2013.10.22更新

新・北海道石炭じん肺訴訟損害賠償請求事件
(第1陣〜第3陣)
事件名:新・北海道石炭じん肺訴訟損害賠償請求事件
(第1陣〜第3陣)
係属機関:札幌地方裁判所民事第5部合議係(中山幾次郎裁判長)
       事件番号 第1陣:平成17年(ワ)第1857号 外
              第2陣:平成19年(ワ)第1046号 外
              第3陣:平成19年(ワ)第2064号 外
次回期日:10月25日(金) 11時〜。
       新・北海道石炭じん肺訴訟第2陣、第3陣、第4陣とも同一期
       日で、順次手続を行う予定になっています。
紹介者:川島英雄弁護士


【事件の概要】
(1) 当事者
  原告:北海道内に存在した炭鉱において、坑内粉じん労働に従事してじん肺に罹患した者、あるいはじん肺に罹患しその結果死亡した被災者の相続人
  第1陣の原告数は246名
  第2陣の原告数は現時点で477名
  第3陣の原告数は現時点で375名

  被告:国

(2) 請求の内容の概要
  じん肺により原告らないし被災者がそれぞれ被った精神的苦痛に対する慰謝料の請求

(3) 請求の原因の概要
  「じん肺」 とは、炭鉱における粉じん労働によって罹患する不可逆的で進行性の疾病をいう。
  「じん肺」 に罹患するという知見は、遅くとも昭和初期にはその予防のための工学的対策を含め確立していたが、 国は石炭の生産を優先させるべく格別の法制を敷き、昭和35年4月に保安規制の権限を直ちに行使することが可能であったにもかかわらずこれをしなかった。
  なお、最高裁は、通産大臣が昭和35年4月以降 「鉱山保安法に基づく…保安規制の権限を直ちに行使しなかったことはその趣旨・目的に照らし、 著しく合理性を欠く」 と国の不法行為責任を認めている (筑豊じん肺訴訟最高裁判決)。

【手続きの経過】
第1陣
  2005年に提訴。第2陣以降と比べてかなり早期に提起した訴訟のため、和解済みの原告数も多い。

第2陣
  2007年4月に提訴。追加提訴も行っており、今後も随時追加提訴する可能性がある。

第3陣
  2007年7月に提訴。追加提訴も行っており、今後も随時追加提訴する可能性がある。

【現在の状況】
第1陣
  12月4日の期日では、残る7名の原告のうち、1名については和解可能と国から回答あり。 ほか6名について次回期日に全員和解したいと考えており、4名については国からの和解可能か否かの回答待ち、 2名については原告側で必要な準備を行う予定である。

  2008年2月8日(金)
  「全員和解が実現して、第1陣の訴訟を終結」

     [全面和解声明]

第2陣
[2007年12月21日の期日の内容]
  国が申し立てた調査嘱託の一部について、労働局から回答あり。
  今後も順次回答される見込みなので、順調なら、2月末から3月ころまでに原告全員分の回答がなされる見込み。

[2008年2月15日の期日の内容]
  国が申し立てた調査嘱託の一部について、さらに労働局から回答あり。
  順調なら、3月末までに原告全員分の回答がなされる見込み。
  また、原告らの就労歴に関する国からの疑問点を期日間に明示してもらい次回期日までに原告らで回答することになった。

[2008年4月25日の期日の内容]
  国が申し立てた調査嘱託については、全て労働局から回答あり。
  原告らの就労歴に関する国からの疑問点について、原告らから一部回答。引き続き次回期日までに回答予定。
  国が原告らに 「鉱業権者」 等を明らかにするよう求めてきたが、原告らでできることには限界があることから、可能な範囲でのみ、原告らが対応することにした。
  原告らと企業との和解状況については、次回期日までに原告らから示すことにした。
  そのほか、相続関係の書証を提出。

