「浮かぶ原発」原子力空母の横須賀母港化を止めよう
〜浚渫工事差し止め訴訟
事件名:浚渫工事差止請求事件
内 容:横須賀が原子力空母ジョージ・ワシントンの母港化とされる
ことを食い止めるための訴訟
当事者:市民 VS 国
2013年7月24日 最高裁は上告不受理。敗訴確定
紹介者:呉東正彦弁護士
連絡先:原子力空母の横須賀母港問題を考える市民の会
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【訴訟の概要】
来年夏に計画されている危険な原子力空母の横須賀基地への配備をストップするために、
649名の市民が原子力空母配備のための浚渫工事を行おうとしている国を被告に、浚渫工事による汚染拡散と、
その結果としての原子力空母配備による原子炉事故によって、その生命身体等の人格権を侵害される具体的危険性があることを理由として、
原子力空母配備のための浚渫工事の差止を求めて起こした訴訟です。
【原告の主張】
1点目は、浚渫される大量のヘドロの中に、有毒なダイオキシン、水銀、砒素、鉛、トリブチルスズ、硫化水素を発生させる硫化物等が含まれており、
港内で奇形の魚が発見されたり、過去に周辺で浚渫による漁業被害が発生していることから、
浚渫工事により、横須賀港周辺で活動する原告らに著しい生命身体健康の被害や、漁業被害が発生する具体的危険性があるという点です。
2点目は、浚渫工事の目的である原子力空母配備による原子炉事故及び放射能漏れが起こる危険性があるという点です。
特に、「大地震が横須賀に発生した場合に、海面が低下したり、陸上からの電力や水の供給が同時に遮断されることにより、
原子炉が冷却できなくなってメルトダウンを起こす」、「海難事故、艦内の弾薬や燃料の爆発事故、内部要員の破壊行為や外部からのテロ攻撃等によって、
原子炉の炉心や格納容器が破壊され、放射能が原子炉から放出される」 等の具体的危険性が想定され、
それらについて国内の商業炉のように被告による安全審査が何らなされていません。
そして、原子力空母の原子炉事故が起これば放射能が風下一体を汚染することとなり、別紙地図にあるように8キロ以内では全数致死、
13キロ以内では半数致死等、横須賀周辺165キロ以内に住む原告ら全てに、著しい生命身体健康の被害が発生する具体的危険性があるため、
原告ら一人ひとりの人格権に基づいて、浚渫工事が差止められねばならないという点です。
【訴訟の経過】
第1審では、残念ながら敗訴しましたが、原告は控訴しました。
なお、関連する浚渫協議取消訴訟も控訴していましたが、10月1日午後1時20分に東京高裁825号法廷で判決が言い渡される予定です (東京高裁第11民事部)。
【一審判決内容】
5月12日、差止の請求は棄却されました。裁判所は、浚渫工事による汚染拡散による生命身体や漁業への被害につき、認めるに足りる証拠はないとした上で、
原子力空母によって発生する住民の被害は審理の対象となるとして原子力空母の事故の危険性についての実体判断に入ったものの、
原告が具体的に指摘する原子炉事故の危険性について、ファクトシート等の主張に基づいて、事故発生の蓋然性が高いと認めるに足りる証拠はないとして、
差止請求を棄却した。
原告団は、「市民からの危険性の立証に高いハードルを課す一方で、国の何ら反証をしないという国民の安全放棄の姿勢を容認した、
極めて不当な内容のものです。 これに対しては、速やかに東京高等裁判所に対する控訴をする予定です。」 と述べている。
※ 地裁 判決文 2008.5.12
ストップ原子力空母母港裁判を進める会の6年間の裁判闘争の歩美
1、横須賀に原子力空母を配備するためには、横須賀港をあと2m深くする浚渫工事をせねばならず、その許可権限を横須賀市長がもっていた。
しかし、蒲谷亮一横須賀市長は、各方面からの圧力に屈して、06年6月、原子力空母配備を容認してしまった。
これを受けて国はいよいよ07年3月29日に、浚渫工事についての港湾法37条による工事協議申請書を横須賀市に提出した。
