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【NPJ通信・連載記事】一水四見・歴史曼荼羅/村石恵照

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一水四見(36)「トランプという危険なゲーム」の新たな展開

2016年7月30日

日本の参議院選挙が終って、数名の党派を異にする立候補者から、悲喜こもごもの挨拶のメールをいただいた。

新たな与野党の勢力構図は、おおかた予想どうりだった。

いま、胸にわだかまっている一有権者としての個人的感想は、政権与党についての「ぼんやりとした危機感」、野党については「はっきりとした絶望感」だ。

危機感と絶望感とが支え合って、日本の政情の名状しがたい浅薄な気分が日本の空気にただよっている。

一方、太平洋の彼方のアメリカ合衆国からは、 全米を熱気でつつんだ大統領選についての情報が、特にトランプ氏の絶叫する演説が、様々なメディアをとおして伝えられてくる。

米大統領は、日本の外交に決定的影響力をもっている。

共和党側のトランプ氏の現況はどうか。

***

「・・・大統領選が流動化している上に、どんな突発事件が、アメリカ国内外で起こるかわからない。

地位は人を変える、という。

ましてや金満家の開発業者トランプ氏が絶大な権力と利権に関わる合衆国の大統領になれば、予想もつかない仕方で政治を動かすかもしれない。

「スノーデンは暗殺されたほうがよいといってはばからないトランプだ (Snowden should be assassinated ;Steve Watson; Infowars.com<http://Infowars.com>; June 25, 2013 )。

想定される可能性として、国際金融資本家たちの表の顔の強力なリーダーとして祭りあげられるかもしれない。

トランプ氏と白人至上主義の団体 KKK とのつながりを示唆する状況も指摘されている。

様々な「トランプ・グッズ」は中国で製造されているが、彼は見当違いな中国批判をする。

しかし、トランプ氏は、利益のためなら中国の超富裕層を抱き込んで、超高級会員制のゴルフコースを中国に作るかもしれない。・・・

トランプ氏の対日政策は、どうか。原発などあって危なくて仕方が無いといって、日本には関心をいだかないかもしれない。アメリカの軍備の肩代わりを強引に要求してくるかもしれない。

「プーチン大統領を称賛する」と言って、すぐさま「ジョージ・W・ブッシュは嘘つき」と呼ぶトランプだ。

次にどのようなカードをだしてくるかわからない。

トランプの「危険なゲーム」は、まだ始まったばかりだ。」

以上は、「一水四見」(33)「ドナルド・トランプ」という「危険なゲーム」(2016年3月20日)から結論部分を改めて引用した。

***

いまパソコンでこの記事を書いている最中、「古典的な全体主義:恐怖心と外国人排斥感情に満ちた演説で、トランプは大統領の指名を受けた」とのインターネット情報が入ってきた( Democracy Now ;July 22, 2016 )。

トランプ氏は、さらに大胆にイスラエル支持に舵を切ったかもしれない。

彼は、イスラエルを「アメリカの最も信頼できる友」としており、「我々は100%、イスラエルのために戦う。永遠に戦う」と言っていた ( “Analysis:Donald Trump, Israel and the Jews”; 「エルサレム・ポスト」; 2015年12月28日)。

今年の3月の時点で、大統領になったら、在イスラエル米国大使館をテルアビブからエルサレムへ移転する、イランとの核交渉は破棄する、とさえ誓っていた。(Alana Goodman ;Trump Vows to Move US Embassy to Jerusalem in AIPACSpeech; March 21, 2016)

さらに、大統領選が白熱化するにつれて、イスラエル寄りの強力な人物が、 5月、大統領候補としてのトランプ氏の支持を公然と表明してきた。

3兆円余の純資産をもつリゾートホテルを経営するカジノ王シェルドン・アデルソン氏だ (The Washington Post; May 13 )。

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アデルソン氏は、リゾートホテルとカジノ経営を中心とした事業を展開しており、リゾートホテルと豪華なゴルフコースを経営する不動産王のトランプ氏と、富裕層を相手のビジネスが中心である点で共通している。

アデルソン氏は、ラスベガスを中心としてカジノビジネスに邁進しているが、中華人民共和国の特別地区であるマカオにもホテルとカジノを経営している。

彼は、アメリカ政府と協力して自分の影響力を行使して、2008年の夏期オリンピク開催にこぎつけるにあたって北京政府を援助したことがある。

北京政府は見返りとして、アデルソン氏のカジノリゾート運営会社・ラスベガスサンズに、マカオでのカジノ権を与えた。

2012年、ラスベガスサンズは、ある件で、連邦政府によってマネーロンダリングの疑いの対象となったが、2013年8月、カジノ側は米財務省の指示に応じて4千740万ドルを支払った。

