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【NPJ通信・連載記事】メディアは今 何を問われているか/桂 敬一

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安倍改憲政権の企む日本改造の正体―国難が生む “ファシズム” にどう向き合うか―

2014年5月6日

5月5日の東京ドームは、国民栄誉賞受賞の長島茂雄、松井秀喜両氏を迎えた表彰式の式典で大いに沸き返った。 日本テレビは12時45分、表彰式の前の松井選手の現役引退のセレモニーから巨人・広島戦の始まる3時まで、2時間以上ものあいだ、 全式典の模様を 「独占放送」 と称して生中継した。表彰式には、トルコから帰ったばかりの安倍首相が登場、 みずから賞状・賞牌、副賞の黄金のバットを両氏に手渡した。そしてさらに、そのあとの巨人・広島戦開幕の始球式にも、首相は加わった。 ピッチャー役の松井、バッター役の長島は、それぞれ55、3と、かつての背番号を付けたユニフォーム姿。 キャッチャーは原辰徳巨人監督。これに背番号96のユニフォームを身につけた安倍首相が、審判を務めたのだ。 松井の投げた高いボールを、不自由な片手で長島が空振りすると、大観衆はやんやの喝采。 最後に長島、松井両氏が、96の背番号付きユニフォームを首相に贈り、彼は相好を崩しながらこれを受け取った。 これらの模様は夕方から夜にかけて、ほかの全局のテレビも繰り返し、大きく報じた。

読売の、当日5日の朝刊の予告報道がすごかった。さすがに1面は、コラム 「編集手帳」 が触れただけだが、15面から19面の5ページは、 すべての紙面を使って長島・松井のオンパレード。27面・都内版、28面・第2社会面にも関係記事が載っていた。 翌6日の同紙朝刊は、案外控え目だった。1面は2番トップの扱い。 朝日、毎日が安倍首相登場場面をクローズアップしたのに対して、日ごろ安倍政権への肩入れに熱心な読売なのに、首相のことはほとんど話題にしなかった。 首相の背番号96をテレビの画面に見たとき、彼がすでに 「改憲の発議要件を、現行の3分の2以上の賛成から過半数の賛成に改めるために、 現行憲法96条の改正を、きたる参院選の争点として打ち出す」 と明言していたことを思い出した。 この背番号はその宣伝かと、咄嗟に思った。6日の朝日・毎日の報道によれば、首相本人は 「自分が96代目の首相だからだ」 と述べていた、ということだ。 それはそれでいい。しかし、あのシーン―長島が空を切ったバットを笑顔で眺め、右手を挙げてアウトを宣した首相の映像は、 96条改正が争点となったとき、なんどでも彼の好感度を高めるものとして、役に立つだろう。

大きなメディアのこのような 「ニュース」 の盛りあげ方を見るにつけ、なんでそろいもそろって同じ事件や出来事をいっせいにデカデカと、 ステレオタイプを増幅するだけのやり方で取りあげるのだろうか、と思う。 それは、何事か重要な真実を伝えたり、真剣に考えるべき問題を知らせたりするためには、何の役にも立たない。 むしろ、ほかに重要なニュースとなるべきものがあっても、逆にそれを隠蔽したり、忘却させたりする装置としてしか働かないのではないか、 という気がしてならない。順不同だが、女子柔道日本代表選手暴行事件、新しい歌舞伎座のこけら落とし、「北」 のミサイル発射警戒、 ボストン・マラソン爆弾 「テロ」 事件、富士山世界文化遺産登録内定、などの “大ニュース” が全部のメディアに続々出現する状況に流されながら、 そういう思いを強くするばかりだ。どのメディアもいっせいに大騒ぎしたが、その何が本当に問題だったのか、今でもどのように問題なのかが、よくわからない。 厄介なのは、その陰で本当に考えなければならない問題、国民みんなが関心を持たなければいけないことが、見失われたり、 簡単に忘れ去られたりする状況が生じていやしないか、と思えることだ。

そもそも安倍政権の出現がそういう “大ニュース” の類なのではないか。総選挙での想定外の大勝。 首相になって以来の中国・韓国、アメリカまでをも反発させた歴史認識めぐる発言。アベノミクス “成功” をもてはやす周囲の声。 改憲への強烈な意思表示。維新の会など 「第三極」 を取り込もうとする政界再編への意欲。 安倍政権、安倍晋三氏個人の動静とその周辺は、いつでも大騒ぎのネタに事欠かない。 しかし、長島・松井セレモニーに参加した首相は、トルコから帰ってきたばかりだった。 彼は、福島原発事故後の日本として初めての原発輸出を、トルコとのあいだで決めてきたのだ。 これを、事故の発生地であり、同時に被災地でもある福島の県民は、どういう思いで受け止めるだろう。 日本全体の脱原発目指して運動を前進させている市民はどうか。さらにトルコ国民や、近隣諸国の市民の反応はどうか。 こちらのほうがよほど大ニュースというに値するのではないか。だが、総じてメディアの扱いは、「長島・松井・安倍」 が大きく、 「トルコ・原発輸出・安倍」 のほうが小さいし、少ないのだ。さらに、後者のほうを、日本の成功と評価するメディアが少なからずあることも、見逃せない。

安倍政権をどうみるか。メディアが伝え切れてない安倍政権の問題は何か。このような状況に私たちはどう向き合うべきか。 いろいろ考えさせられたことを、ある市民集会で話してみた。その記録ができたので、 以下に 添付ファイル(<講演記録> 安倍改憲政権の企む日本改造の正体― 国難が生む “ファシズム” にどう向き合うか―)でご紹介したい。 ご覧のうえ、よろしければ、拡散もお願いしたい。

(メディア・ウォッチ 特別版(2)より転載)

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