【NPJ通信・連載記事】一水四見・歴史曼荼羅/村石恵照
自由民主党か立憲民主党か、どちらの「民主」を選択するか?
衆議院選挙が10月22日に実施される。
世界の政治の大きな変わり目である本年2017年、この選挙結果は、今後の日本の命運にとって重大な意味を持つだろう。
自民党は、相変わらずの旧来の政治感覚で、かろうじて安定している。
その自民党を陰で支えてきたかの様な観のある民進党(旧民主党)は、予想どおりに骨粗しょう症のように瓦解していった。
安倍首相の思惑とは関係なく、よく解散してくれたと天の配剤を感じる。
投票日の22日まで、状況は日々時々刻々変化している。
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本コラム掲載サイトの NPJ(2017・10・03) に各報道機関による内閣支持率が掲載された。
[速報 ]内閣支持率 (9月23日~10月1日調査)<共同通信> ( 9月23日~9月24日調査 ) ※第1回トレンド調査
「支持」 45.0 %
「不支持」41.3 %
<共同通信> ( 9月30日~10月1日調査 ) ※第2回トレンド調査
「支持」 40.6 %( 前回( 9月23日~9月24日調査 )比 4.4 ポイント減 )
「不支持」46.2 %( 前回( 9月23日~9月24日調査 )比 4.9 ポイント増 )
その他、< ANN(テレビ朝日系列) >( 9月30日~10月1日調査 )、<毎日新聞>( 9月26日~9月27日調査 )、<朝日新聞>( 9月26日~9月27日調査 )、<読売新聞> ( 9月28日~9月29日調査 )とつづくが、大勢において、3%~10%の範囲で、安倍内閣への不支持が増えている。
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今後の日本の将来を考える場合、特に今回の選挙における政党と政治家の評価基準は、脱原発か否かであると考えている。
原発問題は ― 日本人の自然に対する良質の部分の情念、皇室、神道、国防、エネルギー政策、対中関係、日米の軍事関係にまでまたがる ― 憲法改正より具体的でしかも緊急性をもった争点である。
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民主党がなぜ民進党の党名に変えたのか知らないが、むなしい改名だった。
そして最近、枝野幸男氏が「立憲民主党」を掲げて登場してきた。
「立憲」は、憲法を制定することが基本的定義だから、変な政党名だといえなくもない。
が、理念にかかわる言葉の実際の意味は弾力的に使われうるから、「制定された憲法の意義を真摯に尊重する民主党」という意味にとれば問題はない。
自由も希望も多義的だ。
アウシュビッツの門の上には、“ARBEIT MACHT FREI”(働けば自由になる)と記してある。
今回は、「立憲民主」と「自由民主」と、いずれの「民主」が国民にとってよいのかが問われる選挙である。
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「主な政党の原発政策や訴え」(朝日新聞;10/05朝刊)は以下のとおり:
自民党は「原発依存度を可能な限り低減。安全性確保を前提に重要なベースロードとして活用」(政権公約)
安全性確保を前提は、当然のことだ。
安全性とは原発施設自体にかかわることなのか。
限りなく脆弱な利敵施設である原発に対するサイバーテロなどの危険に対しての安全保障上の対策はどうなのか。
ベースロード(最小限の稼働量)さえも破壊するのがテロリズムではないのか。
原発維持は、南シナ海が(中国に?)支配されて石油の確保が困難になった場合の対策などという旧帝国軍隊的発想を引きずっているのではないのか。
そして核武装の可能性の温存が、常に推進派の情念にあるのではないか。
しかも同紙1面には、原子力規制委員会が東電に対して「経済性より安全性を優先する」ことを保安規定に明記させ、7面には「東電、収益改善急ぐ」の見出し。
つまり自民党の原発政策の基本は、限りなく維持する、と読める。
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希望の党は、「2030年までに原発ゼロにもってゆく工程を検討」(9月28日、小池百合子代表の会見)
