2008.3.6更新

ノーモア・ミナマタ訴訟
〜第2の政治決着を許さない〜裁判闘争〜
事件名:ノーモア・ミナマタ訴訟
            〜第2の政治決着を許さない裁判闘争〜
事件の内容:国・熊本県・株式会社チッソへの損害賠償請求事件
係属機関:熊本地方裁判所民事2部 亀川清長裁判長
次回期日:2008年5月16日 10時〜 101号法廷
       傍聴を希望される方は、同日午前9時30分に、熊本地方裁
       判所門前に集合して下さい。期日終了後、裁判所付近の京
       町会館4階 (予定・熊本市京町1丁目12-2) で報告集会を
       行います(何時に終了するか不明ですので、報告集会の
       開始時間は不明)。
紹介者:板井俊介弁護士
連絡先:熊本中央法律事務所 TEL 096-322-2515


【ノーモア・ミナマタ訴訟第10陣提訴】
  「水俣病」。その言葉は誰もが聞いたことがあるものと思う。今年は、その水俣病の公式発見から51年目を迎えた。 これまで、水俣病を巡っては、様々な裁判が行われてきた。そして、水俣病問題において、司法が果たした役割は大きいものがある。

  ところで、水俣病問題の歴史は、患者の分断の歴史であると言われることがある。政治家に訴えるのか、訴訟で切り開くのか、という方針で、患者会が一つになれず、 そのことが正当な解決を阻んでいるとさえ言われた。そして、事実、2004 (平成16) 年の水俣病関西訴訟最高裁判決後も、いくつかの患者会が創設された。 そして、それぞれの患者会において、異なる要求を掲げてきた経緯もあった。

  しかし、2004 (平成16) 年の最高裁判決があるにもかかわらず、正当な救済を行おうとしない行政に対する怒りは、もはや一つ患者会に止まるものではない。

  2007 (平成19) 年10月11日は、そのことを証明する歴史的な日となった。 この日、熊本地方裁判所の門前には、これまで別々に要求を掲げてきた複数の患者会のメンバーが、ともに水俣病問題の解決を目指して声を揃えた。

  同日午前、胎児性、小児性の水俣病患者の団体から9名が新たに熊本地裁に国家賠償を求めて提訴した。 同日午後には、すでに訴訟を行ってきたノーモア・ミナマタ訴訟の第10陣追加提訴が行われた。 そして、両訴訟の原告代表が、ともに 「司法の場での解決こそが水俣病問題の正当な解決への唯一の道と確信し、 ともに連帯して闘い抜く」 との共同声明を読み上げたのである。

  さらに、同日、熊本地裁では、水俣病関西訴訟勝訴原告が、水俣病認定の義務づけを認めた訴訟の口頭弁論も開かれ互いに交流し、エール交換もされるなどした。

  これは、与党 (自民党、公明党) プロジェクトチームが提案する第二の政治決着が不当であること、 そのような案では全面解決が不可能であることを大きく世論にアピールすると同時に、水俣病問題の正当な解決のために、これまで分断の歴史を辿った患者らが、 少なくとも互いに力を削ぐことなく団結して闘うという、水俣病の歴史上新たな段階に入ったことを意味するものである。

【手続きの経過】
・第12回弁論での大きな流れ〜政治解決を打ち砕く医師証人採用へ〜
  2008年2月22日の第12回口頭弁論では、裁判長が交代し、 新たに裁判長となった高橋亮介裁判長が、原告側証人である医師高岡滋氏の証人尋問実施に向けて、大きな流れを示した。

  訴訟の引き延ばしを図り、患者の分断、切り崩しを目論む被告らは、これまで、「時期尚早」 として、高岡証人尋問の実施を拒否し続けてきた。 しかし、すでに、訴訟提起から2年4ヶ月を経過し、かつての訴訟では行われなかった原告すべてのカルテ提出が済んでも、結局、被告らの意見は 「時期尚早」 である。

  裁判長は、「5月16日の次の期日は7月25日。7月に高岡証人尋問を実施できる状態にする準備をすること。 5月16日に証人採用決定を行う予定」 と述べ、高岡証人尋問への大きな一歩を踏み出した。

〈高岡証人尋問の意義〉
  高岡証人尋問の実施が重要なのは、政治解決策が潰される流れに向かう第一歩だからだ。 与党PTが示す解決策では、「申請者が水俣病であるか否か」 は、「水俣病の加害者かつ被告である国が指定した医師のみ」 が判断する。 そこに、民間病院に勤務する医師が介在する余地はない。しかし、国の息がかかった医師では、結局、水俣病の症状があっても切り捨てられるなどして、 正当な解決にならなかった。だからこそ、水俣病患者は、行政ではなく、司法に解決を求めてきたのである。
  高岡医師は、いうまでもなく、現地水俣で水俣病と関わりながら生きてきた民間の医師である。 裁判所が高岡医師の診断書を根拠に、原告を 「水俣病である」 と認めれば、多くの水俣病患者は、与党PTでの救済ではなく、 高岡医師ら民間の医師による診断を受けて、司法による救済を求めるようになるであろう。その時点で、与党PTは実施困難になることは間違いない。

  5月16日に証人採用決定により、水俣病問題は、正当な解決の方向に向かって動き出す。

【世論の力を】
  私たちは、正当な解決を目指し公害被害者が団結して立ち上がった今こそ、国家政策のために国民の生活や生命、 健康を切り捨てることを許さないという世論を喚起しなければならない。

  この点については、すでに、九州弁護士連合会が正当な水俣病問題の解決を求めて今年2月に警告を、7月に会長声明を発表しているほか、 日本弁護士連合会も今年9月に同旨の意見書を発表し、また、水俣病臨床研究会も今年8月に与党PTの解決策を疑問視する旨の意見を述べている。

  しかし、もっとも重要なのは、学生や主婦など一般国民が、「我が国の発展のために犠牲になった方々に対しては、全国民の負担で損害賠償されなくてはならない。 それが義である」 という意見を抱き、それが世論となっていくことである。

【傍聴の呼びかけ】
  多くの一般国民の関心は、裁判の場では、一般市民の傍聴という形で現れる。 普段接することのない水俣病患者らと肩を並べて傍聴することにより、教科書で知った水俣病の根深い問題性が見えてくるに違いない。
  ぜひ、傍聴をお願いします。

文責 弁護士 板井俊介