2011.3.2更新

日の丸君が代強制反対裁判
〜東京「日の丸・君が代」処分取消し訴訟第1次訴訟〜
事件名:日の丸君が代強制反対裁判
〜東京 「日の丸・君が代」 処分取消し訴訟第1次訴訟〜
係属裁判所:東京高等裁判所第2民事部(大橋寛明裁判長)
        平成19年(行ウ)第68号 懲戒処分取消等請求事件
逆転勝訴判決:3月10日
判決内容:請求を退けた一審・東京地裁判決を変更、全員の処分を取
        り消した
   ※参考
    君が代訴訟:教職員らの懲戒処分取り消し 東京高裁
      毎日新聞 3/10

紹介者:雪竹奈緒弁護士
連絡先:「日の丸・君が代」 不当処分撤回を求める被処分者の会
     東京 「日の丸・君が代」 処分取消訴訟原告団
     事務局長 近藤 徹
     携帯:090-5327-8318 e-mail:qq947sh9@vanilla.ocn.ne.jp


【事件の概要】
1 当事者
  原告:東京都立学校の教員173名 (元教員含む)
  被告:東京都

2 請求の内容の概要
  原告らが受けた懲戒処分の取消し請求
  各原告へ55万円の慰謝料請求

3 事件の概要
  2003年10月23日に東京都教育委員会は都立学校校長に対し、卒業式、入学式等において、教職員らが国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること、 国歌斉唱はピアノ伴奏で行うこと、国旗掲揚及び国歌斉唱に際して教職員が通達に基づく職務命令に従わない場合、 服務上の責任に問うことを内容とする通達を発した (いわゆる10.23通達)。 この通達以降、すべての都立学校において、校長より各教職員に対し、卒業式・入学式等において指定された席で国旗に向かって起立し、 国歌斉唱する (音楽教員はピアノ伴奏する) 等という内容の職務命令が出されるようになった。

  通達直後の卒業式・入学式等において、240名以上の教職員が通達及び職務命令に違反したとして、懲戒処分や嘱託再雇用拒否等の不利益処分を受けた。 その後も毎年、数十人単位で懲戒などの被処分者が出ている。

  原告らは、いずれも10.23通達直後の周年行事・卒業式・入学式において、職務命令に従わなかったとして2004年に懲戒処分を受けた者であるが、 教職員である原告らが国旗に向かって起立し、国歌を斉唱することを強制されることは、思想・良心の自由、信教の自由、教育の自由を侵害するものであり、 かかる通達及び職務命令に従わなかったことをもって処分をすることは許されないとして、処分の取消し及び慰謝料の請求をした事案である。

【訴訟に至る経過】
  2003年10月23日にいわゆる10.23通達が出された後、東京都の教育現場には激震が走った。 全国でもとくに自主独立の気風が強い都立学校の教育現場では、多くの学校で創意工夫に満ちた卒業式がなされ、 また君が代斉唱の際には保護者・生徒に対し 「内心の自由」 が説明されていた。通達では、教職員らの起立斉唱義務のみならず、 「実施指針」 において、国旗の掲揚の時間から掲揚方法、卒業式等の会場設営、教職員の座席指定に至るまで非常に詳細に規定されており、 教職員や生徒の思想良心の侵害に加えて、行政の介入により長年培ってきた自由な教育現場が変容させられてしまうと多くの教職員が危惧を抱いた。 教職員らによっていわゆる「予防訴訟」が提起されたが(別項「予防訴訟」参照)、通達に基づいて校長による職務命令が出され、通達に基づく式が強行された。

  通達直後の卒業式・入学式等において、240名以上の教職員が通達及び職務命令に従わず、懲戒処分や嘱託再雇用拒否等の不利益処分を受けた。

  原告らは、10.23通達直後の周年行事・卒業式・入学式において、職務命令に従わず不起立・不伴奏だったとして、2004年に懲戒処分を受けた。 東京都公務員の場合、裁判前に人事委員会での審査が義務付けられているため (3ヶ月経過後に裁判へ移行可能)、 原告らは人事委員会への審査請求を行い、2年余の審理で職務命令を出した校長や都教委の指導部長らの尋問を行った。
  その後、審査請求手続きを打ち切って2007年2月に裁判提起した。

