2013.10.22更新

自衛隊の市民監視違憲差止・国賠訴訟
係属機関:仙台高等裁判所第2民事部 佐藤陽一裁判長
次回期日:10月28日(月) 午後1時30分〜5時
次回期日の内容:元陸上自衛隊情報保全隊隊長鈴木健氏の証人尋問
           (3回目)
紹介者:小野寺義象 弁護士
連絡先:吉岡和弘法律事務所 電話 022-214-0550
     一番町法律事務所 (小野寺義象弁護士) 電話 022-262-1901
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【事件の概要】
1 当事者
  原告:4名 (自衛隊イラク派兵差止め等訴訟の3名原告+監視対象の集会・デモに参加していた弁護士1名)

  被告:国

2 請求の内容の概要
(1) 自衛隊イラク派遣に対する原告らの一切の表現活動、思想活動に対する情報収集・活動監視活動を行ってはならないとの差止め請求
(2) 原告各自に対する慰謝料 100万円の国家賠償請求

3 請求の原因の概要
  自衛隊の監視活動は、
(1) 報道機関にも及んでおり報道の自由・国民の知る権利を侵害すること、
(2) 原告らの表現の自由を侵害すること、
(3) プライバシーの権利を侵害すること、
(4) 肖像権を侵害すること、
(5) 思想良心の自由を侵害すること、
(6) 平和的生存権を侵害すること、
(7) そもそも自衛隊の市民監視行為は自衛隊法等の法令上の根拠がなく、また、その個人情報の収集・保全は行政機関個人情報保護法にも違反していること、
(8) 自衛隊の市民監視活動は立憲主義に対する背反であり戦前の「憲兵政治」復活の危険があるという、 基本的人権保障や民主主義・立憲主義に対する重大な侵害行為であり、国家的不法行為である。
  よって、差止めと慰謝料を請求する。

   訴 状 2007.10.5

【自衛隊イラク派兵違憲確認訴訟との関係】
  2003年3月、米英軍のイラク攻撃開始後、政府はイラク特措法を制定し、03年末から自衛隊をイラクに派兵した。 これに対して、全国各地で自衛隊イラク派兵違憲訴訟が提起され、宮城県でも04年12月に自衛隊イラク派遣違憲差止等訴訟 (「平和的生存権訴訟」。 以下、「第1次訴訟」 という) が、翌05年春には、松島基地内でのイラク派兵壮行会の際の自治体公金支出の違憲訴訟 (「住民訴訟」。以下、 「第2次訴訟」 という) が提起された。その後、アメリカ自身がイラク攻撃の根拠がなかったことを認めるなど、 イラク戦争は侵略戦争であることが明確になったにもかかわらず、政府は自衛隊派兵に固執し、裁判所も司法判断を回避し原告敗訴の判決が続いていた。

  このような中で、07年6月、日本共産党が公表した自衛隊の内部文書 (同党のホームページ参照) によって、 自衛隊の情報保全隊がイラク派兵に反対する市民や団体の活動を組織的・系統的・日常的に監視し、その情報を収集・分析・管理保管していることが曝露され、 大きな社会問題になった。内部文書では、第1次訴訟原告が代表の戦争法反対宮城県民連絡会も頻繁に監視対象とされていた。

  この事態を踏まえて、仙台高裁に係属中の第1次訴訟において、自衛隊による国民監視活動は自衛隊イラク派兵と一体のもので、 原告らも監視対象にされており、著しい精神的苦痛を受けたという追加主張を行ったが、裁判所は、9月4日、「訴えの追加的変更は許さない」 とした。

  このような経緯で、10月5日、自衛隊情報保全隊の監視活動の違憲違法性を問う訴訟 (以下、「第3次訴訟」 という) を仙台地裁に提訴した。 全国初の提訴であるが、内部文書の作成者が 「東北方面情報保全隊長」、監視対象の多くが東北各県の市民・団体・地方議会・地元報道機関等であり、 東北の弁護団として看過できない事件だったのである。

