2010.12.28更新

電波雑音を増やすPLC(高速電力線搬送通信)導入に異議!

事件名:PLCによるアマチュア無線妨害差止め等請求事件控訴事件
当事者:アマチュア無線愛好家 VS 国
係属機関:東京高等裁判所
2007年12月5日 判決言い渡し (上告せず)

関連事件:電波監理審議会審理異議申立事件
係属機関:総務省電波監理審議会
次回期日:未定
次回期日の内容:
紹介者:只野靖弁護士
連絡先:PLC行政訴訟 (通称PLC訴訟) 原告団オフィシャルサイト

【はじめに】
  PLCが解禁されました。そしてPLC製品が出荷され実際にどのような影響があるかも徐々に分かってきました。 そのノイズは想定された周囲雑音レベルを超えるものです。現在出荷されている製品の多くは、自主的にアマチュアバンドの使用を避けていますが、 もしもPLCがアマチュアバンドも使い始めたら短波放送などと同様に壊滅的な打撃を受けることは必至です。

【事件の概要】
  重要な社会的役割を果たしてきた我が国の短波帯アマチュア無線の文化が、今息絶えようとしています。 それは、コンセントに接続されている電線に、電流 (50Hz又は60Hz) とは全く別の高周波の信号 (今回解禁されたのは2MHz〜30MHz)を送受信することによって、 電線を介してインターネット接続が可能になるPLCが解禁されようとしていることによります。 現在発売されているのは、PLCモデムという機器であり、これをコンセントに差し、電源コードをPLCモデムに差して利用するものです。 すなわち、通常は電源コードがコンセントに差し込まれているところ、この両者の間に、PLCモデムを挟むことによって、電線を流れてきた高周波信号をモデムで取り出し、 これをパソコン等に別途送信するわけです。

  将来的には、たとえばパソコンや家電製品の電源コードをコンセントに入れるだけで、インターネット接続が可能になるとされています。
  これが可能となれば、一般家庭において、新たにインターネット用の配線を施さなくても、既存の電気配線を使用してネットワークが構築できるため、 その解禁を求める声はかなり以前からありました。それにもかかわらず、この技術は長らく封印されてきました。
  それは、簡単に言えば、電線中に高周波信号を流した場合、そこから電波が漏洩し、他の電波利用を妨害するおそれが極めて高いことが分かっており、 これに対する有効な対策ができなかったからでした。
  総務省令改正で、今回、屋内において2MHz〜30MHzの短波帯を使用するPLCが解禁されましたが、電波漏洩による妨害のおそれは全く解決されていません。 そして、この解禁によって、最も大きな影響を被るのが、同じ2MHz〜30MHzの短波帯を使用してきたアマチュア無線通信なのです。

  さらに、影響はアマチュア無線のみにとどまらず、同じ2MHz〜30MHzの短波帯を使用してきたすべての活動に影響します。 その中には、無線通信を妨害する太陽活動をモニターし宇宙天気予報を実施している電波天文、国による事業免許の元で放送している短波ラジオ、 重要な航空路である北太平洋路線をはじめとして陸地から遠く離れた位置では、短波が唯一の通信手段となる航空無線や海上遭難無線、 漏洩電波による誤動作が人命の危機に直結する医療機器などもあります。

【訴訟の概要】
  そこで、私たちは、裁判所に型式指定の取り消しなどを求めています。型式指定を差し止め、その上で許容値の再検討を要求します。 PLCによるノイズが本当の意味で無線通信に問題にならない許容値を決め、その後インタフェアの取り決めをすることを要求します。 そして、それらの結論を織り込んだ規則改正の実施を要求します。

【手続きの経過】
  控訴審は結審し、原告側は敗訴しました。
     PLC訴訟第1審(東京地裁)判決 PDF
     PLC訴訟控訴審(東京高裁)判決 PDF

  門前払い判決なので上告はしません。まずは電波監理審議会で決着をつけます。

【電波監理審議会審理異議申立事件 手続きの経過】
  これまで申立人側から十分な説明をすることができました。今後の展開が楽しみです。

【電波監理審議会審理異議申立事件 次回期日の紹介】
  電波監理審議会の審理のあり方に関する異議申立事件の次回期日は、2010年1月20日 午前10時から総務省会議室で行われます。

【一言アピール】
  PLCに対して疑念と懸念を示しているのは、アマチュア無線家だけではありません。
  現に、平成18年11月9日、厚生労働省は、PLCを解禁した総務省に対して、「PLC機器による医療機器への影響が完全には否定できず、 医療機器によっては誤作動を生じさせるおそれがある」 として、 「医療機関及び居宅等の環境下においてPLC機器と医療機器を併用する場合には安全対策上の措置を講ずるべきことについて、 取扱説明書等の媒体を用いてPLC機器の購入者等に対し周知」 するなどの行政指導をすることを求めました。

  さらに、厚生労働省は、同申し入れを行ったことを、各都道府県、医薬品医療機器総合機構、日本医師会、日本医療機器産業連合会等に対しても通知しました。
また、短波帯における電波天文観測は、主として太陽や木星等が発する電波が研究対象としており、特に太陽からの短波帯電波の観測は、 宇宙天気予報として太陽爆発に起因する無線通信障害を防止するために広く社会に役立てられています。
  しかしながら、例え電波天文観測施設の近傍でPLC が利用されなくとも、 電離層で反射された全国各地のPLC からの漏洩電波が集積して電波天文観測を不可能にするおそれがPLC 解禁の答申参考資料の中で明らかになり、 我が国の電波天文学者から、強い懸念が示されています。

  弊害のあるPLCの見直しに力を与えてください。

文責 NPJ編集部