2008.2.14更新

沖縄ジュゴン 「自然の権利」 米国訴訟

事件名:米国文化財保護法違反確認請求事件
内  容:名護市辺野古沖に生息する国の天然記念物ジュゴンの
     保護を日米の自然保護団体が求めた訴訟
当事者:ジュゴン、市民、環境保護団体VS米国国防総省
係属機関:サンフランシスコ米連邦地方裁判所
       2008年1月24日(現地時間) 判決。原告勝訴。
紹介者:籠橋隆明弁護士
連絡先:自然の権利のウェブサイト

【訴訟の概要】
  米国文化財保護法 (National Historic Preservation Act (NHPA)) にもとづくもので、沖縄県名護市辺野古沖に計画されている米軍普天間飛行場代替施設の建設が、 NHPAと同等の内容をもつ日本の文化財護法において天然記念物に指定されている沖縄ジュゴンに影響するため、NHPA違反となることを確認するものです。

  米国は世界遺産条約に加盟しているため、米国の文化財保護法は世界の遺産や文化財を守るように定めています。 日本のジュゴンは日本の文化財保護法によって保護されていますから、アメリカ政府には日本のジュゴンを守る義務があるのです。 米軍普天間飛行場代替施設建設は米軍基地ですから、基地を建設する計画ではジュゴンに対する配慮は不可欠です。

【訴訟の経過】
  裁判では、国防総省側が門前払いを求めてきました。しかし、裁判所は 「ジュゴンは沖縄県民にとって文化的、歴史的にも重要だ」 とし、 米文化財保護法 (NHPA) が適用されるとの判断を示し、門前払いの主張を退けました。

  そこで、裁判では、基地建設がジュゴンに影響を与えるかどうかが問題になりました。
  このジュゴン訴訟は2007年9月17日 (米時間) に結審しました。判決は半年ぐらい先になりそうです。

  [ジュゴン訴訟報告]
     真喜志 好一 (ジュゴン訴訟原告・環境ネットワーク世話人)

【判決の見込み】
  アメリカの法律では、ジュゴンに 「影響を与えるかもしれない」 場合には保護のための手続きをとらなければなりません。 基地ができることによって、ジュゴンの食べ物である海草が生えている場所が破壊されます。 そうすると、ジュゴンに「影響を与えるかもしれない」わけですから、影響を与えないことを国防総省が明らかにしない限り、 ジュゴン保護の手続きをとらなければならないのです。

  日本の法律では、ジュゴンに 「明らかに影響を与えない」 場合でなければジュゴンは保護されません。この点が、日本の法律と全然違うのです。 こういった事情から、裁判では勝訴の可能性が十分にあるということになります。

  勝った場合には、裁判所によって基地建設行為の違法宣言が出されます。さらに踏み込んで裁判所が国防総省に何らかの措置を命じることがあるかもしれません。 国防総省はジュゴン保護のために関係機関と協議しなければなりません。その際、ジュゴン保護のための資料を相当たくさん提出しなければならないでしょう。

【一言アピール・籠橋隆明弁護士】
  沖縄本島の北部、名護市辺野古地域に新しい米軍基地が建設されようとしています。ここはサンゴが広がる美しい海岸で、沖縄の自然がよく残された地域です。 辺野古海域はジュゴンの食べ物である海草がたくさん生えており、ジュゴンがよく目撃されています。

  基地が建設されれば、ジュゴンに影響を与えることは間違いありません。ジュゴンは、日本にはここ沖縄に数えるほどしかいないといわれています。 私たちは、沖縄ジュゴンの絶滅を防ぎ、豊かな沖縄の自然を守るため、沖縄ジュゴン 「自然の権利」 訴訟を展開しています。

【勝訴】
  米サンフランシスコの連邦地方裁判所は24日、米国防総省の米文化財保護法 (NHPA) 違反を認定する判決を下しました。 基地建設によるジュゴンへの影響を回避する 「考慮」 を命じた上で、環境影響評価 (アセスメント) 文書を同地裁に90日以内に提出するよう求めました。

    判決全文 英文

  沖縄タイムスによると、サンフランシスコ連邦地裁のマリリン・パテル裁判長は、同省がジュゴンへの影響軽減策の必要性を把握、 考慮していないことを同法違反と認定。「計画が国防長官らによる最高レベルの承認を得ているにもかかわらず、ジュゴンへの影響はよく把握されていない。 国防総省は引き返すことができないほど計画に関与しており、法に基づく義務履行を建設直前まで待つことはできない」 と判示したということです。

    ジュゴン訴訟の弁護団声明 2008年2月

文責 NPJ編集部