2012.1.17更新

チチハル毒ガス事件
〜子どもたちの夢と未来を奪わないで!

事件名:国家賠償請求事件
内  容:政府を被告として、被害者一人当たり約3300万円の支払を
     求める訴訟
当事者:中国チチハル市在住の被害者及びその遺族 vs 国
係属機関:東京高等裁判所
次回期日:2012年1月20日(金) 10:00〜17:00
       東京地裁101号法廷(大法廷)
次回期日の予定:証人尋問 樽井澄夫(元外務省・中国課長)
           石川浩司(外務省・中国課長)
           当事者尋問  王成(ワン・チェン)
           ※ 裁判終了後18:00〜 報告集会(文京シビックホール・スカイホール)を予定しています。
紹介者:井堀 哲弁護士
連絡先:武蔵野法律事務所 (三坂宛) TEL 0422-55-2211
      メールアドレス: a-misaka@rk9.so-net.ne.jp


【事案の概要】
  2003年8月4日、中国黒竜江省チチハル市内の地下駐車場建設現場から、 旧日本軍が秘密裏に製造した毒ガス液 (イペリット液) の入った5つのドラム缶が掘り出されました。 汚染されたドラム缶、毒ガス液が染みこんだ土が運搬される過程で、これに触れた市民が次々と被毒して被害が拡大しました。
  現在判明している範囲でも43名が被毒して、1名が死亡しています。

【日本政府の対応と提訴に至った経緯】
  日本政府は、中国政府に対して 「遺棄化学兵器処理事業係る費用」 として3億円を支出しました (うち9割が被害者らに交付されています。 一人当たり約550万円となります)。
  しかし、毒ガス被毒の結果、被害者達の多くは、就労不能や経済的困窮に直面しています。 また、「毒ガス被害者」 というラベリングをされ、差別、家庭崩壊、離婚などの社会的不利益を受けています。 さらに、子供達は、成績低下、不登校、いじめを受ける……。しかも、毒ガスの被害のメカニズムは未だに明らかになっておらず、 被害者は将来の健康被害に怯えています。つまり、3億円という金銭の支払いでは到底埋め合わせることのできない被害が発生しているのです。

  そこで、私たち弁護団は、政府に対して人道的観点から @ 医療ケア、A根治治療、B就学援助や生活補償の制度設計、 C 中国国内の毒ガスの早期発見と除去などの政策形成を求めてきました。しかしながら、事故後3年半経過しても、誠意ある回答はありませんでした。

【訴訟の内容と被害者達の願い】
  そこで、2007年1月25日、政府を被告として、被害者一人当たり約3300万円の支払を求めて、やむを得ず国家賠償請求訴訟を提起することにしました。 しかし、弁護団と被害者の皆願いは、金銭賠償ではなく、あくまで先に述べた4つの政策形成の実現です。

【今後の訴訟の行方】
  国側は、早くも 「毒ガスを遺棄したのは日本軍ではない」 「遺棄したのは戦時中の行為だから今の政府が責任を負うべきでない」 「毒ガス弾がどこに埋まっているかを予見することなどムリだ」 と責任を全面否定しており、今後これらの争点を巡る攻防が展開されることになります。

【前回期日の報告】 第5回 (2008.6.23)
  チチハル事件の責任について、国側は、「毒ガス缶は旧日本軍のものであるが、広い中国の中で毒ガスを発見することできなかった (予見可能性なし)、 だから毒ガス事故を防ぐことはできなかった (結果回避可能性なし) から、自分たちに責任はない」と主張しています。
  そこで、今回は、事件現場であるマンション建設現場が、戦時中においてどのような場所であったか、そこで旧日本軍は何をしていたのか、 なぜその場所に毒ガス缶が埋設されていたのか、を明らかにしました。

  具体的には、@ 第一現場であるマンション建設現場は、戦時中旧日本軍の管理下にある軍用飛行場等があったこと、 A その軍用飛行場には、毒ガスを飛行機に搭載しての実験演習をするために、毒ガスが多数管理保管されていたことを、主張立証しました。
  主張立証のために、当時の地図を探しに古本屋や防衛省の資料室に行ったり、環境省に行って国内飛行場の毒ガス保管状況を調べたり、 現地に行ってチチハル市の歴史を調べたりしました。その成果を遺憾なく法廷で披露できたと思います。

