護衛艦たちかぜ 自衛官いじめ自殺事件
事件名:護衛艦たちかぜ 自衛官いじめ自殺事件
事件の内容:国及び加害自衛官に対して不法行為に基づく損害賠償
請求。
さらに、国に対しては安全配慮義務違反に基づく損害
賠償請求
事件番号:横浜地裁第5民事部合議係 平成18年(ワ)第1171号
係属機関:横浜地方裁判所第5民事部
次回期日:2008年7月2日 16:30〜 503号法廷
傍聴希望者は、直接法廷に来て下さい。
期日後報告集会を予定。
次回期日の内容:被告国の因果関係についての主張・立証。
紹介者:阪田勝彦弁護士
連絡先:「たちかぜ」 裁判を支える会
横須賀市米が浜通1-18-15 オーシャンビル3F
「じん肺アスベスト被災者基金」 内 tel/fax 046-827-8570
*カンパもよろしくお願いします。
入会年会費 個人1000円/団体3000円
郵便振替 「たちかぜ裁判」 を支える会 00260-2-56330
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【当事者】
原告 遺族
被告 いじめ加害者及び国
【いじめの告発ノートを抱いて命を絶った自衛官】
2004年10月27日10時32分。21歳の海上自衛官が京急立会川駅ホームから飛び込み、自ら命を絶った。
横須賀を母港とする護衛艦隊旗艦 「たちかぜ」 所属の一等海士だった。明るく優しい性格の若い海士は、自衛隊内で悪質ないじめに遭っていた。
いじめの事実が発覚したのは、彼が飛び込み自殺をした際に唯一所持していたバックパックに入れられていた一冊のノートに、
上官を告発する遺書が記されていたからであった。
彼の死亡後、彼が居住していた民間アパートは遺族よりも先に自衛隊によって捜索がなされ、彼の自殺原因を探るものは何も残されていなかった。
そのような事になるのを知ってか、若い海士は、死ぬ瞬間まで告発のためのノートを抱きながら命を絶ったのである。
この告発の結果、自衛隊内での恒常的ないじめの実態が浮かび上がってきた。被害者は、自殺をした海士だけではなく、ほかにも多数の被害者がいることが判明した。
殴る蹴るといった暴力だけに止まらず、護衛艦内に強力なガス銃を持ち込み、「サバイバルゲーム」 と称して、無抵抗な若い自衛官を撃ちまくる。
恐喝、莫大な借金の押しつけ、そこで生活を送る若い自衛官には地獄のような日々が繰り広げられていた。
【実態を知りながら事態を放置した自衛隊の責任を問う】
護衛艦たちかぜの責任者たちは、このいじめの実態を認識しておきながら、真摯に問題の解決を図ろうともしていなかったことも明らかとなった。
自衛隊という組織は、名称はどうあれ、実質的には軍隊である。そのため、一人ひとりの生命や身体の安全、人としての尊厳よりも、いかに効率的に任務を遂行するか、
換言するならば、いかに効率よく敵を殺すかということが重視されてしまう。
そのような環境の中で、一人ひとりの隊員を大切にすることを期待することは、所詮、無理なのかもしれない。
しかし、そうであるとしても、自衛隊員の自殺者がこの過去10年間、50人から90人前後で推移しており、自衛隊員の総数に対する自衛隊員の自殺者の割合が、
日本国民の総数に対する自殺者の割合と比較して高い数字を示していることは、自衛隊の体質や隊員が置かれている過酷な状況を端的に示している。
そして、21歳の若さで自ら命を絶ってしまった彼も、そうした自衛隊の体質の犠牲者となった一人である。
彼の死の真相を明らかにし、真摯な反省の下、真に有効な再発防止策に取り組んでいくこと、これは自衛隊の最低限の責務であり、そうでなくては彼の死も報われない。
そのような遺族の思いから、2006年4月5日、自殺に追い込まれた若き自衛官への国と上官の責任を問う訴訟が横浜地裁に提訴された。
【頑なに情報公開を拒む国】
裁判が始まってからも、国は、自らの責任を認めるどころか、可能な限り真相を隠蔽し、今回の事件の真相を闇に葬り去ろうとしている。
すなわち、国は、事件の調査報告書をはじめとした、本件の真相を知るために必要不可欠な書面すら、防衛機密である等の理由から、開示を拒絶しているのである。
しかし、そこに書かれていると思われる内容は、事件に関する調査の報告であり、何ら防衛機密と直結するような事項ではない。
それにもかかわらず、これらの書面が開示されないのでは、自衛隊が彼の死を真正面から受け止めていない、
自衛隊には、彼の死を自己変革のきっかけとしようとする真摯な姿勢が見られないと言わざるを得ない。
【画期的な文書提出命令の決定】
そこで、弁護団は、送付嘱託、情報公開請求、証拠保全申立の各手続きをとったが、その結果はいずれも全く開示がなされないか、
読むこともできないほどに墨塗りされたものが提出されただけだった。
文書提出命令手続を通じて、これらの書面の開示を実現させることとし、文書提出命令の申立を行った。
国は、文書提出命令と情報公開請求との同質性や防衛情報の秘密性を強調し、文書の提出を免れる除外事項に該当すると主張したが、
約1年間の審理の後、文書提出命令が認められた。同命令は、情報公開請求と文書提出命令との分水嶺という側面、