[2008年6月27日の期日の内容]
・ 原告2名について訴訟を取り下げ。
・ 国から出されていた個々の原告の就労に関する疑問点につき、原告側から補充の書証等を提出。
・ 国から依頼されていた 「鉱業権者等リスト」 への回答につき、原告側で可能な範囲で対応し、120番まで回答済み。
  今後期日間に、さらに国から追加依頼がなされる予定。
・ 原告らと企業との間の和解状況について、必要な範囲で原告から情報を提供。
  次回期日までに、国が今後の対応を検討してくる。
・ 相続関係の書証を追加提出。

[2008年9月5日の期日の内容]
・ 被告国から依頼されていた 「鉱業権者等リスト」 への回答につき、原告側で可能な範囲で対応し、352番まで回答済み。 今後近日中にさらに国から最後の追加依頼がなされる予定。 原告側で10/3までに回答予定。
・ 既に 「鉱業権者等リスト」 に回答済みの352番までの原告のうち、国が和解可能性があると考えた原告については、国から企業に対する調査嘱託を予定。 企業からの回答が整い次第、一部の原告については和解できる見込み。
・ 相続関係の書証を追加提出。

[2008年10月24日の期日の内容]
・ 原告 (現時点で総数475名) のうち、106名について、裁判上の和解が成立。
・ 今後も、今回和解が成立した原告と同様の手続にしたがって、国が和解可能と考えた原告について、順次企業に対する調査嘱託を行い、 その回答を得た段階で、和解をしていく予定。
  次回の和解は1月の期日で成立させる予定。
・ 原告側は、遺族原告の相続関係の書証をさらに追加提出し、あわせて、提訴後に亡くなった原告の承継・相続等の対応を行う。

  2008年12月19日の期日では、
・ 国からの調査嘱託に対して、企業から回答あり
・ 相続関係の疑問点や追加書証の提出は、随時原告側で準備
・ 提訴後に亡くなられた方の承継手続や相続書証の提出も随時対応していく
・ 次の和解は、1月上旬までに国側から提案あり
  前回の和解の際と同様、国の提案を受けて原告側で検討し、必要な対応を済ませ、次回期日に和解を実現させる方向で対応することになりました。

  2009年1月23日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 原告 (現時点で総数475名) のうち、前回和解した106名のほか、今回149名について、裁判上の和解が成立。
・ 今後も、今回和解が成立した原告と同様の手続にしたがって、国が和解可能と考えた原告について、順次企業に対する調査嘱託を行い、 その回答を得た段階で、和解をしていく予定。次回の和解は4月以降の期日で成立させる予定。
・ 死亡原告・遺族について、国から、2月中に、「死因 (じん肺との因果関係) に対する調査」 の指摘がなされる予定。 原告側は、遺族原告の相続関係の書証の追加提出、提訴後に亡くなった原告の承継・相続等の対応のほか、この国からの指摘に対する対応作業を行う。

  3月27日の期日の内容は以下のとおりです。
  2009年1月23日と3月27日の期日の間に、死亡原告・遺族について、国から、「死因 (じん肺との因果関係) に疑義ある原告リスト」 が提出された。
  これに対し、原告側から、原告1名について労基署に対して調査嘱託を申立て、採用となった。
  引き続きその他の原告についても、遺族年金授受の事実を確認の上、調査嘱託(ないし遺族原告の意向確認)の手続を進める。

  また、次回期日における和解に向け、国から、各有資力企業に対して、和解金受領の有無についての調査嘱託を申立て、原告はこれに同意。
  対象原告は92名。回答がそろい次第、次回期日には和解成立可能と思われる。
  ただし、該当原告のうち1名はじん肺管理区分がより進んでいる (管理3ロ→4) という事実が判明。 これをどのように取り扱うか、期日外で担当者同士で確認をすることとなった。

  さらに、1月提訴の第2陣第3次 (平成21年(ワ)第285号) について訴状及び答弁書陳述。 書証等の基本資料は提示済み。従前と同様、和解成立に向けて国側が対応する。 相続及び受継関係の整理は、引き続き原告側で行い、できた部分から提出していく予定。

  5月29日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 第2陣訴訟について3回目の和解が成立。
  対象原告は89名、和解総額は約5億8000万円。
  これにより第2陣の和解未了原告数は134名となった。
・ 今後も、引き続き和解に向けた準備を継続し、原告側は、被告国から提出されている 「死因 (じん肺との因果関係) に疑義ある原告リスト」の対象原告について、 じん肺罹患と死亡との因果関係を明らかにする手続を進める。また、引き続き相続関係の書証の提出を行う。
・ 国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