  本来であれば、この様な作業は、圧倒的な調査能力を有している国がすべきであり、きちんと調査をしていれば、チチハル事件も起こらなかったわけですので 弁護団としては何とも釈然としない思いをしています。
  さて、国側はどのような反論をしてくるか? 楽しみでもあり、ハラハラドキドキでもあり。次回期日にこうご期待です。

【前回期日の報告】 (2008.9.22)
  今回は、毒ガスがどのような仕組みで被害者達の体をむしばんでいったのかという医学的に分析して主張立証しました。 具体的には、毒ガスに含まれているイペリット・ルイサイトという物質が、人体に入り、呼吸器障害、皮膚障害、眼の障害、造血機能及び免疫力の低下、 神経に障害を及ぼす過程を、詳細な文献を用いて主張立証しました。

  また、中国から被害者劉建彬氏が来日し、意見陳述を行いました。劉氏は、毒ガスの入ったドラム缶を解体する廃品回収所で、 ご子息の代わりにアルバイトをしている時に被毒し、今でも、眼や心臓、呼吸器などに痛みを感じて苦しんでいます。仕事はできない状態です。 そのような境遇でも、自分を見捨てない妻とご子息に支えられて生きていることに対する感謝の気持ちを述べ、感極まって泣き崩れる場面もありました。
  聴いた者の胸を打つ意見陳述だったと思います。

  2010年5月24日判決 原告敗訴
    判決
  5月28日控訴しました。

【前回期日の報告】 (2010年11月25日)
 第1回口頭弁論なので、控訴状と控訴理由書の陳述を行いました。
 控訴人である毒ガス被害者の楊樹茂さんの意見陳述を行いました(別紙のとおり)。
    ・ 陳述書
 また、控訴理由書の要旨、特に控訴審の争点となるべきポイントを穂積弁護士と富永弁護士が行いました(別紙のとおり)。
    ・ 控訴人代理人意見陳述(1)  ・ 控訴人代理人意見陳述(2)

控訴審の争点〜国側の結果回避義務違反
  第1審では本件事故の発生の予見が可能だったこと(予見可能性)は認定されました。 控訴審の最大の争点は、日本国が本件事故を防ぐ手立てを講じたかどうか(結果回避義務違反の有無)に移りました。
  特に、外交チャネルを通じて、被害の未然防止の観点から 「未発見の遺棄毒ガス兵器の場所を明らかにして欲しい」 と求め続けた中国側の要請に対して、 日本政府が誠実に対応したかどうかが注目されています。

■外務省・中国課長の証人尋問が実現!
  1991年から遺棄毒ガス兵器問題の解決のために、日中間で政府間協議、現地調査、専門家会合等が始まりました。 日本側の主管であった外務省中国課が、どのように対応したのか。この点を明らかにするために、元中国課の課長と現中国課長の証人尋問が実施されます。

【是非、サポーターになって下さい!】
  他方で、訴訟活動を盛り上げ、かつ政策形成を実現するためには、世論、そして市民の皆さんの支援が不可欠です。 特に、被害者の来日費用などは現在弁護団の持ち出しになっているのが現状です。
  少しでもご賛同頂ける方は、下記振込先までカンパを頂けたらと存じます。 また、この事件に興味を持った方は、すぐさま下記連絡先にまでご連絡を! 被害者達の 「健康・友だち・夢」 を取り戻す取組に是非とも力をかしてください!

◆ボランティアスタッフ募集しています!
  裁判支援や報告集会、イベント企画を一緒にして下さる方、ご連絡お待ちしております♪
  チチハルやハルピンへのスタディツアーもあります。ぜひご参加ください。
  お問い合わせは下記連絡先、三坂までお願い致します。

◆渡航費・滞在費 カンパお願いします☆
  郵便振替 口座名:「チチハル8・4被害者を支援する会」
         口座番号:00170−0−650194
  連絡先   武蔵野法律事務所 (三坂宛) TEL 0422-55-2211
         メールアドレス:; a-misaka@rk9.so-net.ne.jp

【一言アピール】
  2003年8月4日、旧日本軍遺棄化学兵器が掘り起こされ、チチハル事件が起きました。 被害に遭った人たちは、健康な体、生きる希望、人間としての誇り、仕事、友だち、夢、多くのものを失いました。
  被害者たちは2007年1月25日に提訴。原告としてこれから長い裁判を闘っていきます。どうぞ法廷で、原告たちを応援してください!

文責 NPJ編集部