目黒社会保険事務所職員ビラ配布事件(堀越事件)
事件名:目黒社会保険事務所職員ビラ配布事件 (堀越事件)
係属機関:東京高等裁判所第5刑事部 中山隆夫裁判長
次回期日:3月29日(月) 10:00〜
傍聴希望の方は、直接法廷にお越し下さい。
ただし、満席の場合は先着順になりますのでご了承下さい。
また、公判後、弁護士会館にて報告集会を行う予定です
(どなたでも参加できます)。
次回期日の内容:判決言渡
紹介者:佐々木 亮弁護士
連絡先:国交法弾圧を許さず言論の自由を守る会
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【事件の概要】
ビラを配布していた社会保険事務所の公務員が国家公務員法違反として逮捕・起訴された事案。
弁護団は、国家公務員法・人事院規則の政治行為禁止の規定は違憲無効として争っている。
すなわち、政治的自由 (表現の自由) を過度に規制し、事実上、国家公務員の政治的自由を剥奪している国家公務員法・人事院規則の規定は、憲法違反である。
休日に職場と無関係な自宅周辺で、しかも誰かと話すわけでもないビラのポスティング行為は“犯罪”として処罰すべきではない。
【1審の裁判】
第1審は有罪の不当判決。ただし、罰金刑に執行猶予を付するという異例の判決で、むしろ本件を処罰することの不合理性が際立つ結果となった。
【控訴審の裁判】
控訴審2008年2月6日の期日では、裁判長が交代しました。前任の裁判長が定年退官し、新たに中山隆夫裁判長が赴任しました。
そこで、弁論の更新 (裁判官の構成員が変わる際等に行われる手続) が行われました。
また、弁護団から提出した明治大学法科大学院高橋和之教授の意見書が採用され、要旨の告知が行われました。
メインイベントは国家公務員の労働組合 (国公労連) の前副委員長の山瀬さんの証人尋問でした。
山瀬さんは自らの経験と組合の幹部であった立場から、被告人のような国家公務員が政治的行為をすることを、罰則をもって禁止することのおかしさを証言しました。
3月26日の期日では、行政法の岡田教授 (早稲田大学法科大学院) が証言されました。
現在の国家公務員法に至るまでの歴史とその歴史の中で今の政治的行為の禁止規定がいかに異常であるかについて、非常にわかりやすく語られました。
そして、そもそも国家公務員法の目的に照らすと、本件のような行為に刑事罰を設定していることはもちろん、
それを警察主導で適用するということのおかしさも語られました。
また、猿払事件最高裁判決についても鋭い批判がなされました。
特筆すべきは、裁判長から補充質問があったことです。裁判長も行政法的なアプローチを無視することはできないということを強く感じました。
5月21日の期日では、京都学園大学法学部講師の西片聡哉先生が欧州人権条約における公務員の表現の自由の保障について証言しました。
証言によって、本件において、被告人の行為に対して刑罰を与えるということは、人権保障の観点から許されず、
本件行為に対し刑事罰をもって対する異常性が、国際法の観点から明白になりました。
11月5日 (第6回公判期日) では、裁判官 (右陪席裁判官) の交代による弁論の更新がありました。
更新弁論では、菊池弁護人から、先日の世田谷国家公務員法違反事件において、東京地裁がろくな憲法判断もせずに有罪の結論にしたことを厳しく批判し、
たとえ最高裁判決があっても、時代に合わなければ判例を変更することが下級審の裁判官の使命であることを強く主張しました。
また、石崎主任弁護人の更新弁論では、本件がいかに憲法違反か、捜査が違法であるか、という点が簡潔に述べられました。
引き続き、川崎英明教授の証人尋問が行われました。川崎教授は、刑事訴訟法を専門としており、本件の捜査が適法か違法かという点について証言をいただきました。
証言では、本件の捜査が事前捜査であること、事前捜査は刑事訴訟法では認められないこと、仮に認められるとしても厳しい要件が課せられることなど、
理論的に証言されました。そして、本件では、どのような考え方をとっても正当化することのできない事前捜査であり、
捜査に名を借りた単なる情報収集ではないかとの疑いをぬぐいきれない、との証言もされました。
また、ビデオ撮影、尾行捜査については、たとえ公道上であっても、一切のプライバシーが放棄されているわけではなく、
その者の行動を全て継続的に把握するようなやり方は、対象者の主観的にも許容されないし、その主観について社会的に合理的であるとのコンセンサスがあれば、
やはりプライバシー侵害となることを述べられ、本件の29日に及ぶ尾行・ビデオ撮影捜査は、たとえ公道上の行為であっても、
プライバシー侵害にあたることを証言されました。
これらの川崎教授の証言によって、本件捜査の違法性はいっそう明らかになりました。
閉廷間際に、裁判長から、弁護団が再三求めている24本の未開示のビデオテープの証拠開示について、
数週間のうちに裁判所の考え方を明らかにするので進行協議期日を入れたい旨述べられて、閉廷しました。