【手続きの経過】
  2007年12月17日の第1回口頭弁論では、勅使河原安夫弁護団長、原告後藤東陽 (写真家)、原告山形孝夫 (宮城学院女子大学元学長)、 原告小野寺義象 (弁護士) の意見陳述を行いました。
  また、被告国が、情報保全隊の内部文書を情報保全隊が作成したか否か、につき、答弁を回避しようとしたため、原告側はこれを厳しく批判しました。 裁判所は、答弁するか否か、答弁できない場合その理由を文書で示すよう、被告国に命じました。

   原告意見陳述   2007.12.17 PDF
   被告 国の答弁書 2007.12.11 PDF

  2008年3月12日、情報保全隊が監視していた集会等に実際に参加していた人・団体による第2次訴訟を提起しました。
  第2陣訴訟は第1陣訴訟 (原告4名) に併合され、一緒に審理されています。

  3月17日の期日では、被告国は、情報保全隊の国民監視の内部文書の成立の認否を頑なに拒否した。
  裁判所は、被告国が 「文書の成立の認否の義務はない。」 との主張を容認し、また、認否するように訴訟指揮することすら放棄した。
  このため、原告・弁護団は、被告国と裁判所に対して、強く抗議した。

  5月19日の期日   3名の裁判官全員が入れ替わりました。これまでの裁判所は被告国が国民監視文書を作成したか否かの認否を許否するのを容認する不当な訴訟指揮をしていました。 ところが、裁判官が交代したことで、裁判所の被告国に対する対応が一変。裁判所は6月24日までに認否するか否か再度検討するように求めました。

  7月7日の期日で、被告国は、従前と同様に、内部文書の成立 (その文書を作成したかどうか) 自体に関する認否は拒否したが、内部文書の一部について、 その書式が防衛庁 (当時) で定められた書式と同じであることを認めました。これは、実質的に、自衛隊 (情報保全隊) が作成したことを認めたといえます。 裁判所はこれを受けて合議し、次回からは内部文書の存在を前提とした主張立証を行うことになりました。いよいよ本格的な攻防が始まります。

  9月22日の期日では、原告2名の意見陳述と立証計画概要を裁判所に示しました。

   原告 荒川節子 意見陳述   2008.9.22 PDF
   原告 根本京子 意見陳述   2008.9.22 PDF

  10月20日の弁論から具体的な主張・立証が始まりました。
  まず、10月20日の期日で、監視活動の実態を主張しました。

   準備書面
   −陸上自衛隊情報保全隊の国民監視の実態−2008.10.20 PDF

  今後、順次、監視行為の具体的な違憲性・違法性の主張を行ってゆきます。
  現在、原告数は、第1陣訴訟4名、第2陣訴訟22名、10月15日提訴した第3陣訴訟29名、合計55名に」なりました。
  2009年2月23日午後3時に、第4陣訴訟を提起する予定で、現在、東北地方を中心に全国から原告希望者を募っています。 原告資格者は、情報保全隊内部文書に記載のある集会等に実際に参加していた人に限定しますが、内部文書には全国各地の集会が載っています。

  2009年2月23日の弁論期日では、自衛隊の国民監視の背景には自衛隊の変質があるとの準備書面、成人式での街頭宣伝を監視された原告の被害実態の主張、 2ヶ月間に3度にわたり監視された戦争法反対連絡会の被害実態の主張等を行ないました。 合わせて、被告国の指定代理人に自衛隊の制服組、しかも情報保全隊の隊員が入っていることに対して、抗議しました。

  なお、2月23日に第4陣訴訟を原告31名で提訴しました。今回の提訴には、新たに宮城県以外の福島県、山形県、秋田県の原告が加わりました。 この訴訟はどんどん拡大し、成長し、第1陣から第4陣までの原告は合計86名になりました。

   第4陣提訴 記者会見用資料 2009.2.23

  今後、さらにに第5陣提訴も予定しています。

  4月27日の期日では、20名程度の自衛隊イラク派兵反対の小集会・デモも監視対象になっていた実態、 及び情報保全隊と警察との密接な関係が明らかになりました。

  2009年7月6日の期日では、原告側は、原告二人によって被害実態についての意見陳述を致しました。

   意見陳述 小澤和悦

  また、今後の立証計画を明らかにし、自衛隊の実態論、憲法論についてそれぞれ学者証人を申請する予定であることを明らかにしました。
  ところで、原告側は被害実態については準備書面も提出しましたので、被告国に対し、個別の監視行為について認否するように求めました。
  しかし、国は、訴訟の全体が分かり次第まとめて認否するなどと、分かりにくい説明に終始していました。

