2010.7.6更新

国鉄闘争勝利! 対鉄道運輸機構訴訟
事件名:国鉄闘争勝利!対鉄道運輸機構訴訟 控訴審
係属裁判所:事件番号 平成20年(ネ)第1857号
        係属部 東京高等裁判所第14民事部
        担当裁判長名 西岡清一郎(房村精一裁判長から交替)
  和解成立:2010年6月28日午前10時30分から最高裁第三小法廷(那須公平裁判長)・会議室において、「裁判上の和解」 手続きが行われ、和解が成立した。
  この手続きの場には、五つの訴訟の弁護士が参加し、被告・鉄道運輸機構訴訟の代理人も出席する中、和解条項の確認がされた。
     【和解証書】
 なお、6人は和解を選択せず、訴訟を継続している。
紹介者:指宿昭一弁護士


【事件の概要】
1  当事者 JR不採用とされた国労闘争団員と遺族ら35名
         VS 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

2  請求の内容の概要
  国鉄民営化の際に組合差別により解雇された原告らが、
(1) 1990年4月の解雇無効、それに伴う鉄建公団への地位確認及び未払賃金の支払い
(2) 国鉄・清算事業団の不法行為に基づく請求として、慰謝料1000万円、団結権・人格権侵害、名誉毀損についての謝罪文、地元JRへの採用要請文の交付・掲示
(3) 国鉄の不法行為に基づく予備的請求として、JRに採用されたら得られたであろう賃金・退職金・年金相当損害金

を求める裁判

3  原告らの主張
(1) 1987年の国鉄によるJR採用候補者名簿作成は組合差別の不当労働行為であるから、不法行為であり、解雇は無効である。
(2) 解雇回避努力義務・説明義務が尽くされておらず、整理解雇の4要件が尽くされていないので、不法行為であり、解雇は無効である。
(3) 清算事業団収容後も、一貫として不当労働行為をしてきたから、不法行為であり、解雇は無効である。
(4) 清算事業団は地元JRへの就職を斡旋する義務があったのに、これを果たさないでした解雇は違法、無効であり、 被告には地元JRに採用要請文を交付しなければならない。
(5) 上記の国鉄・清算事業団の行為は団結権・人格権侵害、名誉毀損であるから謝罪文を交付しなければならない。

【訴訟経過】
第2回弁論期日 (2009年2月17日)
  控訴人、準備書面提出及び意見陳述。 速報

第3回弁論期日 (2009年4月28日)
  控訴人、準備書面提出及び意見陳述。

第4回弁論期日 (2009年7月9日)
  控訴人、先行訴訟に対する高裁判決 (南裁判長) を踏まえて、不当労働行為補充の準備書面提出及び意見陳述。 速報

第5回口頭弁論(2009年9月29日)
  双方の準備書面提出、意見陳述。

第6回口頭弁論(2009年12月10日)
  双方の準備書面提出、意見陳述。

進行協議(2010年1月18日)
  1月18日午後2時から、東京高裁第14民事部(西岡清一郎裁判長)の第2ラウンド法廷に於いて、控訴人側は弁護団10名と原告3名が出廷し進行協議が開催された。 前段に、房村裁判長と交代した西岡裁判長から、弁論の更新手続きをする事が述べられた。 裁判長は、社会的事件として以前から新聞等で承知している。大きな事件なので慎重を期したい。 時効の点をどうするか決定しなければ、証人採るかどうか決められない。と前置きをし、次回弁論の所要時間確認を双方から求め、 控訴人側は代理人・控訴人で60分の意見陳述、機構側は30分で、都合1時間30分の弁論が確定した。

  次回の第7回控訴審弁論日程は、3月18日(木)15時〜16時30分まで101号大法廷で開催され、その後もう一度進行協議を入れることが決定した。 機構側から、時効で棄却となった横浜人活訴訟の深見判決が提出された。 西岡裁判長は長期の紛争であり、ある意味で日本の歴史的事件であり、私の生きてきた歴史でもあると述べ、鉄建訴訟、鉄運訴訟、全動労訴訟、横浜人活訴訟、 国労訴訟それぞれの請求内容・原告数・原告及び原告側代理人の連携等について確認がなされた。
  最後に、横浜人活訴訟の判決もあることから、控訴人側として更に学者の意見書をもう1名準備している事を申し添え進行協議を終了した。

