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【NPJ通信・連載記事】高田健の憲法問題国会ウォッチング/高田 健

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「5・3憲法集会」(2016年)の成功が意味するもの

2016年6月19日

2016年5月3日、東京の有明防災公園を会場にして開かれた「明日を決めるのは私たち~平和といのちと人権を!5・3憲法集会」が5万人を超える人びとの参加で大きな成功を収めた。

この集会は、一昨年末の「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の結成を受けて、従来、東京でこの10数年にわたって開催されてきた2つの「5・3憲法集会」が統一して実行委員会を作り、さらに広範な市民諸団体に呼びかけて開かれた昨年の横浜臨海公園での5・3憲法集会につづくもので、文字どおり運動圏の「総がかり」の行動で開催される2回目の憲法集会だ。

昨年(2015年)の5・3集会は、3万人余の市民が結集して成功し、5~6月段階から連続して万余の人びとが国会周辺で展開した戦争法案反対の闘いの端緒を切り開いたものであり、それらは8月30日の12万人による国会包囲と全国1500箇所での戦争法廃案をめざす闘いにつながっていく2015年安保闘争の歴史的な高揚を切り開くことになった。昨年の運動の展開は、識者の一部からは「日本社会の政治の文化が変わった」「新しい市民革命の過程が始まった」と言われるようになった。

国会内の野党との関係では、昨年の横浜集会には、野党4党から代表が参加し、民主党の長妻昭代表代行、共産党の志位和夫委員長、社民党の吉田忠智党首、生活の党の主濱了副代表が連帯の挨拶をした。以降、総がかり実行委員会が開催する諸行動には各野党から国会議員が参加するのが通例となっていった。しかし、今年の集会は野党4党からの参加はすべて党首であり、岡田克也民進党代表、志位和夫共産党委員長、吉田忠智社民党党首、小沢一郎生活の党代表と、4党首のそろい踏みとなった。この4人が壇上で手を高く掲げてつないだ。この1年、市民と野党の結束がいっそう大きく前進したことがはっきりと示される場面になった。

今年の集会は、安倍政権と与党による昨年9月19日の戦争法採決の強行後も、全国各地で戦争法反対、立憲主義の回復を求める運動が多様な形で継続され、その中で5つの市民団体(総がかり行動、SEALDs、立憲デモクラシーの会、学者の会、ママの会)によって参院選の勝利をめざす「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」という新しいプラットフォームが誕生した。とりわけ戦争法廃止の2000万人統一署名運動が全国津々浦々で進められ、この日に発表されたように1200万筆を越える勢いで展開された中で開かれた。この5月3日を前に発表されたマスコミ各社の憲法世論調査でも、「改憲反対」が「改憲賛成」を大きく上回り、とりわけ「憲法9条改憲反対」はトリプルスコアで「賛成」を上回っている。この数値が昨年よりも軒並み改憲反対が多くなったのが今年の憲法世論調査の特徴であった。安倍首相が懸命に「改憲」をアピールする中でこうした結果が生じたということは、昨年の戦争法に反対する全国的なたたかいの反映と言って言い過ぎではないだろう。

今年の憲法集会は東京でおこなわれた集会だけでなく、大阪集会の2万人、兵庫の集会の1万1千人、広島の2000人、仙台の1000人など全国200箇所以上で10数万を超える規模で展開されたと思われる。

全国で大きく取り組まれたこの5・3憲法集会の成功を参院選での野党の勝利につなげて行きたい。そのことは「任期中の改憲」を公言する安倍政権を窮地に陥れ、2007年の第1次安倍内閣の崩壊を引き起こしたような内閣退陣に導く可能性がある。

5・3集会で実行委員会を代表して冒頭におこなった挨拶を全文再録する。

ご参集のみなさん こんにちは。
実行委員会を代表して、開会のご挨拶に先立ちまして、この度の熊本・九州地方大震災で亡くなられたみなさまに心からの哀悼の気持ちを表明し、また被災された多くの皆さまにお見舞い申し上げたいと思います。合わせて、福島第1原発の事故をはじめとする東日本大震災の被災者のみなさん、5年数ヶ月を経た今日なお住まいを失って苦闘している20万人近いみなさんの苦しみにも思いを寄せたいと思います。

