2013.10.22更新

布留川生保セールス頸腕裁判
事件名:布留川生保セールス頸腕裁判
     (休業補償給付不支給処分取消請求事件)
係属機関:東京高等裁判所第9民事部B係
2012年4月26日、最高裁は、原告の上告を棄却しました。
連絡先:「布留川さんの裁判を支える会」
連絡先:布留川由美子 電子メール:furukawa-9jyou@w2.dion.ne.jp


【事件の概要】
(1) 当事者
原告:布留川由美子
被告:国 (処分をした行政庁 三田労働基準監督署長))

(2) 請求の趣旨の概要
 被告三田労働基準監督署長が為した労働者災害補償保険法による休業補償給付を支給しない旨の処分の取り消し

(3) 請求の原因の概要
 1978 (昭和53) 年6月1日、29歳にて日本生命に入社して以来生命保険セールスの業務に従事していた原告が、 パンフレット等の重量物を持参しての長時間のセールス業務により、平成8年に頸肩腕症候群に罹患し、平成9年に頸肩腕障害である旨の診断を受け、 その後労災申請を為したが、不支給処分を受けた。

(4) 提訴までの経過
2000 (平成12) 年5月24日、三田労働基準監督署に労災申請
2002 (平成14) 年8月26日、不支給決定
同日、労働保険審査会に再審査請求
2006 (平成18) 年9月22日、棄却決定

(5) 提訴後の手続の経過
2007(平成19)年 3月26日、提訴。本人訴訟。
同年 5月25日、第1回弁論
同年 7月13日、第2回弁論。弁護士代理人出席。
同年 9月28日、第3回弁論
同年11月16日、第4回弁論

  11月16日の期日の前に、原告から、業務起因性 (発症した障害と業務との因果関係) についての準備書面を提出し、これに対して被告が反論。

  2008年1月24日の期日では、原告側は、業務起因性につき、ヨーロッパとアメリカの頸腕認定基準に基づき主張した第3準備書面を提出。

  2008年4月14日の期日では、本件の最重要争点である業務起因性について、被告から、原告の業務はいずれも通常の生保セールスの業務であり、 危険な業務には該らない、とする内容の準備書面が出されました。

  6月26日の期日では原告から、主張を提出。主張の概要は、業務起因性があること。なお、厚労省策定の基準は、 それ自体が不当なものであり、原告はこの基準に拘泥するものではないが、仮に、この基準に則ったとしても、原告の場合には業務起因性が認められる。

  厚労省基準は、力仕事や単純反復作業等のみを想定しており、本件のようなセールス業務については、まったく想定していない点において不当、というものです。

  今後、被告国からの医師の意見書を待って、原告からも協力医の意見書提出、秋頃に証人尋問となると思われます。

  9月4日の期日で、被告国から提出された医師の意見書は、原告布留川さんが頸肩腕症候群であったとの診断自体を争い、仮に頸肩腕症候群であったとしても、 その原因は布留川さんの精神的肉体的な既存疾患にある、とのとんでもない内容でした。
  次回には、原告から、この点に対する反論の準備書面を提出します。

  9月4日の期日終了後に、原告から、布留川さんの疾病が業務に起因する頸肩腕障害であるとの医師の意見書を提出し、併せて、医師の証人尋問を請求しました。

  その後、11月13日の今回期日前日の11月12日に、被告から、医師の証人尋問に反対するとの内容の意見書が提出されました。 労災訴訟において、原告側申請の医師証人尋問に反対する意見書などは、異例のものです。この状態で、13日の今回期日に臨みました。
  今回期日において、裁判所は、被告の意見書を一顧だにせず、被告に対して、原告側医師意見書に反論があれば意見書を提出せよ、 その後に医師の尋問期日を決定したい、と述べました。
  これに対して、被告は、来年1月末までに、反論意見書を提出する旨を述べました。 そこで、裁判所は、次回期日を来年の2月5日とし、その後の原告側からの再反論をまって、尋問期日を決定することとしました。 医師の証人尋問は、来年の4、5月頃になりそうです。

  2009年2月5日の期日では、被告から、2通目の医師の意見書が提出されました。
  内容は、曖昧なものですが、布留川さんに表れた頚部痛等の症状は、頸肩腕症候群によるものではなく精神医学的疾病によるものである、というものでした。
  また、前回の期日で国から提出された、布留川さんを頸肩腕症候群であると認定した渡辺医師の証人採用に反対する、との異例の意見書については、 裁判所は、証人採用の方向でゴールデンウィーク前後の期日を予定して日程の調整をしたい、と述べました。

  2009年3月19日の期日では、被告が、第6準備書面を提出しました。 内容は、被告側の医師の意見書を元にしたもので、布留川さんの疾病は頸腕ではない、仮に頸腕であるとしてもその原因は業務にはなく精神疾患にある、というものでした。 原告からは、50頁に及ぶ原告本人の陳述書を提出しました。
  本期日で、結審までの予定が、ほぼ決まりました。被告は、証人申請はしないとのことで、6月8日に原告申請の医師尋問、6月22日に原告本人尋問、 その後、最終準備書面を出して結審です。早ければ秋、遅くとも年内には判決の予定です。

  2009年6月8日の期日では、原告請求の渡辺靖之医師に対する主尋問・反対尋問が行われました。
  頸肩腕症候群の専門家であり、原告布留川さんの主治医であった渡辺先生は、布留川さんが頸肩腕症候群であること、 その原因は過重な業務にあったことを明確に証言して下さいました。勝利判決へ、大きく一歩前進した期日だったと思います。

