2009.8.3更新

オリコンが訴えたのは、雑誌社や記者ではなく、
コメント提供者〜名誉毀損「恫喝」訴訟
事件名:損害賠償請求訴訟
内  容:オリコンについてコメントしたジャーナリストが5000万円もの
     損害賠償を請求された訴訟
当事者:オリコン VS ジャーナリスト烏賀陽氏
係属機関:東京高裁
  2009年8月3日、和解勧告を受諾。
  和解勧告の主な内容は次の3点。
  ・オリコンが請求を放棄
  ・烏賀陽さんが請求を放棄
  ・サイゾーが500万円を烏賀陽さんに支払う
紹介者:揖斐憲・サイゾー編集長
連絡先:烏賀陽氏のサイト


【訴訟の概要】
  雑誌 「サイゾー」 がオリコンのチャートの集計方法に関する記事 (http://ugaya.com/column/0604saizo.html) を掲載したところ、 オリコンは、記事の中でコメントをしたジャーナリスト烏賀陽氏に対し、5000万円もの損害賠償を求める訴訟を提起した。 この訴訟では、サイゾーやライターは訴えられておらず、専門的なジャーナリストの言論封殺を図った疑いが濃い。 米国では、このように言論を封殺する訴訟あるいは住民運動に対する訴訟を 「SLAPP」 (Strategic Lawsuit Against Public Participation) と呼び、禁止している州もある。

  烏賀陽氏は、オリコンの訴えに対し、訴訟自体が恫喝や経済的いじめを目的とした不法な 「訴訟権の濫用」 だとして、 精神的・経済的被害への補償 ( 1100万円) と毀損された名誉の回復を求めて反訴を提起した。

【問題とされた烏賀陽氏のコメント部分】
  『Jポップとは何か』 (岩波新書) 『Jポップの心象風景』 (文春新書) などの著者・烏賀陽弘道氏は、「日本には、長くオリコンしかヒットチャートが存在しなかったため、 その統計学的な正確さが過大評価されがちです。まず第一に、オリコンは予約枚数もカウントに入れている。 予約だけ入れておいて後で解約するカラ予約が入っている可能性が高いのです。『オリコン初登場1位』 などという文言は、その後の宣伝に使えます。 『オリコンの数字はある程度操作が可能だ』 というレコード会社員の話も複数聞いたことがあります。 そもそもオリコンは不思議な団体で、『オリコン独自の統計手法だ』 と言い張ってその方法をほとんど明らかにしないんですよ。 ふつうの統計調査は、その手法を細かく公開して、その信憑性に疑問が挟む余地がないことを強調するのが当たり前です。 それをしないで公開されたデータは、統計学的な信用度が低いと自分で言っているようなものです」 と語る。

【訴訟の経過】
  烏賀陽さんに 100万円の支払いを命じる判決が下されました。 判決は 「編集権は出版社にあるが、コメントがそのまま掲載されることに同意していた場合は、取材に応じた側も例外的に責任を負う」 と判断しました。

【サイゾーの判決に関するコメント】
  このような判決を容認し、企業や権力側に同様の手口を用いることを許せば、本誌のみならず、あらゆるメディアの取材が過度に制限され、 それに協力する善意の情報提供者も存在しえなくなります。そんな危険な状況を、メディア企業でもあるオリコンがつくりだそうとしていることが不可解でなりません。
  本誌は今回の判決を受け、すでに控訴する方針を固めている烏賀陽氏を支援する形で、オリコンの 「言論弾圧」 行為を糾弾しつつ、 本サイトおよび 「サイゾー」 にて、提訴の不当性や当該記事の正当性、真実性を引き続き訴えてまいります。

【和解勧告を受諾した烏賀陽さんのコメント】
  東京高裁でオリコンは判決を待たずに自らが 「敗訴」 を宣言する 「請求放棄」 をしました。 法的には 「自分の請求 (提訴) には理由がないので、提訴を放棄する」 という宣言です。 33ヶ月にわたって争われてきた「オリコン裁判」はオリコンの敗北宣言で終結しました。

文責 NPJ編集部