2008.10.13更新

国の責任を認めた画期的判決の控訴審
〜「大和都市管財抵当証券事件」
事件名:国家賠償請求控訴事件
内  容:無価値な抵当証券発行を認めた国の責任を問う訴訟
当事者:大和都市管財抵当証券購入者 VS 国
係属機関:大阪高等裁判所
2008年9月26日、勝訴判決。
国は上告断念し、確定。
紹介者:五十嵐潤弁護士

【はじめに】
  2001年に破たんした抵当証券会社 「大和都市管財」 の巨額詐欺事件をめぐって、全国の被害者700人余りが、 近畿財務局が安易に抵当証券業の登録更新を認めたことの責任を問う国家賠償を求めた訴訟で、 大阪地方裁判所は、2007年6月6日、国に6億7000万円の支払いを命じる判決を下しました。

  財産的被害で、国の責任が認められるのは初めてであり、国は控訴審での巻き返しに必死です。画期的なこの判決を後退させないように、注目しましょう。

【被害実態】
  被害者は、全国で約1万7000人、被害総額は1100億円にも上ります。 そのうち、被害者弁護団と委任契約を結んだ約6000人の被害だけでも600億円に上るという大型詐欺被害事件です。 経営陣への損害賠償請求などで回収できたのは、被害額の一割にも満たないというのが実態です。

【一審判決の概要】
  原審では、1995年に業務改善命令を検討していた近畿財務局が、大和都市管財側に威迫された後に撤回したこと、 1997年の業者登録の更新時、実質的に債務超過だったとみられることなどが明らかになりました。
  その結果、大阪地裁は、近畿財務局は、大和都市管財 「破たんの危険が切迫していることを容易に認識できた」 と指摘したうえ、 立ち入り検査などを怠り、登録更新を認めたことは 「許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠く」 と断じました。

【手続きの経過】
  本件は、国側と購入者側双方が控訴しています (購入者は過失相殺に不満があります)。

  そんな中、国側は4人の証人尋問を申請してきましたが、購入者側は採用に全面的に反対しました。 裁判所は1人だけ証人を採用し、後の3名は必要性がないとして却下しています。

  2月6日の裁判ではその1人の証人尋問がありました。
  証人に出てきたのは近畿財務局の平成9年当時の担当者です (一審のときも平成9年当時の責任者だとして3名の証人尋問をしていましたが、 控訴審で国側は 「もう一人いる」 と苦し紛れで申請してきたのです。)。証人は 「近畿財務局としてはできる限りのことをやった」 ということを証言していました。 これは一審判決で平成9年当時の近畿財務局の態度が 「究極の消極主義」 と批判されたからです。
  しかし、弁護団からの反対尋問や裁判所からの尋問で結局 「業務停止を念頭に上司に決済を仰いだのに、他のケースもシミュレーションしなさい」 と言われ、 業務停止以外 (業務停止にならない場合) を想定させられた」 ということを自白するに至っています。

  そして前回5月9日の期日でこれまでの主張を総まとめした最終準備書面を提出し、最終弁論をして無事結審しました。
  これまで5年間にわたって裁判を闘ってきましたが、その一つ一つを改めて吟味すればするほど、 その証拠はどれもが 「国に責任あり」 の方向を向いているものばかりでした。

【勝訴判決→確定】
  大阪高裁は9月26日、全国の原告六百二十七人について、国に約15億5800円の支払いを命じました。これは、一審の判決を上回るものです。 小田耕治裁判長は 「近畿財務局は適切な調査をせず、あえて漫然と同社の登録を更新した」、「監督規制権限の恣意的不行使と言わざるを得ず、 過程は不可解で、裁量逸脱の程度は著しい」 と財務当局の責任を厳しく指摘しました。
  その後、国は、上告を断念し、この画期的な判決が確定しました。

文責 NPJ編集部