メディア支配については、アデルソン氏は、イスラエルの日刊紙:IsraelHaymow と、Las Vegas Review-Journal を所有している。

2014年7月には、マイクロソフトのビル・ゲイツ氏らと移民法の改善に失敗した米議会を批判した。

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日本に関わることでいえば、 アデルソン氏は、 2014年2月、日本でカジノを開くために約100億ドル($10billion)を投資する計画を発表した。

このような投資計画は日本では初めてのケースだ。

日本でカジノ経営を認めることは、経済が国益のすべてと考える人はともかくも、日本のソフト資産としての伝統文化にとってふさわしくないことは瞭然である。

が、東京にカジノ開く夢をいまだに捨てていない “愛国的な” 日本人がいるかもしれない。

この計画が現在も進行中なのかどうか、ジャーナリストの調査を待ちたいものだ。

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2014年5月、アデルソン氏は、マリファナを法律的に解禁するために、250万ドルといわれる寄付をして、「フロリダ・ドラッグフリー委員会」を立ち上げた。

医療用という名目はともかく、世界中で禁煙運動が普及して販売が低迷しているタバコに代わって、マリファナの販売に商機を見たのであろうか。

アデルソン氏は、ラスベガスのカジノ事業を世界的に展開している。

彼は「ユーロべガス」なる広大なカジノ、ホテル、会議場を含む総合施設の建設をマドリッドの郊外に計画した、と伝えられている。

アデルソン氏によれば、公共空間での喫煙を禁止しているスペインの禁煙法がこの計画の障害となっているために、2013年6月、当該法律を撤廃するために与党に働きかけた、という。

彼は、もちろん親イスラエルであり、この点でトランプと共通の信条だ。

アデルソン氏は、少なくとも13機のジェット旅客機を所有してビジネスに奔走している。

本年5月、彼は1億ドル以上を共和党の大統領候補のトランプ氏に献金した。(以上、 Wealth-X newsletters: the latest information on wealth and theultra wealthy community、などを参照)。

そして、ついに7月21日(米国時間)、トランプ氏は共和党の大統領候補に指名された。

***

いま、胸にわだかまっている日本人としての個人的感想は、トランプ氏が大統領になった場合、東京と北京ににカジノ経営の許可を要求してくるのではないか、との「予想のつかない妄想」だ。

トランプ氏が有権者たちに、反グローバリズムだ、反エスタブリッシュメントだ、アメリカ第一主義だ、と叫んでいるのは、「戦争は平和、自由は隷属」などというビッグブラザーの二重義のメッセージのように聞こえてくる。

が、彼の演説に熱狂しているアメリカ人大衆には表層のメッセージしか聞こえないらしい。

では、クリントン氏が大統領になった場合は?

彼女と元大統領の夫の所業は、すでに、様々な欧米のエリートマスメディアと独立系メディアで公開済みだ。

そして、見過ごされがちな単純な事実は、トランプ氏とクリントン女史とはどちらも、グローバリズムの金融主導体制下における「1% vs 99%」の1%の陣営に属しているのだ。

***

しかし、日本にとって最重要なことは、日米関係よりも歴史的に長くて深い日中関係の文明史的再認識である。

いずれが次期のアメリカ大統領になるにせよ、一定の任期で代わる。

日本の未来を考えるにあたって最重要の課題は、与野党の政治家が、日中関係についての基本的歴史認識にもとづく共通した国益観念を共有して、日中関係についての理解を持続的に深めてゆくことだ。

理解しようとすることは、相手を好きになるとか、相手の過ちに妥協するとか、媚びることではない。

理解するとは、善循環を求めて、未来志向で、互いの実情を語り合い信頼を育成してゆく覚悟をすることである。

さらに、日本人が忘れてはならないことは、遠隔的「重層的分断統治」の西欧的戦略の基本的性格を深く認識することだ。

北朝鮮と中国に対抗するために日米関係を堅持する、といった表層的な発想ではなく、地政学的に東アジアに位置する独立国として、「鳥瞰的多重外交」をもつことである。

政治の要諦は、人間同士の深い交流だ。

政治家たちは公僕の志をもって、 アジアとアメリカを中心として、利権とは関係のない若者たちの連携と相互理解に、手を差し伸べて協力していかなければならない。

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