2010.7.6更新

放送命令を取り消せ! 〜NHK国際放送違憲訴訟

事件名:国際放送実施命令取消等請求訴訟
内容:総務大臣が発した放送命令は違憲であり取り消すよう求めている
当事者:NHK市民の会会員ら VS 国、NHK
係属機関:大阪高等裁判所 (第12民事部)
  2009年1月29日原告敗訴(控訴棄却)。確定
      原告らは別の年度のものについて新たに提訴した
紹介者:辻 公雄弁護士
連絡先:(大阪) あさひ法律事務所
     (阪口徳雄弁護士、前川拓郎弁護士)


【裁判の目的】
  この裁判の目的は、国、総務大臣によって、NHKへの放送の命令できるという時代錯誤の放送法が憲法違反であるということを問う裁判です。
  拉致問題の放送が是か非かを問う訴訟ではありません。

【請求の趣旨=原告が求める内容】
1 総務大臣が放送法33条1項基づき日本放送協会に対し、平成18年4月1日及び11月10日付けでした国際放送実施命令を取り消す。

2 総務大臣は、日本放送協会に対し、放送法33条1項に基づく国際放送実施命令をしてはならない。

3 被告日本放送協会は放送法33条1項に基づく国際放送実施命令に従う義務がないことを確認する。

4 被告国は、原告らに対し、それぞれ金1万円を支払え。

【請求の原因=原告の根拠】
  戦前、NHKは、国家、軍部から、国民を戦争動員に狩り出す手段に利用されました。そのために幾百万の国民が犠牲になりました。 その痛烈な反省から、憲法21条は国民の表現の自由を保障し、ラジオ、テレビなどの放送機関の報道の自由を保障しました。 その結果、NHKは、国営放送機関としてではなく、国民から受信料を受け取ることによってその経済的基盤が国、 スポンサーに左右されない公共放送機関として発足したのです。

  受信契約者の意思によって、NHKの放送の独立性を守る世界に類を見ない公共放送機関となったはずです。NHKが依拠すべきは、受信契約者です。 NHKを統治するのは、最終的には受信契約者であり、受信契約者に主権があります。
  NHKは国営放送機関ではないから国や総務大臣、国会議員らに統治されてはなりません。

  本裁判は、公共放送機関たるNHKが、国や総務大臣、国会議員らによる命令等により介入を受ける機関に陥ろうとしていることに対する国、総務大臣、 NHKのあり方を問う、受信者=主権者からの違憲裁判です。
  拉致問題解決の重要性は論を待ちません。この裁判は、拉致放送が是か非かを問う訴訟ではありません。 総務大臣の放送命令が憲法体系上是か非かを問う訴訟です。

【手続きの経過】
  請求棄却を受けて原告らは控訴しました。
  判決は、こちら に掲載されています。

【阪口徳雄弁護士のコメント:ブログより】
  本日大阪地裁でこの原告の請求が却下、又は棄却され全て認められなかった。
  NHKが自ら総務大臣にこのような命令・要請が憲法違反という裁判をすれば、総務大臣の命令、要請が憲法違反であると判決は命じることは明白。 ソモソモNHKが公共放送であることを忘れ、総務大臣の命令や要請に唯々諾々と従うから、NHK受信契約者が訴訟せざるを得なくなった。 NHKの受信契約者が総務大臣やNHKにこのような命令や要請が憲法に違反するとして異議を述べると、NHKの契約者にはそのような権利がないという。 他方で受信料を払わないと、支払請求をし、裁判までしてきている。 こんな勝手な契約論理は市民社会ではあり得ないはずであるが、今回の大阪地裁の判決はこれを肯定した。
  原告の裁判を門前払いをしないと、命令や要請が憲法21条に違反するかどうかの、まともな実態審理に入ると、国の命令・要請行為は違憲・違法となるからであろう。 原告らの裁判が門前払いで却下、棄却されたからと言って、総務大臣の行為やNHKの行為が正しいと認定されたわけではない。
(以下、略。ブログページ

【一言アピール】
  NHKは命令権の問題と受信料の問題で大きな岐路に立っています。
  「NHK市民の会」 は命令権意見訴訟でNHKの独立性を守り、万を数える 「NHK市民の会」 の力で、NHKに意見を提出し、 市民の意思に基づいた放送機関になることを求めていきたいと考えています。
  我々はNHKをつぶす団体ではありません。放送の自由の確保、市民の意思が反映するマスコミとなることをNHKと共に考えていくNHKを育てていく団体です。

【次回期日の紹介】
  判決言渡しです。ぜひ、お越しください。なお、関連訴訟を検討中です。

文責 NPJ編集部