  9月7日の期日では、原告2名による被害実態についての意見陳述を行いました。
  裁判所にも、被害実態が伝わりつつあると考えています。

  2009年11月2日の期日(第11回弁論)では、原告の意見陳述(安孫子麟 東北大学元教授)今後の立証計画に関する意見陳述が行われました。

  2010年1月18日の期日(第12回弁論)の内容は以下のとおりです。
1 原告側は、自衛隊の監視による被害実態について、原告100名の陳述書を提出し、被告国に対して、次回期日(3月8日)前に、 監視行為の有無・内容について具体的認否を行うよう求めました。いよいよ、攻防が本格化します。
2 原告側は、纐纈厚氏(山口大学教授)の意見書 「自衛隊の国民監視業務の位置と役割─国民への監視と恫喝実態とその背景─」 を提出しました。

第5陣訴訟提訴
  4月27日に、第5陣訴訟を原告18名で提訴しました。
  岩手、青森の原告も新たに加わったことから、東北6県全てが訴訟に参加することになりました。また、原告総数も104名の大型集団訴訟になりました。
  全国の自衛隊イラク派兵違憲訴訟の弁護団からも代理人に加わってもらい、闘う陣容が整ったといえます。
  これからいよいよ本格的な法廷内外の闘いに入ってゆきます。

2周年企画
  原告団、弁護団、支援する会では、情報保全隊国民監視発覚2周年企画を、6月5日午後6時に、仙台弁護士会館で行います。
  記念講演は、小林武教授 (愛知大学) の 「平和的生存権と自衛隊の国民監視」 です。
   ※ 詳細は こちら 

【一言アピール】
  私たちは第1次、第2次、第3次訴訟は一体不可分と位置づけているが、特に第1次訴訟と第3次訴訟は、 国による戦争遂行と言論思想弾圧が表裏一体の関係にあることを見事に実証している。 戦争行為を遂行するためには、自国民の戦争反対活動や報道を監視・抑圧することが不可欠であることは、 戦前の国家総動員法の立法や国民精神総動員体勢による特高警察・憲兵・隣組等による思想弾圧・言論抑圧等の教訓からして明らかである。 その意味で、本件訴訟は全国の自衛隊イラク派兵差止め訴訟と表裏一体のものであり、 さらに、憲法9条を改悪して戦争する国作りを進める動きとも緊密に関連する事件・訴訟である。国の加害責任を認めさせる意味は極めて大きい。

  法廷においては、自衛隊による市民監視活動の実態を明らかにさせなければならない。公表された内部文書記載の監視活動は氷山の一角に過ぎない。 それに矮小化させず、情報保全隊が全国各地で継続して日常的に行っていると推定される違憲違法な監視活動の全容を解明することも、本件訴訟の重要な課題である。 弁護団はすでに訴状において、文書提出命令申立にて情報保全隊の監視活動資料の提出を求めること、情報保全隊隊長の証人尋問を求めること等を国に予告している。

  また、監視活動の被害団体・個人等に呼びかけて、この訴訟にふさわしい原告団の拡充・整備を行うことも予定している。
  この訴訟がこれからの日本の平和・人権・民主主義にとって重要な訴訟になることは間違いありません。 法廷内の闘いと法廷外の闘いを連結させ、絶対に戦争勢力 (改憲勢力) に勝利しますので、ぜひ応援して下さい。

  「自衛隊の国民監視差止訴訟を支援するみやぎの会」 が設立され、国民監視文書が公表されて1周年になる6月6日に、設立総会をします。
  是非ご参加下さい。

  日時:6月6日(金) 午後6時
  場所:仙台弁護士会館4階
  記念講演:内藤 功弁護士 (恵庭事件・長沼事件など長年、
自衛隊訴訟に取組んでいる弁護士)

文責 弁護士 小野寺義象