2008.11.30更新

沖縄密約(西山太吉元記者)事件国家賠償請求訴訟

事件名:国家賠償請求訴訟
内  容:不当な有罪判決による精神的・経済的損害や、名誉毀損に
     よる損害などの賠償を求めている
当事者:西山太吉元毎日新聞記者 VS 国
係属機関:最高裁判所
       上告棄却
傍聴希望者集合場所:直接808号法廷へ
紹介者:藤森克美弁護士
連絡先:藤森克美弁護士ウェブサイト


【裁判の概要】
  西山記者事件として有名な沖縄密約事件 (外務省機密漏洩事件) で有罪判決を受けた西山記者が、米国公文書によって密約の存在が明らかになったことにより、 ジャーナリストの道を閉ざされたことに伴う精神的・経済的損害や、名誉毀損による損害などについて、国家賠償法1条1項に基づき、日本政府に対して、 損害賠償を請求する訴訟を提起しました。

【提訴に至る経緯】
  2002年6月に米国立公文書館で発掘された、米国政府NSC (国家安全保障委員会) 作成の 「沖縄返還大混乱」 と題する文書によって、 1971年6月17日締結の沖縄返還協定 (条約) が内容虚偽であった (ウソが書かれていた) こと、内容がウソの条約とは別に密約が存在していたこと、 密約を結ぶことを日本が米国に働きかけていたこと、日米両政府が口裏合わせをしていたこと等が明白となりました。

  条約の締結は憲法73条3号により、「国会の承認を経ることを必要とする」 とあり、1971年12月の臨時国会で内容がウソの条約が承認されたのです。
  また、密約も条約ですので、憲法上は国会の承認が必要ですが、もちろん国会への上程がなく国会の承認を経ていません。
  西山太吉さんが1971年5月から6月にかけて入手した情報は、客観的には単なる密約疑惑どころではなく、ウソの条約と密約そのものを暴くものであったことが、 31年の歳月を経て明らかになったものです。

【刑事判決の不当性】
  西山記者は1972年4月、国家公務員法違反で外務省職員と共に起訴されました。 しかし、外務省も検察庁も違憲違法行為 (ウソの条約の締結、国会の承認をとったこと、外務大臣や外務省高官は国会でウソ答弁を繰返したこと、 本物の内容の密約を国会に上程せず、承認も経てないこと) を十分承知していながら、西山記者を起訴し、刑事裁判では一切真実を隠し続けてきたのです。 尚、上記行為は虚偽公文書作成・同行使罪、偽計業務妨害罪に該当する犯罪そのものです。国家権力中枢は、組織犯罪を展開していたことは明らかです。

  その結果、刑事裁判では、検察官から西山太吉さんは情報入手の方法を糾弾され、2審東京高裁は1審の無罪判決を覆えし、懲役4月執行猶予1年の判決を下し、 最高裁も上告棄却の決定をしたため西山さんの有罪判決が確定したのです。

  上記のとおり検察庁による国家権力中枢の組織犯罪の隠蔽と、西山記者の情報入手の方法を男女間のスキャンダルにすりかえた起訴状の文言以来、 西山記者は世間から集中豪雨的バッシングを受け、毎日新聞を退職せざるを得なくなり、ジャーナリストの道も断たれてしまいました。
  国家権力中枢の組織犯罪という巨悪が、隠蔽されたまま西山記者に対する公正な刑事裁判が可能であるはずはあり得ません。 西山記者は検察庁と外務省から公正な刑事裁判を受ける権利を奪われ続けたのです。

【訴訟での主張内容】
  西山国賠訴訟では、作為型違法行為の主張に加えて、不作為型違法行為として検察庁と外務省による内容虚偽の条約の締結の隠蔽、 密約の存在の隠蔽、国家権力中枢の組織犯罪の隠蔽の違法行為を柱に立て、これらの不作為については20年間の除斥期間の適用は著しく正義、 公平の理念に反すると主張しています。

【これまでの経過】
  東京高裁は、2008年2月20日、東京地裁に続いて、西山記者敗訴の判決を言い渡しました。 判決概要などは、こちら に掲載されています。

【次回期日の紹介】
  上告は棄却されました。関連事件として、沖縄密約文書の情報公開請求を求める訴訟が予定されています。

文責 NPJ編集部