2010.5.25更新

落合川とホトケドジョウを救え!〜川が原告となった初の訴訟

事件名:工事差止請求訴訟
内  容:落合川の埋立工事の差し止め
当事者:落合川、ホトケドジョウ、周辺住民VS東京都
係属機関:東京地方裁判所
判決期日:2010年4月20日 原告敗訴。
       判決概要
       原告は控訴しました。
紹介者:藤田城治弁護士
連絡先:森の風法律事務所
写  真:こちら

【事件の概要】
  東京都東久留米市を流れる落合川の埋め立て工事によって、絶滅が危ぶまれているホトケドジョウの生育環境が破壊されるなどとして、 周辺住民4人が8月10日、ホトケドジョウと落合川も原告に加え、東京都を相手に工事の差し止めを求める訴訟を東京地裁に起こしたというもの。 河川を原告とする訴訟は国内初。

  訴状によると、東京都は昨年7月、治水対策として、蛇行している落合川を直線にし、蛇行部約300メートルを埋め立てる工事を開始し、 すでに直線化工事は終了しているが、原告側は、蛇行部分は都内に残された貴重なわき水の川で、埋め立てによって、ホトケドジョウの生息環境が失われるほか、 良好な自然環境を享受する住民の権利も侵害されるとしている。

【原告落合川】
  原告落合川は、東京都東久留米市八幡町を水源として同市内を東向きに流れ、埼玉県境で黒目川に合流する全長約3.4kmの川です。 湧水が極めて多く、良好な水質を反映して、ホトケドジョウ、アブラハヤ、メダカなどの魚類がみられます。 また、水生植物もナガエミクリやミズニラがほぼ全川にわたって繁茂し、鳥類もカルガモやサギ類、カワセミ等多くの種類がみられるなど、 上流から下流にいたるまで自然が豊かで、地域住民に親しまれている川です。

【原告ホトケドジョウ】
  原告ホトケドジョウ (学名 Lefua echigonia) は、体長4〜6センチメートル程で、太く短い体の小型のドジョウです。体色は灰褐色で、 背面に暗褐色の小斑点が散在します。「Japanese-eight barbel loach」 の英語名が示すとおり、4対8本の口ひげが特徴です。

  ドジョウが水田やその周囲で泥底に生息しているのと異なり、ホトケドジョウは、湧水を水源とする細流、湿原、水田周りの水溝等、流れの緩やかな場所の砂泥地で、 水草や石などの障害物のあるところに好んで生息し、水中を活発に泳ぐドジョウです。そのため、湧水の有無の指標動物としても知られてきました。
  また、ホトケドジョウは、日本固有種で、かつては、青森県を除く東北地方から近畿地方までの本州に広く分布していました。 そのため、ホトケ、オカメ、オカメドジョウ、シミズドジョウ、ダルマドジョウなど、各地で様々な呼ばれ方をしてきた身近な水生生物です。
  ホトケドジョウは、冷水性で水温27度を超えるところでは弱る特性があり、水温が低く、澄清な湧水付近を生息地としてきたため、 交雑が起こることが極めて少ないそうです。そのため、同じホトケドジョウでも、水系・地域ごとに分化し、異なる特徴を有しています。

  しかし、近年の宅地造成や圃場整備、U字溝化等による生息環境の悪化や農薬の散布による水質悪化により、かつてはどこにでもあった生息地は、 急激に減少していると同時に、その個体数も激減しつつあります。そのため、ホトケドジョウは、平成15年にレッドデータブックが改訂された際に、 絶滅危惧IB類 (近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの) に指定されるに至ったといいます。

【一言アピール】
  噂では、東京都は、原告ホトケドジョウを引っ越しさせたうえ、原告落合川を埋め立てして圧死させたそうです。
  既成事実を作ればそれでよいのか、裁判の行方が注目されるところです。

  11月27日の裁判期日では、原告代理人が模型を使っていかに埋め立てることが不合理であるかをビジュアルに示すことができた。 裁判所も関心を持ち、被告に対し、埋め立ての必要性について釈明するよう求めた。

【次回期日の紹介】
  判決予定です。原告落合川、原告ホトケドジョウに笑顔は見られるのか…。

文責 NPJ編集部