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【NPJ通信・連載記事】選挙へ行こう~自民党改憲草案と参議院選挙@2016

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戦争と改憲の安倍政権を打ち倒そう!
参院選で野党の勝利を
参院選で公約から憲法が消えた~夏の怪談

寄稿:高田健

2016年7月5日

本年年頭からあれほど「改憲」を豪語していた安倍自民党から、改憲の話がぱたりと消え、今度の選挙の争点はアベノミクスだなどという話になりつつある。アベノミクスを3年前の参院選と、先の衆院選につづいて、3度も問うなどという話があるものか。あれほど無茶をやって強行採決した戦争法に満足せず、フルスペックの集団的自衛権行使をめざすという安倍の改憲はどこにいったのか。これは安倍政権と自民党によって語(騙)られるトンでもない2016年夏の「怪談」だ。

総裁任期中に明文改憲する

安倍首相は本年3月2日の参院予算委員会で「(明文改憲を)私の在任中に成し遂げたい」と発言した。安倍首相はそこで「自民党の立党当初から党是として憲法改正を掲げている。私は総裁であり、それをめざしたい」「自民党だけで(3分の2以上を)確保することはほぼ不可能に近い。与党、さらには他党の協力をいただかなければ難しい」とものべた。2月3日の衆院予算委員会では「憲法学者の7割が9条1項、2項を読む中で、自衛隊の存在に違憲のおそれがあると判断している。違憲の疑いを持つ状況をなくすべきだという考え方もある。占領時代に作られた憲法で、時代にそぐわなくなったものもある」とのべ、憲法9条2項の改憲をめざす意志を表明している。

4月29日放送の日本テレビでは「これからも(改憲を)ずっと後回しにしていいのか。思考停止している政治家、政党の皆さんに真剣に考えてもらいたい」といい、夏の参院選では、野党(与党の補完勢力)も含む改憲に賛同する勢力で国会での改憲発議に必要な定数の3分の2以上の議席確保を目指す考えも重ねて示し、9条に関し「自衛隊は日本人の命や幸せな暮らしを守るために命を懸けてくれる組織。その皆さんに対し、憲法学者の7割が憲法違反だと言っている状況のままでいいのか」と大見得をきった。

これに呼応して、菅官房長官は熊本・九州地方大震災が発生すると、ショックドクトリンよろしく、本震に先立って4月15日「今回のような大規模災害が発生したような緊急時に、国民の安全を守るために国家や国民がどのような役割を果たすべきかを、憲法にどう位置づけるかは極めて重く大切な課題だ」と脅しにでた。ただちに9条改憲は難しいから、支持を得やすい緊急事態条項=国家緊急権を挿入する改憲から始めるというのだ。マスコミはその危うい手口をさして「お試し改憲」などと揶揄するが、実のところ「国家緊急権の導入改憲」はお試しなどという軽いものではなく、立憲主義の破壊、憲法の破壊に通じるものだ。

「任期中の改憲」はどこへいったのか

ところが、極めて摩訶不思議なことに6月3日、自民党が発表した「参議院選挙公約2016」からはこの「改憲」の勢いが消えてしまった。

自民党が公約で憲法改正について触れているのは、26ページの冊子の末尾の小さな項目だけだ。政策パンフレット「この道を。力強く、前へ。」という冊子の本文ではアベノミクスと安倍外交の「成果」を宣伝するだけで、改憲はない。つづいて極小文字の「政策BANK」というのがあり、全文27500文字のうち、末尾にわずか270字の「国民合意の上に憲法改正」という項目があるだけだ。そこでは「わが党は結党以来、自主憲法の制定を党是に掲げています。憲法改正においては、現行憲法の国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原則を堅持します。(改憲には衆参の3分の2議席と国民投票が必要で)衆議院・参議院の憲法審査会における議論を進め、各党との連携を図り、あわせて国民の合意形成に努め、憲法改正を目指します」と記しているだけなのだ。

安倍首相は雄弁(?)に「任期中の改憲」を叫び、支持勢力の日本会議や産経新聞などから拍手喝采をあびてきた。一体、それはどこに消えたのか。

しかし、これには思い当たることがある。

3年前の参議院選挙で自民党が発表した「Jファイル2013」でも、改憲は政策の356番目、衆院選で発表した「自民党重点政策2014」でも全4項目中4番目だった。そして選挙中は改憲についてはほとんど語らなかったのに、その後、さまざまな場面で安倍首相は改憲の政策は信任を得ているというような言動にでた。とりわけ、2013年の選挙では特定秘密保護についてほとんど語らず、2014年の総選挙では集団的自衛権の解釈変更と、戦争法について語られないままに、選挙後には信任を得ているとばかりに強行してきた。まさにこの「手口」が垣間見える。

