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【NPJ通信・連載記事】メディア傍見/前澤 猛

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メディア傍見49 <「実のない」「身勝手な」記事>

2019年2月22日

「政府の代弁」が日常茶飯事に

 記者のための記事用語集を見ると、間違いやすい字に「み」がある。
 「『み』のない」は「実」。「『み』勝手」は「身」――その使用例にピッタリな記事が目についた。
 前回の「メディア傍見48」では、読売新聞が新年早々連日のように「政府は…と言う方針を固めた」という定型記事を一面トップに載せた事実を指摘し、筆者はそれを<新年は政府と馴れ合う記事で明け>と評した。
 その傾向は、2月に入っても衰えないどころか、露骨になっている。「シナイ半島 陸自派遣へ」という以下の記事が、「特ダネ」扱いで、2月10日の同紙朝刊一面のトップを飾った。
 「政府は今春にも、エジプト東部のシナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視にあたる多国籍軍監視団(MFO)に陸上自衛隊を派遣する方針を固めた。2016年3月施行の安全保障関連法で新設された国際連携平和安全活動を適用する初めてのケースとなる。複数の政府関係者が明らかにした
 上記の棒線を引いた部分は、同紙が政府から得た情報を伝える記事の定型になっている。
              (読売新聞 2019年2月10日紙面)

新鮮味のない「特ダネ」記事

 これを同紙は「特ダネ」としている。一般の読者は、そう受け取るだろう。しかし、「調査報道によるスクープ」という本当の意味の特ダネではない。それは大扱いに値しない「実のない記事」の「身勝手な扱い」に過ぎない。本筋は各紙で報道済みだった。例えば、毎日新聞は前月の13日に「政府は22日、エジプト・シナイ半島で…停戦を監視する多国籍軍・監視団(MFO)への司令部要員の派遣を検討すると発表した」という記事を載せている(下図の左側)。

 更に遡って、前年、朝日が「自衛隊員二人の派遣を検討している」と大きく扱っている((2018年9月19日。上記右側)。同紙は、この時、翌日の社説(下記。囲み線は筆者)で「実績作りの『派遣ありき』ではないか」「この政権は安保法に基づく活動を拡大させてきた」と厳しく陸自隊員の派遣を批判した。
              (朝日新聞 2018年9月19日社説)

 各紙の論調への是非や賛否は別にして、読売が2月10日になって、唐突にこの問題についての記事を大扱いしたのが、安保法や自衛隊活動についての安倍ドクトリンへの援護になることは否定できないだろう。

安倍ドクトリンをリード

 NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」をもじって言えば、読売の報道が自衛隊海外派遣に対して反対や批判的だったり、あるいは控え目だったりしたら、「渡邊さんに叱られる」ことは、十分に推察できる。
 なぜならば、読売新聞は、渡邉終身主筆の方針のもと、安倍首相のこわもて主張よりはるか以前に、「自衛隊の海外派遣」の合法化を強く主張してきたからだ。
 同紙は15年も前に憲法改正試案を公表したが(以下の添付は中央公論新社刊から)、そこにすでに「自衛隊の海外派遣」を織り込んでいる。それどころか、以下のように、『軍隊』と明記しているのだ。
 同改憲試案 「第14条(国際活動への参加)…国際的な共同活動に…軍隊の一部を国会の承認を得て協力させることができる」
 権力を監視すべきメディアが、政権に追随している―と言うより、むしろ、改憲では政権をリードさえしてきた。こうした事実に、これまで、どれだけの有権者が気付いてきただろうか。言い換えれば、安倍政権は、渡邊恒雄主筆が敷いてきた「読売新聞の社論」というレールに乗ってきたといっても過言ではないだろう。
 次回は、「『安倍首相インタビュー』はスクープか?」、「自衛隊員募集で自治体が協力拒否?」などをテーマに、さらに「メディアと政権の癒着」の実体を追ってみたい。

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