2007.11.26

空知太神社の住民訴訟〜なんてたって政教分離!
事件名:財産管理を怠る事実の違法確認請求
内  容:砂川市 (旧砂川町) が、市の所有地に神社等の建物を許して
     これを放置していることが、政教分離原則に違反しており適切
     な財産管理を怠るものであるとして、市の住民が市長を相手に
     その違法性の確認を請求。
当事者:砂川市住民VS砂川市長
係属機関:最高裁判所
次回期日:未定
紹介者:NPJ記者

【事件の概要】
  砂川市 (北海道) が、その所有する土地上に神社の建物等を設置することを許し、その土地を神社の敷地として無償で使用させていることは、 政教分離原則に違反する行為であるから、砂川市が土地を使用させている契約関係の解消 (使用貸借契約を解除) せず、 また神社建物等の撤去を請求しないことは、その財産の管理を怠るものであるとして、砂川市の住民らが砂川市長に対し、 その行為が違法であることの確認を求めた事案である。

【裁判所(第一審)の判断】
  2006年3月3日、札幌地裁は、空知太神社は宗教施設であり、砂川市はその神社の正確を認識しつつ、無償で土地などを供与したものであり、 よって政教分離違反であると明示した。なお、地裁判決は、「建物の 『神社』 の表示を外し、鳥居などを撤去すれば、違憲状態は解消される」 等と指摘したが、 一審判決後も市側は町内会に鳥居の撤去などを要請しなかった。

【控訴審判決】
  さらに、市側は、札幌高裁に控訴したが、2007年6月26日、高裁も砂川市が市有地を神社に無償で使用させているのは憲法の 「政教分離の原則」 に反するとして、 市長の控訴を棄却した。

  特に、宗教目的については、砂川町 (現砂川市) が、空知太神社の敷地として無償で使用させてきたことは、 固定資産税等の負担を免除することなども考慮すると、「神社施設の維持存続を容易にし、神道を助長することを直接の目的とするもの」 と、 一歩踏み込んだ判断を行った。

【争点とこれに対する判断】
  主要な争点は、空知太神社 (現空知太会館) が宗教施設に当たるか否かであった。
  市側は、
・ 神社内部にある祠 (ほこら) は、普段は人目につかない場所にあること
・ 空知太会館は、地域コミュニティーの融和を図るために新築、設置されたものであること
・ 空知太会館の運営は地域住民である空知太連合町内会により行われていること
等を主張した。

  しかし、札幌高裁は、
・ 空知太神社は、五穀豊穣を祈願するという宗教的信条により建立され、札幌神社から迎えられた宮司により鎮座祭が営まれるなどしたこと
・ 本件施設には、本件鳥居、本件地神宮及び本件建物が存在するところ、鳥居及び地神宮は神社の象徴的な存在であり、 本件鳥居及び本件建物の入口には 「神社」 と明記され、本件建物の内部には天照大神を祀った本件祠が存在していること
・ 本件鳥居、本件建物の入口にある「神社」の記載及び本件祠は、一直線上に並んでいて参道の存在をうかがわせること
・ 本件施設においては、現在も、砂川神社から派遣される宮司により神式の行事が営まれている上、これらの行事では雅楽が演奏されることや巫女が舞うこともあること
を指摘し、これらの事情に照らすと、本件施設は宗教施設である神社としての評価を受けるものというほかはないと判断した。

  また、市長側の主張にたいしては、
・ 地域住民の集会場としての性格を併せ持つということが宗教施設としての性格を消滅させるものではない
と退けた。

【現在】
  市長が上告中である。

文責 NPJ編集部