空の安全のために〜取材ヘリ墜落事故国賠訴訟
【事故の概要】
2004年3月、信越放送のヘリコプターが取材飛行中に高さ152メートルの送電線に衝突し、墜落した。搭乗していた4人全員が死亡する悲惨な事故となった。
高さ60メートルを超える送電線には標識を設置する法律上の義務があったが、この送電線にはそのような標識はなかった…。
【請求の概要】
遺族は、ヘリコプターを運航していた 「中日本航空」 のみならず、送電線に標識を設置させる義務を怠った 「国」、
送電線に標識を設置する義務を怠った 「中部電力」、
従業員を安全な環境で勤務させる義務を怠った 「信越放送」 を相手に損害賠償を請求した。
なぜ、国までも提訴しなければならなかったのか。それは、同様の事故がそれまでにも何度も繰り返し発生していたにもかかわらず、
送電線に標識を設置して事故を防ぐ措置が行われなかったからである。法的には、設置が明確に義務づけられているにもかかわらず…。
そこで、女性記者の遺族は、この事故を単なる事故と見過ごすことができず、関係者の責任を追及するため、裁判を起こした。
「原告らの和解についての考え方」 PDF
【手続きの経過】
本件は、2007年10月18日結審したが、裁判所が金銭的な問題ではないことを認識してくれ、再発防止策を盛り込んだ和解を実現すべく、和解を試みることとなった。
和解について、原告側は、再発防止策に真剣に取り組んでもらえるような和解になれば、金銭的請求は弁護士費用のみ大幅減額するつもりだった。
しかし、再発防止策が不十分なこともあり、和解は決裂し、判決となった。
判決では、ヘリコプターの運航会社だけでなく、送電線を設置した電力会社の責任が認められたが、国及び雇用者である放送局の責任は認められなかった。
※ 東京地裁判決文 2008年7月31日
【控訴審判決】
東京高裁は1審に続いて国の責任を認めなかったが、「国の安全対策に不足がなかったとは言えない」 と指摘した。
遺族は国に対し、判決の趣旨を受け入れ、改善策を早急に検討するよう求めた。
文責 NPJ編集部
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