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【NPJ通信・連載記事】憲法9条と日本の安全を考える/井上 正信

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安保法制の近未来-狙いは南シナ海、アフリカ大陸、中東だ-⑤完

2016年3月25日

憲法改悪の衝動を強める安保法制

私はこの「安保法制の近未来」連載で、安保法制は南シナ海、アフリカ、中東での自衛隊の軍事活動の拡大を目指すものであると述べてきました。南シナ海では中国との本格的武力紛争までも想定せざるを得ません。それは私たちにとっても戦争の惨禍を直接受けることを覚悟せざるを得なくなるでしょう。

アフリカでの自衛隊の派遣の拡大は、アフリカのそれぞれの地域が持っている歴史的(西欧諸国が植民地支配したことや独立後も宗主国として影響力を持ち続けたことがあるでしょう)、経済的、民族的、宗教的な特質から、複雑な武力紛争となっています。しかも極めて大規模で深刻な人道危機が発生してきました。そのような地域で、改正されたPKO協力法により人道復興支援とは異なり武力行使を含む軍事活動を自衛隊が行えば、派遣地域で自衛隊員がそこの住民を殺害したり、自衛隊員が殺されるという事態を想定せざるを得ません。

アフリカでの日本企業の経済的権益を拡大するために、自衛隊員がアフリカでの危険な活動を行わされて、その結果自衛隊員が犠牲になるということも、安保法制の施行により現実のものとなるはずです。

中東でも同様に危険な任務になるでしょう。西欧諸国とは異なり、日本は中東地域でこれまで一度も植民地支配をしておらず、中東地域が植民地支配から独立後も政治的に介入することもなく、宗教的にも仏教であることから、イスラム教とキリスト教の対立にも無縁でした。さらに日本は中東諸国に対して多額のODAを投入し、中東諸国は日本のことを平和国家として尊敬してきたはずです。日本は米国の同盟国でありながら、中東地域の複雑な国際紛争には局外中立の立場を貫けてきたのです。そのことが中東諸国に対して持っている日本の重要な外交資産となってきました。安倍政権のとっている外交政策、安全保障政策は、長年にわたるこの貴重な外交資産を一気に失わせる結果となっています。そのことから日本はイスラム過激派により敵国として扱われつつあります。安保法制は安倍政権による誤った中東政策をさらに促進させ、私たちの平和と安全、中東地域の市民の平和と安全を脅かすものになります。

私たちの平和と安全、諸国市民の平和と安全を維持発展させるためには、安保法制は極めて有害なものであると言えるでしょう。

安保法制で自衛隊は海外で危険な任務に就かされます。そこで行われる自衛隊の軍事活動は国際法から見れば武力行使になります。しかし、安保法制ではいまだ憲法第9条による制約から、武器使用という前提に立っています。そのため、海外で活動中の自衛隊員が敵対する武装勢力に捕まった場合、武力行使ではないためジュネーブ条約上は紛争当事者ではないとの解釈から、例えばジュネーブ第3条約(捕虜条約)は適用できないとしています(これは政府の公式の解釈です)。そうすると捕まった自衛隊員は捕虜としての取り扱いを求めることはできず、現地の刑罰法規で処断(非人道的な処刑も)されることとなり、自衛隊員には実に気の毒な結果になります。

このような不条理は、実態は武力行使でありながら憲法第9条の制約から武器使用とごまかしてきたところが、安保法制で派遣される自衛隊員に現実的なリスクを想定せざるを得なくなり、法の建前と自衛隊派遣の現実とのギャップが拡大してこれまでのごまかしは効かなくなったために浮き上がってきたのです。この点は先に述べたROEと軍事法廷との関係でもいえることです。安保法制はさらなる憲法9条改悪に対する強い圧力となるでしょう。私たちは、このような危険な安保法制の運用停止と廃止を求めてゆかなければなりません。

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