2009.4.30更新

でっちあげ報告書を許すな!
〜警察官による虚偽報告書追及訴訟
事件名:虚偽報告書損害賠償請求事件
内  容:警察官が作成した報告書が虚偽であったため、被告人が被っ
     た精神的損害について慰謝料を請求する訴訟
当事者:ナイジェリア人男性VS東京都
  控訴、上告とも認められませんでした。
紹介者:村上一也弁護士
連絡先:村上一也弁護士


【事件の概要】
  ある強盗事件の運転手役だとして、共犯者の供述のみで有罪となったナイジェリア人男性。 彼は、妻子が日本にいるうえ、永住権を取得したばかりで、しかも仕事を持っており、動機がないように思われた。

  しかし、警察官は、仕事に関わる報告書をでっちあげ、いかにも、彼には仕事がないかのように検察官に報告した。

  彼は、起訴され、有罪となった。彼は言う。自分はえん罪だ、でっち上げの報告書を放置すると、次のえん罪を生むことにつながる、と。

  彼は、でっち上げ報告書によって精神的苦痛を受けたとして、警察官を任用している東京都を相手に損害賠償請求訴訟を提起した。

【調書の虚偽発覚の経緯】
  彼は、逮捕される前、中古車などの輸出業を営んでいた。実際に逮捕されたときには、少なくとも1台の車が輸出できるような状態になっていた。 取調を受けた彼は、自分には強盗する動機はないと述べたうえ、自分が行っている輸出に伴う手続きを説明し、 自分が輸出しようとしている車をどこに駐車しているかを説明した。

  しかし、警察は、彼が輸出している状態にある車を探すことができなかったと彼に告げた。 そして、輸出に伴う手続きを行うために彼が取引をしている会社Xについては、存在していないという趣旨の報告書を作成した。 報告書には彼のいう会社Xと同じ名前の会社が●●町△−□にあるが、それは彼のいう輸出に伴う手続きを行っている会社ではないと記載されていた。

  しかし、弁護人が調査したところ、Xという会社は、●●町△−□には存在していなかった。 実は、Xは、●●町の隣の▲▲町の同じ地番△−□に存在し、彼が言うとおりの輸出に伴う手続きを行う会社だったのだ。 そして、彼が輸出しようとしている車は、彼が説明してあるとおりの場所に駐車してあった。

【裁判の経過】
  彼は、虚偽報告書によって、精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を請求する訴訟を提起した。 なぜ、このような明らかに虚偽を書いた報告書が作られたのか、その事実を明らかにすることが狙いだった。
  しかし、一審及び二審では、警察官、検察官を証人として採用することもなく、結審し、彼は敗訴した。
  彼は、獄中から直ちに上告した。

文責 弁護士 村上一也