今年の5月3日を前後するマスコミ各社の憲法世論調査は軒並み改憲反対が増加していることをしめした。昨年の戦争法反対の闘いの高揚の影響ではないだろうか。自民党の選対はこれをみて震え上がったのに違いない。

前出の朝日の社説はこれらについて「安倍政権はこれまで、世論が割れる政策については選挙の際に多くを語らず、選挙で勝てば一転、『信任を得た』とばかりに突き進む手法をとってきた。特定秘密保護法や安全保障関連法の制定がその例だ」と指摘し、「公約の末尾に小さく書かれた『憲法改正』4文字。これを、同様の手法を繰り返す伏線とさせるわけにはいかない」と結んでいる。私たちは安倍政権が卑劣な手口で「柳の下の3匹目のドジョウ」を狙っていることを座視できない。

この国の前途がかかっている参院選

自民党の今回の選挙公約に見られる「改憲隠し」には市民運動や野党および一部のメディアなどから厳しい批判が噴出した。そうしたなかで、安倍首相は6月19日、インターネット「ニコニコ動画」の党首討論会で、「(改憲については)参院選の結果を受け、どの条文を変えていくか、条文の中身をどのように変えていくかについて、議論を進めていきたい。次の国会から憲法審査会を動かしていきたい。自民党の総裁としてぜひ動かしたい」と発言せざるをえなかった。そして「(改憲は)自民党結党の精神。選挙で争点とすることは必ずしも必要はない」「私たちは(憲法改正の)党草案を示しており、何も隠していない」などと居直った。安倍はホンネ隠しの後ろめたさの苦し紛れに、ニコ動で暴発した。同時出演した公明党の山口那津男代表は「改憲について、国民に問いかけるほど議論が成熟していない。議論を深めて国民の理解を伴うようにしなければならない」と火消しに回ったのと合わせいいコンビではないか。

昨年の2015年安保闘争を経て、いま2016年になっても運動は全国各地でつづいている。そして5月3日の憲法記念日集会を経て、東京での6・5の4万人規模の国会包囲行動、6・19の1万人の「怒りと悲しみの沖縄県民大会に呼応する命と平和のための6・19大行動」もおこなわれた。

昨年末以来の「市民連合」は4月の衆院北海道補選を始め、参院選の32箇所の1人区での候補者1本化の成功と、歴史的な野党4党との事実上の政策合意を実現した。

参院選挙後に安倍晋三首相が企てる明文改憲への着手と、戦争法発動を阻止するには、当面、全力をあげて改憲反対、戦争法廃止の野党4党で3分の1の53議席以上を獲得し、できるなら安倍政権への不信任を示す「改選議席の過半数」の61議席以上を獲得しなければならない。この議席を野党が獲得するのは容易ではない。しかし、戦後政治史上初めて4野党の政策協定と全1人区での候補者1本化の選挙協力ができ、市民連合と4野党が共同して自公政権に立ち向かう選挙とすることができた。市民の後押しを受けた、このところの岡田民進党代表の憲法問題の発言はぶれていない。これを最大限に生かしてチャレンジすることこそ求められている。不可能ではない。

参院選で勝利しよう

目下の諸悪の根源は戦争と改憲、民衆の生活と権利の破壊の政治を進める安倍晋三内閣だ。今回の参院選の争点は「安倍政治」そのものだ。野党で3分の1を勝ちとり、明文改憲を阻止すること、野党で改選議席の過半数を獲得し、安倍首相に不信任を突きつけ、安倍政権の退陣を実現することだ。野党共闘が成ったいま、勝利のためのカギは投票率のアップにこそある。

今回の参院選で市民運動が掲げている「選挙を変える」というスローガンは、文法の間違いなどではない。従来の選挙闘争ではない選挙をたたかおうという呼びかけだ。市民も主体となる選挙、従来の運動形態に止まらない市民参加型の選挙、無党派層を大量に登場させる選挙、まさに「選挙を変える」であって、「選挙で変える」ではない。

私たちの市民運動は「議会選挙唯一主義」ではない。草の根の津々浦々から政治の変革をねがって行動する市民運動こそ、社会を、世界を変える原動力だ。選挙闘争を軽視するのは全く間違いであるが、選挙闘争も市民運動の一つの形態であることもまた事実だ。「選挙を変えよう」。この参議院選挙こそ、2015年安保闘争につづく2016年安保の闘いを象徴する闘いの山場だ。市民の新しい政治への希望につながることを、全力で訴えて多くの無党派層を選挙に参加させ、多くの政治的無関心層を掘り起こして選挙に参加させることこそ、勝利の道につながるのではないだろうか。この闘いが、どんなに困難でも、できることをすべてやりきって、諸悪の根源である安倍政権を追いつめ、必ず勝利を勝ちとろう!

(高田健 「私と憲法」6月25日発行所収)

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