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“安倍暴走”を止める責任

寄稿:飯室勝彦

2016年1月31日

7月に迫った参議院議員選挙を前に改憲論議が活発になってきた。憲法を尊重擁護する義務を課せられた公務員でありながら、平和憲法を敵視する首相の安倍晋三は年明け早々「(議論は)新たな、現実的な段階に移ってきた」(2016年1月21日、参院決算委員会)と意気軒昂だ。

安倍は「おおさか維新の会」という援軍の登場で勇気づけられている。集団的自衛権を行使可能とした解釈改憲の成功で自信と余裕も生まれている。両者を厳しく監視し続けないと3分の2確保のための「危険な連携」に発展しかねない。

2016年1月27日の衆議院本会議、代表質問に立ったおおさか維新の幹事長、馬場伸幸は具体的な改憲項目を列挙し、参院選の争点とするよう安倍に迫った。これに対して安倍は個々の条項への意見表明は避けたが「具体的な改憲項目を検討していることに敬意を表する」と共感を示したのである。

おおさか維新の共同代表、片山虎之助はその翌日の記者会見で「4月までに改憲の第一次試案をまとめる」考えを表明した。共同で代表を務める大阪府知事、松井一郎は前年暮れ既に「改憲に必要な3分の2(勢力)に入る」と公に語っていた。

改憲に関する限りおおさか維新は事実上、与党陣営に加わった観がある。

安倍自身、おおさか維新の実質的な最高リーダーである前大阪市長、橋下徹の抱き込みに気を遣ってきた。2016年6月には長時間懇談し、市長を退職した翌日の同年12月19日もわざわざ東京に招いて会食した。

「慰労会だ」と取材陣をはぐらかしたが、退任した一市長に過ぎない人物を慰労するだけだったら、そんな時間的余裕が内閣総理大臣にあるはずがない。深い政治的思惑の込もった、つまり改憲に関連する会食だったことは間違いない。

馬場の代表質問に安倍は「国会や国民的議論の深まりが必要だ。その中でどこを変えてゆくかの議論が深まってゆく」と述べるにとどめた。

世論の動向を見守る慎重な姿勢と言えないこともないが、あたかも経済再生相(当時)、甘利明の金銭疑惑で逆風が吹き始めた時期だけに、参院選を前に突っ走るのは得策ではないと計算しただけで、目指すのが平和憲法の解体であることに変わりはない。

その前に、国民の改憲に対する抵抗感を弱めるための“お試し改憲”として取り沙汰されているのが緊急事態条項の新設である。そのためには参院選で発議に必要な3分の2以上の議席を確保しなければならない。だからまずは“安全運転”というところか。

おおさか維新は、国と地方自治体の関係改革を改憲の最重点にしており、安倍の目指す方向との間には溝がある。緊急事態条項についても慎重だ。

しかし、依然として大きな影響力を有している橋下は安倍と極めて近く、その言動は必ずしも一貫性がない。改憲に関する両者間の溝など大きな意味を持たないのではないか。橋下流の論理で溝を飛び越えて安倍政権に合流する日が遠くないかもしれない。

溝は現行憲法を守り抜きたい人たちにとっても楽観材料たり得ないだろう。

さらに警戒しなければならないのは、安倍が得意とする争点隠しの選挙戦術だ。選挙が近づくと経済重視を宣伝し、選挙で勝つと黙っていた安全保障などの重要問題を、異論を蹴散らし強引に決めてきた。

2013年の参院選では疑問の声が多かった特定秘密保護法を争点として正面に据えなかったのに、選挙に勝つと、国会で強行可決、成立させたのである。

そのうえ国民に全く問わなかった憲法第9条の政府解釈変更までやってのけた。

2014年末の総選挙でも集団的自衛権には触れず、選挙後の15年になって安全保障関連法案を無理やり国会通過させた。

安倍流の手法を振り返ると、改憲のポイントを示さなかった、馬場に対する慎重な答弁は、7月の参院選に向けた争点隠しの伏線だった可能性がある。

一億総活躍社会の実現など経済重点の政策を宣伝し、改憲を目指す印象は薄めた選挙戦術が成功すれば、憲法無視の既成事実をさらに積み重ね、それを憲法の枠内と強弁し続けるだろう。そんな政治を可能にしているのが48・1%の得票率で75・6%の議席を獲得した(2014年総選挙・小選挙区)選挙制度と選挙戦術に惑わされて安倍流政治の本質を見失う有権者だ。

日本国民は「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意」(憲法前文)した。憲法は「国民の自由、権利は国民の不断の努力によって守らなければならない」ことも定めている(第12条)。

安倍政権の暴走を止めるのは国民の責務である。

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