2、そこで4月6日、横須賀周辺で活動する漁業者、市民ら10名が、
横須賀市を相手にこの浚渫工事協議に応じないことを求める差止の訴と仮の差止決定の申立A1を横浜地裁に提訴した。
しかし、4月25日横浜地裁は、仮の差止決定の申立を原告らには 「法律上の利益がない」 という理由で却下する決定を出し、
4月26日横須賀市は、この港湾法協議を完了させ許可してしまい、国は8月10日に浚渫工事に着工した。
そこで原告らは浚渫協議差止の訴えを協議取消の訴A2に変更した。
3、次いで7月3日に640名の原告が、原子力空母配備のための浚渫工事を行おうとしている国を被告に、
原子力空母配備のための浚渫工事の差止を求める民事訴訟B1を横浜地方裁判所横須賀支部に起こした。
また9月13日には、多数の専門家の意見書を添えて、約400名の申立人が浚渫工事の差止の仮処分申立C1を起こした。
4、08年2月27日に横浜地裁での浚渫取消訴訟A2の判決が下されたが、原告適格がないとの理由で、却下判決となった。
2月29日に、横浜地裁横須賀支部で、浚渫差止仮処分C1に対する決定が出されたが、差止の仮処分申立は却下された。
差止の本訴B1も5月12日に請求棄却の判決が下された。
原告らはそれぞれ抗告、控訴したが差止の仮処分の抗告事件C2は7月31日に棄却されてしまった。
5、そして08年8月末に浚渫工事は完了してしまい、9月25日に原子力空母GWが米海軍横須賀基地に強行配備された。
そのため協議取消の行政訴訟控訴審A3は、10月1日訴えの利益なしとして、却下されてしまい、原告らは上告A4した。
浚渫差止の民事訴訟控訴審B2では国が訴えの利益がなくなったことによって却下を求めたのに対して、
原告らが原子力空母の浚渫水域航行禁止請求等を追加したところ、12月に東京高裁が追加請求について横浜地裁に移送するD1という決定を出した。
6、元々の浚渫差止請求B2は09年3月18日訴えの利益なしとして、却下され、原告らは上告B3した。
しかし、10年2月19日に、行政訴訟A4も、民事訴訟B3も最高裁は上告不受理決定を出して、確定してしまった。
7、東京高裁が横浜地裁に移送した新航行禁止裁判D1は、09年4月より横浜地裁で1年間審理されたが、
10年5月20日に争点を回避した門前払いに近い棄却判決が出された。
原告らは控訴し、10月5日に東京高裁での控訴審D2が始まったが、東日本大震災直後の11年3月17日に棄却判決が出された。
さらに原告らは上告しD3、5回にわたって多数の署名を持って最高裁に上告を受理するよう要請したが、
参議院選挙直後の13年7月24日に、最高裁は上告不受理決定を出して、敗訴が確定してしまった。
8、しかしながら、この裁判には首都圏一帯の1000名を超える原告が加わり、署名も数十万筆を数え、
6年間にわたって12回の裁判の度にマスコミにも繰り返し報道されて、原子力空母の危険性を大きく世論に大きく訴える役割を果たした。
また、この裁判を通じて、原子力空母の危険性と治外法権性についての多くの専門家の貴重なレポートが作成され、
その裁判記録はそれらを集大成し、多くの宣伝材料を生み出す貴重な財産となった。
また国が原子力空母について全く情報を持っておらず、米国任せで全くコントロールできていない無責任な実態が明らかになった。
全体の裁判の流れ (×は棄却、△は却下判決)
A1協議△ → A2協議取消△ →A3協議取消控訴△ →A4協議取消上告△
C1浚渫差止仮処分× →C2浚渫差止仮処分抗告×
B1浚渫差止本訴× →B2浚渫差止控訴△ →B3浚渫差止上告△
→D1原子力空母航行禁止本訴× →D2 控訴審× →D3 上告審×
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文責 NPJ編集部
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