【第1審での手続きの経過】
  10.23通達の合憲性に関しては、関連訴訟において、東京地裁の二つの部で正反対の判決がなされている。

  2006年9月21日、本件訴訟に先立って提起された 「予防訴訟」 第一審、東京地裁民事第36部 (難波孝一裁判長) において、 10.23通達及びこれに基づく職務命令の違憲性を認め、 教職員らに起立・斉唱の義務はないとする原告勝訴の判決がなされていた (別項 「予防訴訟」 参照)。

  しかし、同様の関連訴訟である解雇訴訟第一審では、2007年6月20日、東京地裁民事第11部 (佐村浩之裁判長) において、 職務命令が直ちに原告らの歴史観・世界観等を否定するものとは言えないとし、原告らの請求を全面的に棄却した (別項 「君が代解雇裁判」 参照)。

  3月3日には、原告側の証人である元校長及び元生徒 (卒業生) の尋問が実施された。
  10.23通達によって変容されてしまった卒業式の状況について、元生徒から詳細に証言してもらった。 また、元校長からは、卒業式にとどまらない教育現場の激変について証言してもらった。

  9月4日には、本人尋問第一弾として、5名の原告が証言を行いました。

  10月23日には、原告本人尋問第2弾として、5人の尋問がおこなわれました。
  原告の教員から、教育活動の実態について、特に、生徒との間に信頼関係を築くことなしに教育は成立しないこと、 日常の教育活動が多様な価値観を認めあうことが不可欠であることなど、教師として生徒とどう向き合ってきたかを中心に話をしました。
  「通達」 や 「処分」 による一律の 「強制」 は教育の現場では許されないこと、「都教委が求める一律強制は教育の破壊にほかならないこと」 が明らかにされました。
  12月25日に最終弁論が行なわれ、結審となりました。次回は判決言い渡しとなります。

【一言アピール】
  日本人である以上、日の丸掲揚、君が代斉唱は当たり前ではないか、と思う方も多いかもしれません。 しかし一方で、日の丸・君が代の歴史的な経緯などから、どうしてもそれらを受け入れられない人がいるのも事実です。 外国籍の生徒・教員もいます。どうしても嫌だ、という人に、「懲戒処分」という圧力をかけてまで、一律に従わせようとしたところに、本件の問題があります。

  10.23通達は直接には教職員を対象としていますが、一方で都教委は卒業式等でこれまで行われてきた生徒たちへの 「内心の自由」 の説明を禁止し、 また生徒の不起立が多かった場合に教員を指導等の処分にする、ということも行っており、 通達が教職員を通して 「生徒たちをも一律に従わせる」 という狙いを持っていることも明らかです。

  都立学校は全国でも自由・独立の気風が強いという伝統があり、学校ごとの特色を生かした卒業式等が行われてきました。 また、障がい児学校では、車椅子の生徒等のために、壇上に上がらない形式 (フロア形式)・対面形式などの工夫をしていました。 通達は、それらの学校ごとの創意工夫も認めず、一律に壇上での卒業証書授与を強制したことも大きな問題です。

  現在、東京では10.23通達をめぐって、多くの裁判が提起されています。この解雇訴訟のほかに、「事案の概要」 でも紹介した、 通達による起立斉唱義務不存在確認・不利益処分禁止等を求める訴訟 (予防訴訟)、嘱託再雇用を合格取消しされた人の訴訟 (君が代解雇訴訟)、 嘱託再雇用を不合格とされた人の訴訟 (嘱託不採用撤回訴訟)、 また本件とまったく同様の内容で年度のみ異なる追加提訴訴訟 (処分取消し第2次訴訟) などがあります (これらの訴訟の詳細は別頁でご紹介します)。

  教育現場は、日本の未来を担う子どもたちを育成する場です。この裁判の行方は日本の将来に直接関わってきます。 他の関連訴訟と共に、東京の教育現場を守るためのこの訴訟、ぜひご注目ください。

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文責 弁護士 雪竹奈緒