本日の5・3憲法集会は、昨年、横浜で開催した憲法集会につづく2回目の総がかりで開催する統一集会です。昨年の集会はその後の2015年安保闘争と呼ばれる集団的自衛権の憲法解釈の変更と憲法違反の戦争法に反対する全国的な巨大な市民運動の幕開けとなりました。あの5・3憲法集会は、さまざまな立場の違いを超えて、安倍政権の戦争政策に反対する画期的な出発点となりました。

安倍内閣は大多数の民意のありかを顧みることなく、9月19日、この国が米国と共に海外で戦争することを可能にする戦争法を強行しました。しかし、それ以降も、その暴挙に反対する行動は全国で衰えることなく継続され、その様相は一部の識者からは「2015年夏、日本の政治の文化が変わった」とか「新しい市民革命が始まった」とまで言われる状況をつくり出しています。

この運動は戦争法反対の2000万人署名運動として全国の津々浦々で展開され、また国会では、安保法制廃止の野党共同の廃止法案提出に結実し、先日は多数の法曹関係者と市民らによる戦争法案の違憲訴訟の運動が始まり、さらに来る参議院議員選挙での野党の勝利をめざす「市民連合」として展開されています。全国各地では自立した市民による草の根のアクションが多彩・多様に展開され、総がかり行動実行委員会などの共同行動が無数に組織されています。

今日、ほとんどの報道機関の世論調査が戦争法と改憲に反対する声が多数であることを示しております。

先に、こうした運動を背景にしてたたかわれた北海道5区と京都3区の衆院補選、とりわけ北海道5区の池田真紀さんを先頭にした共同のたたかいは安倍政権の心胆を寒からしめました。あのたたかいは戦争法に反対することを柱に据え、安倍政権による個人の尊厳を破壊する悪政に反対する政策を掲げ、野党と市民がしっかり連携して闘えば、自公与党を追いつめ、勝利することができる可能性を示しました。私たちは来る参議院議員選挙でもこれらの経験に学び、とりわけ全国32箇所の1人区での候補者の1本化を実現し、憲法第9条の改憲と国家緊急権=緊急事態条項の加憲による憲法改悪を企てる安倍政権と闘い、最低限でも自公与党とその補完勢力の2/3議席確保を阻止し、安倍内閣の退陣を実現する必要があります。

そのためにも、ひきつづき2000万人統一署名を推進し、6月5日、国会包囲大闘争とそれに呼応した全国の市民行動の高揚を勝ちとりましょう。沖縄の辺野古の新基地建設を阻止しましょう。川内原発の即時停止と原発再稼働反対の広範な運動を巻き起こしましょう。貧困と格差の拡大の悪政に反対しましょう。平和をねがう東アジアの民衆と連帯し、ふたたび戦争の道を歩む企てを阻止しましょう。

ご参集のすべてのみなさん。
本日の2016年5・3憲法集会を契機にして、戦争に反対する2016年安保闘争の巨大な飛躍を勝ちとりましょう。

戦争法の発動を絶対に止めましょう。この国を「戦争する国」にさせてなるものですか。海外の戦争で「殺し、殺されなかった歴史」を、平和憲法のもとで実現してきた「戦後」の歴史を71年で終わらせてなるものですか。

自民党改憲草案がめざす全体主義、国家主義の社会の到来を阻みましょう。
憲法改悪反対、安倍政権退陣、参院選で野党の勝利

を実現しましょう。

最後に、昨年の夏、国会前の集会で何度か紹介した短歌をまた紹介させてください。1978年、有事法制の検討が始まった頃、自立的な女性の平和団体の「草の実会」に所属していた石井百代さんの短歌です。その志を共有したいと思います。

徴兵は命かけても阻むべし 母、祖母、おみな 牢に満つるとも

みなさん
いまこそ、がんばり時です。わたしたちはかならず勝利しましょう。
本日の5・3憲法集会の成功を共同してかちとりましょう。
ありがとうございました。

(「私と憲法」5月25日号所収 高田健)

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