  6月22日の期日では、原告本人尋問が行われました。布留川さんは、生保営業の業務の大変さを述べ、リュックを背負って両手に手提げ袋を持って、 苦しかった当時の姿を、法廷で再現してみせました。
  尋問終了後、裁判所から、原被告双方に、8月中を期限として最終準備書面を提出するよう、指示がありました。

  9月7日の期日の内容と簡単な評価
  →前回期日終了後に、9月7日に結審予定、とご報告しました。
  ところが、9月7日の数日前に、裁判官から電話があり、主張と立証を追加するよう、いくつかの指示がありました。

  9月7日の期日には、裁判所から,原告において追加の主張立証を10月9日までに行い、その後に被告が反論を検討せよ,との指示がありました。
 裁判所が、請求を棄却するつもりであれば、追加の主張立証は不要なので、良い結審延期であると考えています。 判決予定も延びましたが、一層の傍聴・ご支援をお願いします。

  10月19日の期日の内容は以下のとおりです。
  そもそも前回期日で結審予定でしたが、 裁判所から原告側に対して中心争点となっている販促ツールの 「ザ・テレビジョン」 の冊数について追加の主張・立証を求められ、結審が1回延びていました。
  原告側の主張が、「ザ・テレビジョン」 を1週間に300冊運搬・配布したことが頚腕発症の重大な原因となった、とのものだったのですが、 被告は、せいぜい125冊だった、と主張しており、これまでは、原告・被告とも、客観的証拠を提出できずにいました。
  原告側の書面提出期限が10月9日だったのですが、それまでに必要な証拠を集めることができずに、10月17日の夜に、 当時の同僚から、「300冊」 だった、との明確な陳述書をようやく頂くことができました。
  10月19日の期日は、当方からの書面提出が期日直前 (当日) だったために、被告側が、反論をこれから検討したい、とのことで、結審は2度目の延期となりました。
  次回の被告の反論により、全て終了、結審・判決となります。

  2009年12月21日期日の内容は以下のとおりです。
  原被告双方が最終準備書面を陳述、原告の布留川由美子さんご本人が意見陳述を行い、結審しました。
  次回判決となりました。

  12月21日の期日前に、原告側から、布留川さんの元お客さんが書いた 「布留川さんは 『ザ・テレビジョン』 を毎週300冊配布していた」 という内容の陳述書を追加で提出したところ、被告は、準備書面で 「『ザ・テレビジョン』 の冊数は争点ではない」 と主張してきました。 これに対して原告からは、「これまでの主張・立証の経緯から、冊数こそが最大の争点であったのだし、仮に、300冊を認めるのであれば、 それは業務の過重性ひいては業務起因性を認めることだ」 との準備書面を出しました。結審が何度か延びましたが、いよいよ判決です。

  2010年3月18日、原告布留川さんの請求を棄却する判決が出ました。
  判決理由は、布留川さんが平成8年7月頃に、頸肩腕症候群を発症した、ということは認めながらも、 生保セールスという業務とその頸肩腕症候群との関連性(業務起因性・相当因果関係)を否定するものでした。

  業務起因性を否定した理由は、大きくは以下の5つでした。
(1) 販促品等の運搬作業の業務量が客観的に明らかでなく、 仮に原告の供述を前提としても、上肢に過度の負担のかかる業務であるか、疑問がある。
(2) 原告側請求証人である医師の意見は、販促品等の運搬作業に対する認識が不十分なまま為されている。
(3) 上記医師の意見は、促進要因としての精神・神経系の緊張感と精神神経系統の疲労を挙げているところ、 これは、専門検討会報告書にいう作業とは認められず、研究会提案診断基準に該当するか判然としない。
(4) 原告の上肢障害が、業務から離れた12年後にも完治していない。
(5) 保険会社の営業職員に、本件と同様の障害が発生したという客観的データが存在しない。

その後の動き(双方控訴の有無等)
  生保営業職員の頸肩腕症候群が労災認定されれば、日本で初めてのものでした。 したがって、布留川さんが勝てば国は必ず控訴するであろうこと、負ければ控訴してたたかい続けることは、判決前から確認し合っていました。
  敗訴判決により、原告から控訴しました。
  今後、東京高裁で、控訴審のたたかいが始まります。引き続きのご支援を宜しくお願い致します。

(控訴審)
  2010年6月21日が第1回口頭弁論期日となりました。多数の方の傍聴をお願いします。

  2010年6月10日(木)進行協議期日が開かれました。
  裁判所から、裁判長交替のため、予定していた6月21日(月) 午後1時45分から809号法廷にて、 1回口頭弁論期日を取り消し、追って指定とする旨の発言がありました。
  よって、6月21日は、裁判は行われません。新しい期日は、決定ししだいご報告します。

【一言アピール】
  布留川由美子さんは、19年間、必死になって契約を取り、体を壊してから、今年で11年目になります。 今、多くの業界に裁量労働制が導入され、賃金が下げられ、体を壊したりうつ病を発症したりして自ら命を絶つ人も増えています。 裁量労働制の最たるものとも言い得る生命保険セールスが、この流れに警鐘を鳴らさねばならぬと考え、困難を承知で提訴しました。 この裁判は、単なる過労障害裁判ではなく、生命保険セールスで初めての、頸肩腕障害の認定裁判です。

文責 弁護士 町田伸一