第7回期日(3月18日) 裁判長の交代に伴う弁論の更新
  最初に川端原告団代表から、国労への不当な選別・差別、履行されなかった労働委員会救済命令、解雇後の厳しい生活実態、 無念の内に亡くなった仲間と遺族の訴え、放置され続けている権利侵害救済を求める意見陳述がされた。 続いて、提出した更新意見書の骨格と要旨について、佐藤・加藤・萱野・清水・長谷川・萩尾・井之脇弁護士の順に陳述がなされた。
  内容は 「国家的不当労働行為の事実と責任所在、労働委員会の救済を否定した司法責任、改革法23条の違憲性、解雇の違法無効性、 消滅時効を認めた原審判決の誤り、三判決(南・難波・佐村)の組合差別に関する不当労働行為の確定、清算事業団の杜撰な再就職指導・斡旋の実態、 不採用は国鉄による名簿不搭載の事実行為以外ないと言う因果関係は明確である、 時効で請求棄却の原審判決は法の精神と正義・公平の観点から問い直されるべきである」 ことを裁判官に訴えた。

  被告鉄運機構の向井代理人は 「JR会社に相応しい者とする採用基準に従って採用した。経営上やむを得ない理由での解雇は正当。 再就職の機会は十分に与えたのに応じなかった。時効起算点は最高裁判決ではなく振り分け時点である。南判決は誤りであり原審判決は有効性がある。 本件控訴は棄却されたい。」 と従来主張を繰り返した。
  西岡裁判長から、今後の訴訟指揮について進行協議で意見を伺い、最終的に証人採否は弁論の場で行うことが述べられ、4月23日14時から進行協議を入れ、 次回弁論は6月3日15時30分からと決定し終了した。

  争議団、共闘の皆様には多数傍聴頂き感謝申し上げます。又、政治的動向もありますが、関連する法廷闘争も重要局面を迎えています。 勝利的解決を獲得するまで、原告一同は固い決意で臨みますので、従前同様のご支援・ご協力をお願い致します。

【事件の背景】
1  国鉄分割・民営化という国家的不当労働行為
  今から20年前、時の中曽根政権 (1985年〜87年) は、「国鉄の再建には分割・民営化しかない。」 という大々的にキャンペーンを展開し、 これに反対する国労・全動労・動労千葉の各組合に対しては、JR不採用の脅しによる組合脱退・会対抗策が苛烈に行われた。 国鉄は分裂し、組合員は4分の1以下に減少し、この過程で国鉄職員の自殺者は約200人に及んだ。

  中曽根元首相は後に、国鉄分割・民営化の戦略的狙いを、「国労を潰して総評を潰し、護憲勢力を根こそぎにして、改憲への道筋をつける。」 とともに、 「利潤原理」 を労働者・国民に浸透させ、「この国のかたち」 を根本的に変えていこうというものであったと語っている。

  1986年4月から翌年4月までに7万7020名が国鉄を退職させられ、JR各社に採用されたのは20万0650名であり、 北海道・九州を中心に国労・全動労などに所属していた7628名の国鉄職員が、国鉄を承継した国鉄清算事業団に送られ、 その内、1047名が3年後の1990年4月に解雇された。
  まさに、国鉄分割・民営化は、「この国のかたち」を変えるために強行された国家的不当労働行為であった。

2  国鉄闘争の経緯と 「四党合意」
  1997年、国労・全動労・千葉動労は、JR各社を相手として、不当労働行為の救済としてのJR職場復帰を求めて全国の地労委に救済を申し立て、 1988年以降、すべての地労委でJR各社の不当労働行為を認め、採用取扱いを命じる勝訴命令を得た。にもかかわらず、前述のように、 清算事業団は1047名への解雇を強行した。各組合は闘争団・争議団を組んで長い闘いに入った。

  1994年以降、中央労働委員会は、JR各社の不当労働行為を認めたものの、一部の者の救済を否定するなどの命令を出した。 JR各社、組合双方がこれに対して東京地裁へ行政訴訟を提起した。

  1998年5月28日、東京地裁は、JR各社に使用者性がないとしてJR各社の不当労働行為を否定し、中労委命令を取り消す逆転判決を出した。 これを受けて動揺した国労本部は、2000年には 「JRに法的責任なし」 を認め、 裁判取り下げを先行させるという自民・公明・保守・社民の 「四党合意」 承認を7月の臨時大会に提起した。 多くの闘争団員やその家族の反対のまえに、臨時大会は休会となったが、2001年1月の大会で、会場周辺を機動隊で制圧し、「四党合意」 承認を決定するに至る。 同日、36闘争団のうち18闘争団と7闘争団員有志が 「私達は要求実現まで、政府・JRを相手に闘い続けます。」 という反対声明を公表した。