  2009年7月17日の期日の内容は以下のとおり。
・ 国から提出されている「死因(じん肺との因果関係)に疑義ある原告リスト」の対象原告21名のうち、これまでに遺族年金等の支給により、 じん肺死の因果関係が明らかな9名の資料 (労基署への調査嘱託回答書) については、裁判所に提出済み。 残る12名について、原告側で、なおじん肺共同原因死の可能性がないかどうかを検討。
・ 原告の一部について、相続関係書証の提出を行った。原告側は、引き続き相続関係の書証の提出を行う。
・ 国から、次回で50名程度の和解が可能との見通しあり。期日外で準備を進め、次回期日で和解成立させることができるようにする。

  2009年10月16日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 第2陣について4回目の和解が成立。
  対象原告は56名、和解総額は約3億4000万円。
  これにより第2陣の和解未了原告数は78名となった。
・ 今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。
  原告側は、10月末までに、可能な限りで追加の資料提出等を行う。
  国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。
・ 追加提訴分(平成21年(ワ)第2024号)の訴状及び一部訂正と答弁書の陳述。

  12月25日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 第2陣について5回目の和解が成立。
  対象原告は12名、和解総額は約9500万円。
  これにより第2陣の和解未了原告数は66名となった。
・ 今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。
  原告側は、12月末までに、可能な限りで追加の資料提出等を行う。
  国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

  2010年2月26日の期日の内容は以下のとおりです。
  第2陣について6回目の和解が成立。対象原告は13名、和解総額は約1億1000万円。 これにより第2陣の和解未了原告数は53名となった。
  今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。 原告側は、4月末までに、可能な限りで追加の資料提出等を行う。 国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、 次々回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

  2010年5月7日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 異動により裁判官の交代あり。
・ 追加提訴(原告4名)が併合され、訴状及び答弁書陳述、書証提出。
・ その他、調査嘱託の結果顕出など、和解に向けた手続を行った。
・ 今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。
  原告側は、5月14日ないし5月24日までに可能な限りで追加の資料提出等を行う。
  被告国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

  2010年7月20日の期日の内容は以下のとおりです。
  原告20名について和解成立。
  今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。
  原告側は、8月末までに可能な限りで追加の資料提出等を行う。
  国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

第3陣
[2008年2月15日の期日の内容]
  第2陣の調査嘱託が終了後直ちに第3陣分の調査嘱託ができるよう、国は3月に調査嘱託の申立をする予定。
  また、第3陣には企業と交渉する予定の原告とそうでない原告がいるので、企業交渉の予定のない原告について国との和解を先行させるべく、 原告らで対象原告をリストアップすることにした。

[2008年4月25日の期日の内容]
  第3陣分の調査嘱託を国は申立済み。
  企業交渉の予定のない原告について国との和解を先行させるべく、原告らで対象原告をリストアップして提出。
  相続関係書類や訴訟承継のための準備を次回までに行う予定。
  第4次提訴を行ったので、次回期日までに必要書類を提出予定。

[2008年6月27日の期日の内容]
・ 管理区分決定・合併症認定についての調査嘱託は、第3次提訴までの原告約300人のうち、約半数の回答あり。残りも近日中に回答される見込み。
・ 国は第2陣同様、個別原告に疑問点があれば指摘することになった。
・ 第4次提訴分の訴状、答弁書を陳述。
  国が第4次提訴原告の一部に対し、消滅時効の援用の主張をしてきた。
  原告らは、次回までに、国の消滅時効援用の主張に対する反論を予定。
  第4次提訴分についても、いずれ調査嘱託がなされる予定。

[2008年9月5日の期日の内容]
・ 管理区分決定・合併症認定についての調査嘱託は、第4次提訴の原告1名分以外は終了。
・ 国は第2陣同様、個別原告に疑問点があれば指摘し、また、原告全員について、「鉱業権者等リスト」への回答を求めてくる見込み。
・ 相続等の補充証拠の準備は出来る範囲で随時対応することとした。
・ 国の消滅時効の援用の主張に対し、原告らは、11月10日までに反論の準備書面を提出予定。 この準備書面を公開の法廷で主張すべく、次回期日を口頭弁論期日とすることとした。