小池氏は竜巻のような政局の動きをつくった。
ずいぶんと様々なゴシップが飛び交っているようだが私は、政治家としての彼女の個人生活には関心がない。
彼女の希望の党を評価するのは、これも脱原発に触れたからだ。
小泉元首相の巧みな入れ知恵かもしれないが、とにかく脱原発の基本線を打ち出したことを評価したい。
自民党と民進党のすべての候補者について、原発推進派を選別して対応してほしいものだ。
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立憲民主党は「一日も早く、原発ゼロを実施していく」(2日、枝野幸男代表の会見)
立憲民主党を特に評価するのは、枝野氏が脱原発を表明したからだ。
旧民主党の原発維持と推進にかかわった人物がいれば、すべて除外してほしいと願う。
共産党が一番明確に脱原発を宣言している。
公明、維新の対原発姿勢は、あいまいだ。
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知人から創刊49年の「財界にっぽん」誌が送られてきた。
「毒(小池)を以て毒(安倍)を制する以外に道なし」(巻頭のコラム「地軸」)
この記事は希望の党の結成以前に書かれているが、著者(楠原久)による現在の混迷した政局に対する辛辣な批判である。
私は、先に述べたように安倍政権の突然にみえる解散を、小池旋風を起し希望の党を立ち上げた天の配剤と考えている。
さらに同誌の連載「本澤二郎の政治評論」で、筆者はいわば“財閥支配軍部史観”ともいうべき視点から論評している。
「安倍内閣は誕生すると、すぐさま三菱・三井住友(東芝)・日立の原発売り込みのためのセールスに奔走・・・インド原発売り込みには、公明党の山口代表もインドに乗り込んで、財閥の手先として貢献している・・・アベノミクスは、財閥のための経済政策である」
欧米の軍産複合体の日本版と言うべきか。
希望の党と立憲民主党とは、
脱原発で自然再生エネルギーを国民的レベルで推進し、
アジアの中の日本のあるべき立場を文明的な見地から議論することから始めて、
その後に憲法や防衛では、大いに堂々と論戦をしていただきたいものだ。
原発は、なんらかの形で国家管理とし、
現在企業にいる優秀な日本の技術者と欧米の技術をも参加させて、
兵器産業から厳密に距離をおいた汚染除去や廃棄物処理にかかわる高レベルの研究をすればよいのではないか。
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希望の党は脱原発の有志をさらに誘って、与野党の武装オタクや、原発推進・核武装派を選別してほしいものだ。
自民党の中にもすぐれた人材がいるはずだが、原発推進の首相だけは、日本の伝統の維持と希望ある将来のために登場させてはならない。
希望の党と立憲民主党は共働して、自民党の健全な批判勢力となってほしい。
希望の党が選挙後に自民党と連携するするかも知れないと考えるのは常識的な推測だが、そうなったとしても、現状の自民よりはよいだろう。
なぜなら国民は、自公民政権による自主憲法の負の動機にしっかりと目覚めるからだ。
新首相になれば、トランプ大統領との関係もリセットして、日米関係にも新しい展望ができるかもしれない。
トランプ氏とのつきあい方は、孫正義氏にアドバイスを求めてはどうか。
新首相が選ばれるとすれば、だれか。
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最後に、二つの民主を選択する参考として、福島原発の近状を簡潔に報告する。
日本の精密地殻変動観測に基づく短期的地震予知と原発稼働の問題
京都大学・ 竹本修三( 2017年10月2日発表)
(1)福島第一原発の事故は6年経ったいまでも収束していない。
(2)福島の原発事故は例外的なものではなく、地震国ニッポンの全ての原発が同様な事故を起す危険性をはらんでいる。
衆院選挙は、10月10日に公示される。
脱原発実現の期待をこめて、有権者の思いを込めた天の配剤を22日に待つ。
(2017/10/8 記)
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