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国分寺まつり出店拒否事件
~表現の自由を侵害したと東京弁護士会が認定~

寄稿:大城 聡(弁護士)

2016年8月25日

1 国分寺まつり出店拒否事件とは

 「国分寺まつり出店拒否事件」とは、憲法9条改正に反対や反原発・脱原発を訴える団体が、「国分寺まつり」という東京都国分寺市で年に一度開催される地域の重要なイベント(※1)に、出店内容が政治的であることを理由として、出店拒否されたというものです。

 憲法9条、安保法制、原発政策を巡る問題。いずれの問題も、今、私たちの社会が直面する大きな課題です。しかし、これらの問題を議論すること自体を封じ、表現の場を奪う動きは、国分寺市だけではなく、全国に広まっています(※2)。

 

2 東京弁護士会に対する人権救済の申立て

 出店を拒否された「国分寺9条の会」、「ちょっと待って原発の会」、「Bye-Bye原発/国分寺の会」の3団体(※3)は、2015年12月、東京弁護士会に対して人権救済申立てを行いました。

 人権救済申立てを受けて、東京弁護士会は、2016年8月17日、国分寺まつり実行委員会と国分寺市に対して、出店拒否が表現の自由を侵害するものだと認定しました。

 

<東京弁護士会の調査結果(要望)の骨子>

  (1)実行委員会に対する要望の骨子

 実行委員会は、極めて公共性の強い組織であり、その公共性の結果として、市とともに市民の人権を侵害してはならないという規律を受けるにもかかわらず、何ら合理性なく申立人らの表現の自由を侵害した。

 よって、貴実行委員会に対して、今後は、申込みがあった者につき、「政治的な意味合いを持つ」との理由で、出店やイベント参加を拒むことのないよう、要望する。

 

  (2)国分寺市に対する要望の骨子

 市は自身の強い関与によって本件祭りを実現させているため、本件祭りの運営につき、実行委員会がその公共的役割を全うするよう関与することが市には求められる。

 市は、出店を認めるよう実行委員会に対し働きかけるべきであったのに働きかけを行わなかった。また、出店要綱に「政治的な…意味合いのある出店である(こと)」を挙げていること自体が人権侵害であるから、文言の再考を実行委員会に対し働きかけるべきであったのに働きかけを行わなかった。国分寺市が実行委員会に対してこの二点を働きかけていないという不作為により、申立人らの人権が侵害されている。

 そこで、国分寺市におかれては、今後は、国分寺まつり実行委員会に対し、「政治的な意味合いを持つ」との理由で、出店、イベント参加を拒むことのないよう適切に働きかけをするとともに、「政治的な意味合いを持つ」との理由で出店、イベント参加が拒まれることがないことを、広く市民に広報されたく、要望する。

 

3 今年11月開催の国分寺まつりへの出店等について

 「国分寺9条の会」、「ちょっと待って原発の会」、「Bye-Bye原発/国分寺の会」の3団体は、8月23日、今年11月開催の第33回国分寺まつりに関して出店拒否の通知を受け取りました。国分寺市に問い合わせたところ、出店拒否を決定した実行委員会は、東京弁護士会の調査結果(要望)を受け取る前の8月17日に開催されたとのことです。

 この状況を受けて、出店を拒否された「国分寺9条の会」、「ちょっと待って原発の会」、「Bye-Bye原発/国分寺の会」の3団体は、8月25日に記者会見を開き、国分寺市及び実行委員会に対し、東京弁護士会からの要望に基づき、再考の上、 第33回国分寺まつりにおける3団体の出店を認めるべきことを強く求めています。

 東京弁護士会からの要望を真摯に受入れ、市民が自由に参加できる本来の国分寺まつりに戻すかどうか、国分寺市と実行委員会の判断に注目したいと思います。

 

・国分寺市に対する東京弁護士会による要望(全文)

要望書(国分寺市宛)1

要望書(国分寺市宛)2要望書(国分寺市宛)3要望書(国分寺市宛)4要望書(国分寺市宛)5要望書(国分寺市宛)6

 

 

・国分寺まつり実行委員会に対する東京弁護士会による要望(全文)

要望書(実行委員会)1 要望書(実行委員会)2 要望書(実行委員会)3 要望書(実行委員会)4 要望書(実行委員会)5 要望書(実行委員会)6 要望書(実行委員会)7 要望書(実行委員会)8

 

※1 国分寺まつりは、毎年1回開催され、これまでに32回開催されています。2014年の来場者は約4万2000人。国分寺まつりの出店は、飲食や物販、舞踊で広く楽しむことに加えて、地域で活動する多様な団体がその活動を報告し、市民が身近なところから社会問題を考える契機ともなっています。3団体も、第30回国分寺まつりまでは、出店を認められていました。

※2 埼玉県さいたま市では、「梅雨空に『9条守れ』の女性デモ」と詠んだ俳句の月報への掲載を公民館が拒否された事件があります。千葉県市川市では護憲活動をしている市民サークルが文化祭への参加を断られています。全国各地の自治体が「政治的中立」を理由に憲法関連の集会やイベントの後援・共催を自主規制する動きも広まっています。

※3 「国分寺9条の会」は、大江健三郎氏、澤地久枝氏、梅原猛氏ら9人の著名人による「九条の会アピール」に賛同し、国分寺市民らにより2005年1月に発足した団体です。「ちょっと待って原発の会」は、1986年4月のチェルノブイリ原発事故直後に設立された団体です。「Bye-Bye原発/国分寺の会」は、2011年3月11日の東日本大震災により引き起こされた東京電力福島第一原発事故後に国分寺市内の有志が集まり結成された団体です。これらの3団体は2013年(第30回)までは国分寺まつりに出店して展示等を行ってきましたが、2014年(第31回)、2015年(第32回)は、いずれの団体も出店拒否されました。

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