  11月21日の期日では、
・ 第4次提訴原告のうち9名に対し、被告国が消滅時効援用の主張をしているため、原告側からこれに対する反論の準備書面 (求釈明含む) 及び関連証拠を提出。
・ 原告ら代理人弁護士3名による準備書面を要約した意見陳述、同じく原告ら代理人弁護士1名による対象原告1名についての意見陳述、最後に弁護団長から総括的な意見陳述を行った。
・ 消滅時効援用に関しては、今回の原告らの準備書面に対し、被告国が1月末までに回答ないし反論を行う予定。

  2009年1月23日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 原告側から相続関係の書証の一部を提出。
  さらに随時継続して提出予定。
・ 国から、原告の在籍していた就労先を示す 「就労リスト」 の提出要求あり。原告側で対応を検討することとした。
・ この期日間に第5次訴訟を提訴。
  訴訟の併合は、次回口頭弁論期日で行われる見込み。

  2009年2月20日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 裁判所の構成が変わり、弁論手続が更新されました。
・ 5次訴訟(46名分⇒原告合計375名)訴状及び訴状訂正申立書陳述、答弁書陳述 (7名につき時効援用主張)、証拠 (5次脱落分) 提出。
・ 4次訴訟
  消滅時効につき、国から提出されていた準備書面陳述及び2.20付原告準備書面陳述。
  意見陳述実施 (原告安部二三男さん、代理人山田、小笠原、小坂)。
・ 原告から国に対し、「筑豊じん肺最高裁判決の概要」 とは何か明確にするよう迫ったが、国は 「従前の態度と大きく変えるつもりはない」 とのこと。
  次回 (5月予定の弁論) は、国から反論はなされないことを前提に、原告から再度時効に関する主張を内容とする準備書面を提出して進行を図ることとなった。

  3月27日の期日の内容は以下のとおりです。
  国から要求されていた「就労リスト」については、2月20日と3月27日の期日の間に原告側から提出済み。
  国がこれを確認の上、在籍炭鉱等の職歴照会を正式に原告側に行うこととなった。

  国が原告数十名について、再度社会保険庁に対する職歴確認のため、 文書送付嘱託の申立を検討中とのこと。次回期日までに行われる見込み。

  相続に関する書証を11名分提出。引き続き原告側で提出作業を継続予定。
  消滅時効に関する主張について、国はこれ以上主張立証する予定はないとのこと。 原告側で必要と考える主張立証を次回までに準備することとなった。

  5月29日の期日の内容は以下のとおりです。
(弁論)
・原告から消滅時効に関する主張をまとめた準備書面及び書証を提出。 また、代理人弁護士による準備書面の概要をまとめた意見陳述と、原告本人の意見陳述を行った。
  被告国は次回までに反論を予定。

(進行協議)
・ 裁判所から、国の時効主張対象者 (現時点で原告のうち17名) について、判決に熟するための準備として、 在籍・じん肺認定・損害額など、消滅時効以外の部分について詰める作業を、早急に進めてほしい旨の指揮が当事者双方に対してなされた。
  期日間に原告側で可能な準備を進め、国側に資料等の提供を行うことに。
・ 原告側から、16名分の相続関係資料を提出。
・ 社会保険庁が、国から申し立てられた文書送付嘱託について、各原告本人の個別の同意書がなければ対応できないという態度を示したため、 早期進行をはかるためやむを得ず原告側で同意書を準備することにした。
・ 国から、第3陣についても、和解可能な原告 (国のみに請求する原告) については、第2陣と平行して和解成立への準備を進めるという意向が示された。
・ 原告側は在籍炭鉱等の職歴照会に対する対応、相続に関する書証の提出準備を継続。

