2011.7.23更新

ストップ! ザ八ッ場(やんば)ダム
〜誰のための公共事業?
事件名:公金支出差止等請求住民訴訟事件
内  容:八ッ場 (やんば) ダム建設を阻止するための住民訴訟
当事者:各都県住民 VS 各都県ほか
係属機関:関東1都5県の裁判所
次回期日
  東京都(東京高裁第5民事部):9月30日(金) 午後2時半。
                     進行協議(非公開)
  群馬県(東京高裁11民事部):11月15日(火) 午後2時半。
                    進行協議(非公開)
  千葉県(東京高裁第22民事部):11月25日(金) 午後4時。
                      進行協議(非公開)
  宇都宮市(東京高裁):2010年8月5日(木)判決。控訴棄却(住民敗訴)
                控訴判決 が確定しています。
  茨城県(東京高裁第10民事部):10月13日(木) 午後3時半。
                      進行協議(非公開)
  埼玉県(東京高裁第24民事部):10月20日(水) 午後3時半。
                      進行協議(非公開)
  栃木県(宇都宮地裁):住民敗訴後控訴。期日調整中
                      進行協議(非公開)
傍聴希望者集合場所:直接各法廷へ
紹介者:只野靖弁護士
連絡先:八ッ場ダムをストップさせる市民連絡会


【はじめに】
  八ッ場ダムは、利根川中下流部の洪水被害を軽減することと、東京、埼玉、千葉、茨城、 群馬の1都4県に合わせて122万t/日の都市用水を供給することを目的として建設されることになっています。 しかし、ダムの構想が浮上したのが半世紀前の1952年、現在のダム計画がほぼ出来たのが1965年頃で、もう、ひと昔前の計画です。
  その後、時代は変わり、ダムの必要性もダムに対する考え方も大きく変化しました。
  首都圏の都市用水の需要は最近10年近くほぼ横ばいが続いています。今後は日本の総人口が2006年にピークを迎えるのに伴って、 首都圏の人口も頭打ちになり、その後は少しずつ減っていきます。したがって、近い将来に水需要が横ばいから漸減傾向に変わることは必至です。
  一方で水源開発が次々と行われたため、今は水余りの時代に入っているのです。

【請求の内容】
  この訴訟で求めているものは、群馬県吾妻郡長野原町に建設が予定されている八ッ場ダムについての、各都県知事と各都県水道事業管理者による治水負担金、 利水負担金の支出の各差し止めと、過去1年分の支出金の返済です。

【請求の理由/東京訴訟】
(1) まず第 1に、八ッ場ダムには、利水上の利益がありません。
  新規の水源開発を全く行なわなくても,すでに、東京都の都市用水の保有水源は、地下水を含めて、1日あたり690 万立方メートル に達しています。 夏場、最も需要がある時期でさえ、1日最大給水量は522万立方メートル程度であり、現実には160 万立方メートル以上の余裕があります。 使われなかった水は、文字通りに、水に流すしかありません。利根川流域では、1997年度以降、多数のダム等の利水計画が中止されています。 利水の必要性は、全くありません。

(2) 第2に、八ッ場ダムには、治水上の利益もありません。
  利根川の治水基準点である八斗島の基本高水流量は22000立方メートル/秒と設定されていますが、 その前提となったのは、1947年のカスリン台風時,同地点で17000立方メートル/秒の洪水流量があったという推定です。
  しかし、基準点の洪水流量はその後50数年間にわたり,10000立方メートル/秒に届いたことが1回あるだけです。基本高水流量設定は、明らかに過大な設定です。
  この点をひとまず措くとしても、八ッ場ダムは,基準点における洪水流量調整には,全く寄与することがありません。 カスリン台風と同様の降雨が利根川流域にあった場合のシミュレーションとして、国土交通省が発表している資料によれば、八ッ場ダム地点の最大洪水流量は、 わずか1240立方メートル/秒であり、しかも、その出現時刻は基準点、八斗島の洪水流量がピークに達する時点よりも12 時間も早いというものです。 八ッ場ダム地点で最大洪水をカットしても,八斗島地点の最大洪水流量に対する低減効果は限りなくゼロに近いのです。
  八ッ場ダムが計画されている吾妻渓谷は、両岸の山が接近する狭窄部を随所に有し、洪水の流下がそこで緩和されるため、 人工的なダムを建設するまでもなく、もともと自然それ自体が洪水調節機能を有しています。このように、八ッ場ダムを建設しても、治水上、何のメリットもありません。

(3) 第3に、八ッ場ダム建設予定地は、地滑りの危険があり、ダム決壊の危険があることです。
  1970年6月10 日の衆議院地方行政委員会で、八ツ場のダムサイトの安全性の議論がなされていますが、 そこでは、建設省は 「ダムサイトの地盤は不安定」 という報告を行っていました。 すなわち、その当時、ダムの設定地点を現在の地点 (上流案) とするか、そこから下流600 メートルの地点 (下流案) とするかが比較検討されていたのですが、 建設省は、地盤の安全確保を理由に 「下流案」 を強く主張し、現在の地点にダムを建設することに強い難色を示していたのです。

  以上のとおり、八ッ場ダム建設は、文字通り、百害あって一利なしと言えます。

【手続きの経過】
  ダムに関係のある一都五県で住民訴訟が提起されています。各地での証人尋問も終わりつつあり、裁判は最終局面を迎えているところです。

  宇都宮市 住民側敗訴 宇都宮地裁判決文 2009.1.28


【一言アピール】
  八ッ場ダムの総事業費は、ダム建設の他に周辺整備等の関連事業も含めると、約5000億円にもなると予想されます。 この巨額の事業費は国税、各都県の地方税、各受水予定者の水道料金で賄われます。 私たちは税金や水道料金の形で、いつのまにこんなに巨額の事業費の負担を、しかも、ムダな事業の負担を強いられつつあるのです。

【次回期日の紹介】
  冒頭の案内をご覧下さい。各地裁の法廷番号は、各地裁の案内窓口でご確認下さい。
  宇都宮市を被告とする事件は東京高裁に舞台を移しました。さらなるご支援を!

文責 NPJ編集部