2009年1月28日の期日の内容は以下のとおりです。
<証人尋問>
約1時間半にわたって、元郵便産業労働組合委員長の田中氏が証言しました。
証言では、全逓 (社会党) と全郵政 (民社党)、大樹の会 (自民党) の活発な選挙活動の実態が述べられ、しかし、これらのことが職場に 「政治的対立」 を生んだとか、
業務を歪めたなど、国民の信頼を損なうことがなかったことが述べられました。
また、証言によって、猿払事件判決の前後でもこれらの政治活動に変化がなかったことや、
郵政民営化に際して政治的行為の禁止規定がなくなることについて議論さえなかったことも明らかになりました。
現場からの迫力のある証言であり、聞き応えのあるものでした。
なお、検察官からの反対尋問、裁判官からの補充尋問ともにありませんでした。
<新たな証人決定>
裁判所は石村修教授 (専修大学・憲法) を新たに証人として採用決定しました。
石村先生には、次回公判にて、ドイツ行政法下における公務員の政治活動について証言いただくことになりました。
3月18日の期日では、石村教授の証人尋問が実施され、ドイツ行政法下における公務員の政治活動の制限についてお話がありました。
その中で、ドイツでは本件のような行為を理由に刑事罰を与えるということはなく、日本における公務員の政治活動の規制がいかに異様であるかが浮き彫りになりました。
5月13日、控訴審第9回公判が開かれました。
専修大学法科大学院教授である晴山一穂先生に証人に立っていただき、フランスの公務員制度における政治活動への規制と日本の場合との比較をしていただきました。晴山先生には、フランスの関係法令や判例を丹念に分析いただき、その上でフランスの公務員の政治活動の自由について体系的で、非常に分かりやすいお話をしていただきました。
日本の公務員への政治活動の規制の異常性が浮き彫りになった証言でした。
その後、陪席裁判官が変わったことから、弁護団は更新弁論をしました。
内容は、国際法の観点から本件がいかに世界の常識から外れている事件であるのかを主張しました。
日本の国家公務員法・人事院規則による政治的行為禁止規定、これが合憲であるという猿払事件判決が国際的には通用しないものであることを主張しました。
更新弁論後、南山大学院教授の榊原秀訓先生の証人採用が決定されました。榊原教授には、イギリスにおける公務員の政治活動の自由をお話いただく予定です。
7月8日、控訴審第10回公判が開かれました。
南山大学院教授の榊原秀訓先生に証人に立っていただき、先生に和訳していただいたイギリスの国家公務員管理規則などを参照しながら、
イギリスにおける公務員の政治活動の自由と制約について証言していただきました。
また、猿払事件の最高裁判例解説、いわゆる 「香城解説」 ですが、これが英語の文献を誤訳していることが明らかになりました。
本来、「戸別訪問」 と約すべきところを、香城解説では、「選挙運動」 と 「誤訳」 しているのです。
さすがに、裁判官も気になったのか、補充尋問でこのことを改めて榊原教授に問いましたが、最終的には誤訳を認めざるを得ないものとなったと思います。
ここまで3回にわたってドイツ、フランス、イギリスの公務員制度について、第一線の学者からお話をいただき、
いよいよ日本の国家公務員法における政治活動への規制のおかしさが明らかになってきました。
・ビデオの証拠開示について
弁護団から再三にわたって開示請求をしてきたビデオについて、そろそろ裁判所が何らかの判断をする可能性が高まっています。
9月16日の期日には、何か結論が出されるかもしれません。傍聴席を埋めて、ご支援をよろしくお願いします。
9月16日の第11回公判では、早稲田大学教授の曽根教授(刑法)の尋問が行われました。
曽根教授は、第1審判決の 「累積的・波及的効果」 論に対して、刑法の原則から鋭く批判をなされました。
また、刑法における 「危険」 概念、具体的危険犯と抽象的危険犯の違い、国家公務員法・人事院規則の刑罰法規としての異常性などを証言されました。
そして、職務との関連性の無い堀越さんの行為は刑罰の対象とならないことについても証言されました。
ビデオ証拠開示される。
9月25日、裁判所が検察官にビデオの証拠開示を勧告しました。
これを受けて検察官は22本の未開示ビデオや関連する捜査報告書の開示に応じました。
今後、弁護団は早急にビデオの分析を行い、証拠請求をすることになります。
【一言アピール】
この事件は公務員の事件として見るというよりは、市民の権利の問題としてみて欲しいと思います。
今は、国家公務員への自由の制限ですが、いつの間にか国民一般への規制へとすり替わりかねない危うさがあります。
本事件の被告人は、一般の人であれば全く問題のない行為をしていただけです。国家公務員としての地位を利用したなどの事情は一切ありません。
それを長期間の尾行捜査の上、逮捕・起訴するという異常性を、よく味わってほしいと思います。
文責 弁護士 佐々木 亮


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