2008.2.2更新

薬害C型肝炎東京訴訟
事件名:薬害C型肝炎東京訴訟
当事者:薬害被害者VS国、田辺三菱製薬株式会社、日本製薬株式会社
係属機関:東京地裁民事第45部、東京高裁第5民事部
次回期日:未定。順次和解する予定。
紹介者:弁護士武田志穂
連絡先:薬害肝炎東京弁護団事務局 福地・野田法律事務所
     〒124-0025 東京都葛飾区西新小岩1-7-9
     西新小岩ハイツ506号
     TEL 03-5698-8592 FAX 03-5698-7512
全国弁護団HP

【事件の概要】
  1964年、血液凝固因子の中の第1因子のみを抽出精製して製造された血液製剤フィブリノゲン製剤の製造・販売が開始され、 1972年には、血液製剤第9因子製剤の製造・販売が開始された。

  これらの血液製剤は止血剤として使用され、とりわけフィブリノゲン製剤は出産時の出血のときに、止血目的で大量に使用された。
  しかし、これらの血液製剤にはC型肝炎ウイルスが混入していたため、多くの患者が、C型肝炎ウイルスに感染した。
  C型肝炎には根治療法としてインターフェロン治療が存在するが、それによりウイルスを排除出来るのは患者の2分の1〜3分の1程度に過ぎない。 インターフェロンが効かない患者は、いずれ肝炎が進展し、肝硬変・肝ガンとなりそして死を待つほかないのである。

【本訴訟の目的】
  日本国内にはC型肝炎の患者は200万人以上存在すると言われている。
  それはほとんどが輸血、血液製剤、注射器の回しうちなど医療行為を原因として感染した医原病であり、 かなりの程度国の感染症対策により感染が防止出来たはずである。

  本訴訟の原告は血液製剤によりC型肝炎ウィルスに感染した患者であるが、原告になれない潜在的被害者、 すなわち輸血等により感染した患者の救済をも目的としている。具体的には、本訴訟の目的は次の4つである。

(1) 肝炎感染被害を引き起こした国・製薬企業の責任を明らかにし、謝罪を得ること (責任の明確化と謝罪)
(2) 国・製薬企業が、血液製剤によってC型肝炎に感染した被害者の被害を回避すること (責任に基づく被害回復)
(3) 本件薬害および血液事業の誤りについて、その真相を究明し、薬害を根絶すること (真相究明と薬害の再発防止)
(4) 全肝炎患者を対象とした恒久対策を実現すること (恒久対策)

【訴訟の経過】
1 提訴
  2002年10月21日、東京13名・大阪3名の被害者が原告となり、東京地方裁判所および大阪地方裁判所において、損害賠償を求めて提訴した。 その後、福岡地方裁判所、名古屋地方裁判所、仙台地方裁判所において提訴がなされた。

2 第1審判決
(1) 平成18年6月21日 大阪地裁判決
  フィブリノゲン製剤について、国・製薬会社に対して勝訴。
  1964年のフィブリノゲン製剤の杜撰な承認という基本認識のもとに、集団感染発覚 (1987年) 後の加害責任を断罪した。

(2) 平成18年8月30日 福岡地裁判決
  フィブリノゲン製剤について、国・製薬会社に対して勝訴。
大阪地裁判決をベースに、FDA (アメリカ食品医薬品局) による承認取消という事実を重視し、その時期以降の国内での無策を批判した。

(3) 平成19年3月23日 東京地裁判決
  フィブリノゲン製剤について、国・製薬会社に対して勝訴、第9因子製剤について企業に対して勝訴。
  本件薬剤が有効な場面は極めて限られているにもかかわらず、広範に適応外に使用されていたことを本件薬害の本質と指摘。

(4) 平成19年7月31日 名古屋地裁判決
  フィブリノゲン製剤・第9因子製剤ともに、国・製薬会社に対して勝訴。
  東京地裁判決をベースに、肝炎感染の危険性に着目して責任発生の時期を遡らせるとともに、国と製薬企業の責任発生の時期を一致させ、 第R因子製剤と共に指示・警告義務違反を認めた。

(5) 平成19年9月7日 仙台地裁判決
  フィブリノゲン製剤・第9因子製剤ともに敗訴。
  不当判決。これまでの4地裁判決の洞察が全く顧みられていない。

【今後の展開】
  2008年1月15日午後4時、厚生労働省において、薬害肝炎訴訟全国原告団・弁護団と国 (厚生労働大臣) との間で、基本合意書の調印式が行われました。

  基本合意書は、1月11日の薬害肝炎救済法(略称)の成立をふまえ、全国5地裁・5高裁で審理中の薬害肝炎訴訟を、 今後、順次和解によって終了する上での基本的事項を定めるものです。

  基本合意書の中で、国は、薬害肝炎の甚大な被害が生じ、被害の拡大を防止し得なかったことの責任を認め、被害者と遺族に心からお詫びするとともに、 今回の事件の反省をふまえ、命の尊さを再認識し、薬害再発防止に最善かつ最大の努力を行うことを誓いました。
  また、恒久対策及び薬害再発防止対策について、国 (厚生労働省) は、原告・弁護団と継続協議することも合意されました。

  2002年10月の提訴以来5年余、原告団・弁護団・支援者の粘り強い取組みの上に、ようやく、薬害肝炎問題全面解決への礎が築かれました。
  しかし、薬害肝炎問題は基本合意書締結によって全てが解決した訳ではありません。

  加害企業 (田辺三菱製薬(株)、日本製薬(株)) の責任問題、真相究明と再発防止、カルテ等の証明手段がなく救済を阻まれる被害者を含め、 全国350万人のウイルス性肝炎患者への総合的な支援策の問題など、課題は山積しています。

  全面解決の大海原へたどり着くためには、国民一人ひとりが、国・製薬企業の対応を注視し、声を上げ続けることが不可欠です。 引き続き、原告団・弁護団の闘いへのご支援をよろしくお願いいたします。

【連絡先】
  薬害肝炎訴訟を支援する会・東京
  東京都新宿区新宿1-24-2 長井ビル3階
  オアシス法律事務所内
  電話 03-5363-0138

    薬害肝炎リレーブログ

文責 弁護士 武田志穂