  2009年7月17日の期日の内容は以下のとおり。
・ 国の消滅時効主張対象者 (現時点で原告のうち17名) について、判決に熟するための準備として、原告側で、 在籍・じん肺認定・損害額などに関する主張を8月20日までに行い、国がこれに認否することとした。
・ 社会保険庁に対する文書送付嘱託について、必要とされる各原告本人の個別の同意書を、原告側でまとめて準備して期日前に提出することになった。
・ 国は、7月末までに消滅時効についての準備書面を提出予定。
  原告側は、これに対する反論や、立証の必要性を次回までに検討。
  なお、本日、国はあらためて、「消滅時効の起算点論に関し、個別原告の本人尋問までは求めない」 ことを明言。

  9月4日の期日の内容は以下のとおりです。
(弁論)
・ 原告から消滅時効に関する主張をまとめた準備書面及び書証を提出。 また、代理人弁護士による準備書面の概要をまとめた意見陳述と、原告本人の意見陳述を行った。
  原告側から裁判所に対し立証計画を示したところ、当初の訴訟指揮は、原告側の立証計画に否定的だったが、合議の後、 被告国が積極的な反対尋問等の意向を有していない様子であることから、「現時点で」という留保付きではあるものの、以下のとおりで弁論を行うことに決定した。

11月13日(金) 10:30〜12:00、13:30〜16:30
  手続は弁論 (原告本人尋問。一般傍聴可能ですが、抽選の可能性あり。使用法廷も未定。)
12月25日(金) 13:30
  手続は弁論 (一般傍聴可能ですが、抽選の可能性あり。使用法廷も未定。)

(進行協議)
・ 消滅時効の主張の対象原告について、分離結審に向けた作業の確認を行い、概ね次回の弁論準備期日までに、以下の点を準備することとなった。
 1 4名の原告尋問者の確定と、その陳述書提出
 2 それ以外の時効対象者の陳述書提出 (10月末をめどに)
 3 個別の原告の炭鉱在籍の主張を行う
 4 企業との和解交渉中の原告の取扱いを訴訟外において原被告間で確認する
 5 未提出の相続関係書証の提出
 6 相続に関する主張の整理
 7 損害論の合意のありようについて原告側から準備書面を提出
・ 有資力企業に対する請求のない原告の一部については、次回の弁論準備手続において和解が成立する見込みがあることが、国から報告された。

  2009年10月16日の期日 (弁論準備) の内容は以下のとおりです。
・ 第3陣について初めての和解が成立。
  対象原告は72名、和解総額は約4億9000万円。
  これにより第3陣の和解未了原告数は301名となった。
・ 今回の期日までに原告側が準備した資料等に基づき、国は、次回の和解のため、12月の期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。
・ 国の時効援用の主張後に死亡した原告について、時効主張が撤回された。
・ 消滅時効の主張の対象原告について、分離結審に向けた作業の確認がなされた。
  原告側からは、原告尋問予定者の陳述書提出を10月末までに、それ以外の時効主張対象者の陳述書提出を11月の早い時期に、それぞれ行うこととした。
  場合によっては、署名捺印未了の原稿を事実上示す対応もありうる。

  11月13日の期日(弁論)の内容は以下のとおりです。
・ 時効主張対象原告のうち4名の証人尋問を実施。
・ 4名の尋問後、国が時効主張対象原告全員(外に12名)の反対尋問を要求。

  裁判所としては、これら12名の原告の陳述書が提出されている以上、反対尋問を却下することは法律上できないので採用するが、 年度内結審を考えると速やかに尋問の実施が必要なので、民事訴訟法268条の、受命裁判官(事件を担当している裁判所の合議体から委託を受けて手続等を行う、 その合議体メンバーの裁判官)による尋問を実施することに決定。
  11月下旬から12月中旬ころまでの間に、受命裁判官による尋問が4回に分けて実施されることになった。

  12月25日の期日(弁論及び進行協議)の内容は以下のとおりです。
・ 第3陣について2回目の和解が成立。
  対象原告は19名、和解総額は約1億6000万円。
  これにより第3陣の和解未了原告数は282名となった。
・ 今回の期日までに原告側が準備した資料等に基づき、   国は、次回の和解のため、12月の期日における和解可能な原告をリストアップし、各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。
・ 国の消滅時効の主張の対象原告のうち1名について、国が主張を撤回。
・ 時効主張対象原告について分離結審する前提としての準備を継続。
  期日間にも、主張整理等を原告側・被告側・裁判所の三者ですりあわせることとした。
・ 最終準備書面は、双方とも遅くとも1月29日までに提出することになった。

