【事故の概要】
職質をされて逃げただけで、結果的に射殺された中国人男性の妻らが、警官を任用している栃木県を相手にして損害賠償を請求した事案。
同時に、特別公務員暴行陵虐致死罪で宇都宮地検に告訴した。
最高裁判例にあるように、逮捕行為を一時中断し、同僚警察官の到着を待つことは十分可能であり、
その方法によって十分対処できる場合にまで拳銃を発砲することは違法である。
県警は正当防衛だと判断し、発砲した警官及び監督責任者は何らの責任もとらされなかった。
身内に甘い警察に宇都宮地裁及び宇都宮地検がいかなる判断を下すか注目される。
【特別公務員暴行陵虐致死罪】
刑法第195条
1 裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者が、その職務を行うに当たり、
被告人、被疑者その他の者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときは、7年以下の懲役又は禁錮に処する。
2 法令により拘禁された者を看守し又は護送する者がその拘禁された者に対して暴行又は陵辱若しくは加虐の行為をしたときも、前項と同様とする。
(特別公務員職権濫用等致死傷)
同第196条 前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。
【最高裁判例】
Aが所持していた前記ナイフは比較的小型である上、Aの抵抗の態様は、相当強度のものであったとはいえ、一貫して、被告人の接近を阻もうとするにとどまり、
被告人が接近しない限りは積極的加害行為に出たり、付近住民に危害を加えるなど他の犯罪行為に出ることをうかがわせるような客観的状况は全くなく、
被告人が性急にAを逮捕しようとしなければ、そのような抵抗に遭うことはなかったものと認められ、その罪質、抵抗の態様等に照らすと、
被告人としては、逮捕行為を一時中断し、相勤の警察官の到来を待ってその協力を得て逮捕行為に出るなど他の手段を採ることも十分可能であって、
いまだ、Aに対しけん銃の発砲により危害を加えることが許容される状况にあったと認めることはできない。
そうすると、被告人の各発砲行為は、いずれも、警察官職務執行法七条に定める 「必要であると認める相当な理由のある場合」 に当たらず、
かつ、「その事態に応じ合理的に必要と判断される限度」 を逸脱したものというべきであって (なお、仮に所論のように、
第三現場におけるけん銃の発砲が威嚇の意図によるものであったとしても、右判断を左右するものではない。)、
本件各発砲を違法と認め、被告人に特別公務員暴行陵虐致死罪の成立を認めた原判断は、正当である。
(平成11年2月17日最高裁判所第1小法廷決定/平成7年(あ)第463号)
【警察官職務執行法7条】
警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、
自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、
その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。
【妻のコメント】
「なぜ発砲したのか疑問。夫の死は私の家庭に災難をもたらした」
「日本の法律の公正性を信じている」
(提訴後、宇都宮市の県弁護士会館で開かれた会見にて)
【手続きの経過】
控訴しました。舞台は東京高裁に移ります。
【次回期日の紹介】
2011年4月28日(木) 午後2時半(424号法廷)
判決言渡予定
[参考]
・「空に向けて威嚇射撃をすると危険だと思った…
中国人射殺警察官が証言」
・警察官が中国人に発砲した状況
〜こりゃ、子供のけんかに銃を持ち込んだようなもんだ
・知らさずに操る者と操られる者と
…栃木警官発砲事件で裁判所前で街頭演説する人の誤り
文責 NPJ編集部