり、9条明文改憲は相当に困難であることは明白だ。

「第96条」 は現状の「現在の3分の2条項のままでよい」 が52%、「過半数」 に変えるが24%、 公明党の一部などにある意見で 「『過半数』 と 『3分の2』 を条文で分ける」 が14%だった。 読売の解説は 「改憲賛成派」 は38%だったというが、それは牽強付会にすぎるというべきものだろう。 反対が過半数であり、賛成は4分の1に満たなかったと言うのが冷厳な事実だ。

例年、読売はこの世論調査と同時に 「社説」 でその評価を書いてきたが、今年は論評した 「社説」 がない。 安倍政権の応援団の役割を果たしてきた同紙にとって、なかなかそれを正当化する数字が出なかったのが苦しいところだろう。

解説を改憲派の論客・五百旗頭真熊本県立大理事長に書かせている。 五百旗頭氏はその冒頭で 「国会の憲法審査会が優先的に議論すべき項目として、緊急事態条項と自衛隊が上位にあがった。 ……国の安全に多くの国民が強い関心を示すのは当然だ。 にもかかわらず、憲法改正容認派と集団的自衛権の行使容認派がいずれも減ったのは注目に値する」 と結果に 「不可解」 さを表明した。 そして 「特定秘密保護法の国会審議や靖国参拝では、安倍首相の政治手法が独善的ではとの危惧を国民に抱かせた。 国民は急進的で強引な進め方ではなく、実際的で賢明な対処を望んでいる」 と世論の変化の背景を分析した。 そして 「(米国などの)国際的批判や失望を集めるような進め方は慎むべきだ」 と安倍政権にクギをささざるを得なかった。 しかし、返す刀で五百旗頭氏は 「集団的自衛権に対し、アレルギーが強すぎる」 「軍事力を途方もなく強大化し、 それを背景に領土要求を強める国が近隣にある状況下では……平和を守る知恵が求められている」 「乱暴に日本の領土の現状変更をねらってくる国に対してはきちんと抑止力が働く安全保障戦略を機能させる。 それこそが、多くの国民が願っていること」 などと、それこそ強引に主張し、「国民」 を批判している。

この五百旗頭氏の議論が今回の調査結果とかけ離れたものであることは説明を必要としないだろう。 安倍政権と改憲派は今回の調査が示した民意に真剣に向き合わなくてはならない。

(「私と憲法」 155号所収 高田健)

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