相良村助役選任贈賄事件
事件名:相良村助役選任贈賄事件
被告人:矢上雅義氏 (相良村村長 (現職))
罪 名:贈賄罪
裁判所:福岡高等裁判所第2刑事部
(事件番号:平成19年(う) 第189号贈賄被告事件)
2008年3月31日、控訴棄却判決 直ちに上告しました。
紹介者:塩田直司弁護士 (主任弁護人)
連絡先:コスモス法律事務所
TEL:096-351-8585 FAX:096-351-8595
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【裁判の概要】
1 矢上雅義氏とは・・・
1993 (平成5) 年、衆院選で初当選 (旧熊本2区トップ当選) し、国会議員を2期務めました。
その後、2001 (平成13) 年、相良村 (熊本県球麿郡相良村) 村長になりました。以後、現在、相良村村長2期目。
なお、2期目の選挙は、2005 (平成17) 年11月、矢上氏が勾留中 (11ヶ月勾留) に行われ、矢上氏は、獄中当選を果たしました。
このことからも分かるとおり、矢上氏に対する村民の信頼は非常に厚いのです。
2 事件の概要
本件は、2002 (平成14) 年2月に議会に提案された助役選任に関して、相良村の議員に賄賂が配られた、賄賂を配ることに、村長の矢上氏が関与した、
として、矢上氏を贈賄罪の共謀共同正犯として、起訴したものです。
矢上氏は、贈賄の関与を一切否定しています。
事件当時、相良村の村長は、前村長から矢上氏に交代しました。同村村議会は、矢上氏派 (与党) と前村長派 (野党) とが、矢上新村長の下で、
協調路線をとって行こうと共闘態勢を整えているところでした。つまり、矢上氏の助役選任の提案は、すんなり通る状況だったのです。賄賂を配る必要はありませんでした。
それにもかかわらず、検察側は、助役選任を通すために、賄賂を配った、矢上氏は贈賄に関与したと主張しました。
一審の熊本地方裁判所は、弁護団の主張を全く無視し、いとも簡単に検察官の主張を追認、矢上氏に対して有罪判決 (懲役2年執行猶予4年) を下しました。
この、極めて不当な判決に対して、即日控訴を行い、現在、福岡高等裁判所にて、戦っているのが、本件です。
3 身体拘束下での、虚偽調書作成
賄賂を配る必要のなかった助役選任で、なぜ、賄賂を配ったとされたのか。助役に選任された人物や事件の関係者たちは、当初は、被疑事実を否認していました。
(そもそも、賄賂を配った事実がない以上、当然のことですが。)
それにもかかわらず、本件は作り上げられたのです。それは、関係者らの自白調書で成っています。
助役に選任された人物や事件の関係者たちは、12時間を超える連日の取調べ (任意取調という名の下の一斉捜査)、
そして、1年半後の一斉逮捕という状態で、本件事実を認める自白調書を作成させられたのです。
彼らは、突然の身体拘束にとまどい、連日の取調に疲弊しきってしまいました。身体拘束下での精神状態は、異常です。
複数の取調官と一人で対峙する被拘束者は、正常な判断ができません。
2002 (平成14) 年2月前後の事柄について、関係者の一斉逮捕は、その3年後、2005 (平成17) 年の年明けに行われました。
関係者の記憶が曖昧になっていることを良いことに、取調官は、「理論的に考えれば、こうなるはずだ。間違いない。」 と、攻撃しました。
「共犯者は、こう言っている。こうなるはずだ。」 と、捜査機関に都合の良い供述をするように誘導し、調書を作成したのです。
「お前は99%大丈夫だから (起訴されないから)。」 という甘言にのせて、調書を作成したという事態も明らかになっています。
鹿児島県志布志事件 (無罪確定) と全く同じ構図です。
このようにして出来上がった調書は、正に 「取調官の作文」 です。検察官は、事実を歪めた調書を重ね、虚構の犯罪を立証し、裁判所は、
検察官主張の事実を追認したのです。
4 弁護人らの主張
弁護人らは、矢上氏は、賄賂を配ることに全く関与していなかった (贈賄の共謀に関与していない) と主張しています。
関係者の多数は、虚偽の自白調書を撤回し、裁判で事実を争い、無罪を主張しています。
弁護人らは、関係者らに、控訴審で改めて証言をしてもらい、矢上氏の無実を証明したいと考えましたが、人証取調請求は認められませんでした。
弁護団は、あくまでも無罪を求めて頑張ります。
【事件の経過】
2002(平成14)年2月 助役選任決議
2005(平成17)年1月 関係者一斉逮捕
(贈賄罪の公訴時効期間は3年であり、公訴時効期間経過直前の逮捕であった)
同 年 1月26日 矢上氏逮捕
同 年 2月17日 矢上氏贈賄罪で起訴
同 年 11月 相良村村長選にて、矢上氏獄中当選
同 年 12月 矢上氏の保釈が認められる (約11ヶ月の勾留)
2007年 2月26日 判決宣告、懲役2年執行猶予4年
(一審熊本地裁、裁判長松下潔裁判官)
即日、控訴申立
以後、福岡高等裁判所にて、控訴審が係属中
2008年3月31日、控訴棄却判決 直ちに上告しました。
弁護団座談会 ( 3/24 掲載)
文責 弁護士 塩田直司
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