3  「闘う闘争団」 による鉄建公団訴訟提起
  2002年1月、国労闘争団有志283名 (後に追加して295名) が、旧国鉄清算事業団=鉄道建設公団に対して地位確認、慰謝料、 名誉回復措置を求める訴訟を東京地裁へ提起した。これが鉄建公団訴訟である。原告団を支援する共闘会議も、約20万名を傘下にして結成された。

  2003年12月、JR差別事件で最高裁は、国労・全動労のJR相手の採用差別に関する不当労働行為救済申立事件で、 「JR各社の使用者責任」 を免罪する不当判決を出したが、その判決文中で 「不当労働行為があったとすれば、国鉄、清算事業団は責任を免れない。」 ことを明言した。

  2003年、鉄建公団は独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構に再編される。2004年11月には、国労闘争団有志9名 (現在、追加者含めて35名) が、 鉄道運輸機構を相手に第2次訴訟を提起。同年12月には、動労千葉争議団9名、全動労争議団58名が相次いで鉄道運輸機構相手に訴訟を提起し、 裁判は労働組合の枠組みを超えて広がっている。また、国労・全動労・動労千葉3闘争団・争議団を中心とした集会開催等の大衆運動も取り組まれた。

4  ILO国賠訴訟の提起
  中労委を取り消した東京地裁判決に対して、1998年、国労・全動労は ILO事務局は日本政府の98号条約 (反組合的差別待遇に対する保護) 違反を申し立て、 結社の自由委員会で受理された。1999年11月、結社の自由委員会は、団結権侵害の事実を暗黙の前提とし、その回復を求めた中間勧告を行った。

  しかし、日本政府は2000年2月に反組合的差別はなかったとする虚偽情報を ILOに提供したため、同年10月の結社の自由委員会は、 反組合的差別の存在を否定し、「四党合意」受入を勧める最終勧告を行った。

  2004年5月、鉄建公団訴訟原告団長他が、ILOに虚偽情報を提供した日本政府に対し謝罪広告掲載と慰謝料支払いを求める国家賠償請求訴訟を、 東京地裁に提起。2007年6月、東京地裁は請求を棄却する判決を出した。原告は控訴し、東京高裁で審理中。

5  鉄建公団訴訟判決 (難波判決)
  2005年9月15日、東京地裁民事36部 (難波裁判長) は、裁判所として初めて採用差別の不当労働行為を認定し、 原告らの 「期待権」 を侵害したとして慰謝料 (1人500万円) とその利息の支払いを命じた (難波判決)。
  現在は、東京高裁民事17部で控訴審の審理が行われている。

6  「JR採用差別問題」 全面解決に向けて
  2006年12月、国労及び闘争団 (追加提訴を含み542名) は鉄道運輸機構に対し損害賠償請求を求める訴訟を、東京地裁に提訴した。 また、横浜地裁にも3名が地位確認と損害賠償請求を求める訴訟を提訴した。

  上記難波判決後、4つの訴訟原告団 (4者) と組合及び支援団体 (4団体) が連携して、共同行動を行う体制が形成され、 「JR採用差別問題」 全面解決に向けた取組みが行われている。2007年11月には、4者4団体主催で、「『JR採用差別』 全面解決を迫る全国大集会」 が行われ、 7300名が結集した。

【東京地裁判決】
  3月13日に時効を理由に原告らの請求を棄却する判決が出ました。
  原告らは3月26日に東京高等裁判所に控訴しました。

     ※資料  判決要旨 2008.3.13
          原告団弁護団声明 2008.3.13

【控訴審】
前回期日の内容(10月30日):第1回弁論期日
  控訴状・控訴理由書、答弁書陳述、双方意見陳述


【連絡先等】
  ○鉄道運輸機構訴訟原告団事務局
  東京都千代田区飯田橋3-9-3 SKプラザ3F
  電話 03-3511-3386 FAX 03-3511-3386

 ○弁護団事務局長
  東京都渋谷区桜丘町4番23号 渋谷桜丘ビル8階
  渋谷共同法律事務所
  電話 03-3463-4351 FAX 03-3463-4345
  弁護士 萩尾健太

文責 弁護士 萩尾健太