2008.4.26更新

労働者派遣法に基づく直接雇用の趣旨を問う!
地位確認及び賃金支払等請求事件
事件名:労働者派遣法に基づく直接雇用の趣旨を問う!
     地位確認及び賃金支払等請求事件
係属機関:東京地方裁判所民事19部 (斎藤巌裁判官→2008年4月に松本真裁判官に交代)
東京地方裁判所平成19年(ワ)第27403号
次回裁判期日:2008年6月2日(月) 午後1時30分〜
          東京地方裁判所619号法廷
次回期日の内容:これまで弁論準備期日で争点整理を行ってきました
          が、次回からは公開法廷での弁論手続に戻ります。
          次回は、原告本人が意見陳述をします。多くの方に傍
          聴、ご支援いただけるようお願いします。傍聴を希望さ
          れる方は、東京地方裁判所6階の619号法廷に直接お
          いで下さい。
            弁論期日終了後、引き続き、裁判所隣の弁護士会
          5階 (東京弁護士会会議室) で報告集会を行います。
          詳細はお問い合わせ下さい。
紹介者:八坂玄功弁護士
連絡先:しいの木法律事務所 弁護士 八坂玄功


【事件の概要】
(1) 当事者
  原告 Sさん (38才・女性)
  被告 A短期大学

(2) 事件の概要
  本件は、派遣労働者の直接雇用後の雇止めと賃金格差を争点とする訴訟です。

  Sさんは、A短期大学に派遣労働者として2001年6月から約3年間勤務し、2004年6月からは労働者派遣法の直接雇用申込義務によって、 同じ職場で直接雇用である嘱託職員として期間1年の嘱託雇用契約を更新し、通算して約6年間、正規職員と全く同様に働いてきました。

  しかし、A短期大学は、2007年2月、Sさんに対し2007年5月末日以降の更新を拒絶。 同様に派遣労働と直接雇用を通じて6年ないし7年勤務してきた他の嘱託職員の多くに対しても更新を拒絶しています。

  A短期大学が示している雇止めの表向きの理由は 「人手が足りている。」 というもの。 しかし、A短期大学内部の人事委員会の議事録には、「3年を超えて雇用している者の契約を打ち切った場合、労基法で 『不当な解雇』 と解釈され、 労働争議では本学院が不利になる。危険性回避の為、3年で雇止めを実施」 という記載がありました。

  3年以内であれば何をやっても許されるといわんばかりの雇止めは、事実上の若年定年制に等しく、非正規労働者への著しい差別待遇です。

  労働者派遣法の直接雇用に関する規定は、派遣労働は臨時的・一時的なものか、専門性の高いものである場合などに限って許されるものであり、 派遣労働を常用労働の代替としてはならないとの趣旨から定められました。 そのような趣旨から、労働者派遣法の直接雇用申込義務に基づく直接雇用は、「必ず長期雇用を申し込まなければならない」 (2006年11月30日、 経済財政諮問会議での柳澤厚生労働大臣の発言)ものであって、使用者及び労働者の双方が、客観的に長期雇用を期待するのが当然です。

  本件は、労働者派遣法に基づく直接雇用のあり方を問い、派遣労働や有期雇用労働者の細切れ雇用を当然視する多くの経営者に対して、 司法の場から是正を求める裁判です。

【手続きの経過】
・提訴:2007年10月19日

・3月4日の期日の内容
  3月4日の弁論準備期日には、このNPJ記事で事件を知ったジャーナリストの方など多くの方の取材、応援のために参加していただき、 手続終了後の報告集会を行いました。

  次回4月22日の弁論準備までに被告側の反論を基本的に尽くさせ、次々回からは、公開法廷での手続に戻り、 早い時期に証人尋問などの証拠調べにすすんでいく見込みです。

  派遣労働者の雇用の安定をめぐっては、先日、キャノンが製造現場での派遣労働者を期間雇用従業員などに転換するとのニュースが報じられました。 しかし、期間雇用の最長期限は2年11か月とされ雇い止めが予定されています。正社員への登用はごくわずかに止まり、本当の安定雇用につながるとは思えません。

  常用代替防止の趣旨から定められている派遣労働者の直接雇用の趣旨を問うこの裁判への応援と注目を引き続きお願いします。

・4月22日の期日の内容
  本件を担当していた斎藤巌裁判官が異動し、新しく松本真裁判官が担当になりました。
  被告からは、有期雇用契約の雇い止めが企業の採用の自由に照らし何ら制約がないかのような主張の書面が事前に提出されました。 そのため、原告は有期雇用契約の雇い止めに解雇権濫用法理が適用されることを示す、代表的な裁判例のいくつか (東芝柳町工場事件、日立メディコ事件、 その他) も証拠として提出し、被告の主張が、労働者のたたかいのなかで積み上げられてきた裁判例によって、 現行の労働法制も有期雇用契約への解雇権濫用法理の適用を前提としていることを無視する暴論であることを主張しました。
  被告が後出しで主張している 「人が足りている」 という点に関して、仮にそうであったとしても、 整理解雇の法理に照らして本件解雇は許されないことを主張する書面も提出しました。

  今回の期日の直後の2008年4月25日、大阪高等裁判所が、偽装請負は違法な労働者供給であり、 労働者とユーザー企業との間に黙示の労働契約が存在する、 との労働者側の主張を正面から認める画期的な判決を出しました (松下プラズマディスプレイ事件)。
  本件の原告も、画期的な判決におおいに勇気づけられています。

[参考資料] 2008年1月30日の院内集会の際に配布した資料

文責 弁護士 八坂玄功