開示除外事由としての安全保障に関する情報の限界を示すものとして極めて画期的な判断となった。
しかし、国は同命令に対し、抗告を行い、現在文書提出命令事件に関する抗告審の審理中である(期日は未定)。
【手続きの経過】
[12月26日の期日の内容]
原告側から、本件でいじめと自殺の因果関係について基本的な考え方を主張・陳述した。
本件では、自殺直前まで肉体に直接的な暴行を働くいじめが行われており、また、
自衛隊の責任者がいじめの実態について認識をしていたことから津久井いじめ自殺事件等の判例に沿って、
事実因果関係と予見可能性が認められることが明らかであることを主張した。
被告国も因果関係について、主張・立証を行うはずであったが、何も提出されなかった。
国は、抗告審での文書提出命令の結果が出た後に判断するとして、証拠の提出を拒否している。
裁判所からは、証拠を出せないなら出せないで、書面なり何らかの方法で補充するように指摘された。
国は、訴訟当初から証拠を出そうとせず、文書提出命令が認められた後も抗告をし、依然として証拠を隠し続けている。
今回の期日においても、約束の主張も立証も行わず、遺族と自衛隊という証拠の偏在が著しい本件では、
国のこのような態度は真実を隠蔽しようとする極めて不誠実な態度と感じられた。
[3月19日の期日の内容]
この間、文書提出命令が東京高裁で確定。地裁よりもさらに広い範囲で提出命令が出された。
これに基づき、国が80人分の供述調書などを提示。これを受けて、国がいじめと自殺についての因果関係について、主張を行った。
その内容は、いじめはあったが、それとは無関係の被害者の金銭問題が自殺の主たる要因である旨の主張だった。
いじめの加害者は、月額10数万円の返済を街金業者に返済しており、その返済金をつくりために被害者を含む後輩自衛隊員に、
自分でコピーしただけのわいせつ画像が記録されたCDRを数万円で売りつけていた。
次回には、このような事実と被害者の借金の関連性などについて反論を行っていく予定である。
[5月14日の期日の概要]
今回の期日から裁判長をはじめ裁判体が総入れ替えになった。そこで、更新弁論を行い、岡田尚弁護団長、原告である遺族が更新弁論を行った。
自殺隊員の父母の、防衛省の証拠を提出しようともしない隠蔽体質、自衛隊内部の無法地帯の実態を解消して欲しいという涙ながらに訴えは、
その場にいた者の心に響き、法廷自体を水を打ったように静まりかえらせた。
原告側から、被告国の因果関係に関する主張への反論準備書面を提出し、これを口頭にて陳述を行った。
@ 暴行と A 恐喝などの複数ある不法行為を、それぞれ分断し、一つ一つの行為は、他の隊員へのそれと比較して悪質でないなどという国の主張に反論した。
これまで防衛省内部で隠され続けてきた、自殺直後のたちかぜ内での事情聴取書面が東京高裁での文書提出命令によって提出され、
ここにあらわれていた自殺隊員へのいじめの実態が、いかに悪質なものであったのかを主張した。
特に、これまでの国の主張では、平成16年10月1日に上官が加害隊員に注意した後は、いじめ行為が終息したと説明がされていたが、
今回明らかになった証拠から、自殺日 (平成16年10月27日) の直前である10月24日においても、いじめ行為があったことが判明した。
これにより国の主張の大前提が崩れ去った。また、上記上官の 「注意」 というものも、実は、宴会の席でたまたま一緒になったので、
やめとけと言っておいたという程度のものにすぎず、「注意」 などというものに全く当てはまらないものにすぎなかったことも判明した。
事実、いじめに用いられていたガス銃なども確認せず、撤去もしておらず、結果として10月24日には、そのガス銃によって自殺隊員は、またもいじめに遭っていたのである。
また、国は、自殺隊員の借財が自殺原因であるとの主張を述べていたが、新たに判明された証拠からも全くそのような事実は現れず、
逆に国は、当時の班長の陳述書を新たに作成し、借財が原因であるとの主張を述べた。
しかし、加害隊員自身が、実は自己破産をしていたが、その記録を調査したところ負債総額4500万円であり、
キャバクラ通いの末借金が生まれ、それを自殺隊員ら後輩から金銭を巻き上げて返済し、また自分の小遣いにしていたことも判明した。
また、自殺隊員は、加害隊員と配属が一緒になる前は全く借財がない者であったことも判明した。
次回以降、証拠調べ手続が進行していくことになった。
国は、驚くべき事に 「人証予定はない」 と明言した。
自らは、氏名を消したままの答申書などを多数出しておきながら、原告側に反対尋問の機会を与えないというのである。
これに異議を述べ、氏名の開示を行い、反対尋問の機会を付与すべきことを訴えた。国がこの点を検討し、次回までに回答することになった
なお、今回の期日には、熊本、宮崎、浜松より、本件同様自衛体内でのいじめにより自殺した隊員の遺族が傍聴し、期日後の報告集会で激励のご挨拶をいただいた。
自衛隊内部の暗部が徐々に照らされようとしているのかもしれない。
文責 弁護士 阪田勝彦


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