  2010年2月26日の期日(弁論及び進行協議)の内容は以下のとおりです。
  第3陣について3回目の和解が成立。対象原告は74名、和解総額は約4億2000万円。 これにより第3陣の和解未了原告数は191名となった(分離結審した15名を除く)。

  今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。 原告側は、4月末までに、可能な限りで追加の資料提出等を行う。 国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、 次々回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

  なお、分離結審した15名については、3月26日に判決が言い渡され、国の消滅時効の援用が認められず、 全員について請求を認容する判決が下されています。

  2010年5月7日の期日の内容は以下のとおりです。
・ 異動により裁判官の交代あり、弁論を更新。
・ 追加提訴(原告10数名)が併合され、訴状及び答弁書陳述、書証提出。
・ その他、調査嘱託の結果顕出など、和解に向けた手続を行った。
・ 今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。
  原告側は、5月14日ないし5月24日までに可能な限りで追加の資料提出等を行う。
  被告国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

  2010年7月20日の期日の内容は以下のとおりです。
  25名について和解成立。
  今後も、引き続き和解に向けた準備を継続することとなった。
  原告側は、8月末までに可能な限りで追加の資料提出等を行う。
  国は、次回の和解のため、上記の原告側の準備も踏まえ、次回期日における和解可能な原告をリストアップし、 各有資力企業に対して和解金受領の有無についての調査嘱託申立を行う予定。

【裁判の目的】
  先に述べたとおり、石炭じん肺に関する国の責任については、既に最高裁判決で結論が下されている。この最高裁判決を受けて国は、当時全国の他の裁判所に係属中の石炭じん肺訴訟については積極的に和解に応じたものの、以後も続々と認定を受けるじん肺患者に対する積極的な支援策にまでは踏み込まなかった。

  このため、現在も新たに認定を受けているじん肺患者は、既に最高裁判決で結論が下されている国の責任をさらに追認してもらうための訴訟を提起しなければ、国からじん肺罹患に関する損害賠償を受けることができない状況にある。他方で、国は、最高裁判決の要件に該当する患者については、訴訟を提起した上での裁判上の和解による解決には応じている。
  このため、本訴訟は、基本的には判決を第一の目的とするものではなく、上記の裁判上の和解を目指した訴訟となっている。

【一言アピール】
  最高裁判決が下されていることにより、既にじん肺は解決しているとの印象が世の中に広まっているのではないかということを危惧している。

  じん肺は粉じんを吸引したことにより発生する不可逆的な病気であり、また、発症までにある程度の期間を要するものでもある。 北海道の石炭鉱山は、釧路の炭鉱を除けば主なものは平成7年頃までにほぼ閉山したが、 この頃以前に炭鉱内で働いていた労働者が、現在になってようやくじん肺として認定を受けるようになったという事例も多数存在するのである。

  なお、釧路にある太平洋炭鉱は北海道内で最も遅く、平成14年に閉山したが (ただし現在も別会社が規模を縮小して引き継ぎ稼働中)、 第3陣にはこの太平洋炭鉱に在籍していた労働者も一定数含まれており、今後も当面の間はじん肺の認定を受ける患者がいなくなることはないと思われる。

  また、とくに本件訴訟の対象となっている石炭じん肺は、国全体の経済的発展のため国政上、積極的に進められた石炭政策の犠牲の下に生じたものであり、 石炭政策によるわが日本の経済的発展は、じん肺患者の健康と生命の犠牲の下に成り立ったと言っても過言ではないのである。

  このように、じん肺は決して過去の事件ではない。現在もじん肺に罹患して苦しんでいる患者が多数存在しており、 これらの患者の苦しみは我々の経済的恩恵の負の遺産なのだということを、ぜひ国民全体にご理解いただきたい。

文責 弁護士 川島英雄