自治体非常勤嘱託職員地位確認等請求訴訟
事件名:地位確認等請求事件
内 容:東京都武蔵野市の国民健康保険レセプト点検非常勤嘱託職
員として21年間勤務してきた女性1名が、毎年1年ごと更新され
てきた雇用期間の終了を唯一の理由として雇用打切りされたこ
とに対し、雇用関係の確認等を求める訴訟
当事者:武蔵野市内に居住する53歳の女性(武蔵野市の非常勤嘱託職
員の収入を唯一生活の糧としていた) VS 武蔵野市
係属機関:東京地方裁判所民事第11部は係
次回期日:1月26日(火) 午前10時 619号法廷
第2回口頭弁論。
裁判終了後午前10時20分頃から、弁護士会館10階1008号
室で報告集会が予定されています。
次回期日の内容:被告(武蔵野市)が訴状に対する認否反論をする予
定です。
連絡先:墨東法律事務所 (山本) 電話 03-5600-8226
担当弁護士:野村修一、山本志都
|
【事件の概要と訴訟の意義】
現在、地方自治体に雇用 (任用) されている臨時・非常勤職員の数は50万人から60万人といわれています (正規の地方公務員数は約290万人)。
臨時・非常勤職員は今や自治体の公共サービス提供の重要な担い手です。
しかし、多くの自治体で非正規職員の脱法的な短期雇用制度がとられ、
その雇用の仕組みの不安定さとあまりの低賃金から 「官製ワーキングプア」 という言葉が生まれているほどです。
また、臨時職・非常勤職員の法的位置づけは今もってあいまいで、特別職非常勤職員は地方公務員法の適用もなければ、
民間労働諸法も適用されず、「法の狭間」 にいると言われます。
今回の事件の原告は、国民健康保険のレセプト点検業務に従事する武蔵野市の非常勤嘱託職員です。
武蔵野市は、30年ほど前から、多くの自治体では正規職員で対応していた教育施設警備員、学童保育指導員、国民健康保険レセプト点検職員等について、
嘱託職員を使ってきました。
原告は、1987年 (昭和62年) 12月に武蔵野市の非常勤嘱託職員として雇用され、翌年4月より毎年1年間の雇用契約の更新を受ける形で、21年間働いてきました。
就職の際には、「65歳までの雇用継続が可能」 と説明されていたのです。
ところが、武蔵野市は、今年に入って原告に対して 「雇止め」 を通告し、これを撤回するように求めた原告に対して、
市人事課長は 「雇用期間が20年を経過しているので、この際止めてもらうことに決定した」 と口頭で通告しただけで正式な交渉を行うこともなく、
2009年 (平成21年) 3月末日をもって、原告の雇用を打ち切ったのです。
本件訴訟は、嘱託職員としての地位の確認を求めるものです。後述するように、
原告が武蔵野市との間で期限の定めのない雇用契約を結んでいたといえることは明らかで、
今回の訴えの主訴は武蔵野市に対して 「約束を守れ」 と求めるものですが、武蔵野市の約束不履行の背景にあるのは、
今や多くの自治体でもみられる非正規職員の脱法的短期雇用制度である雇用年限制度です。
民間であれば、たとえ期間の定めのある契約であったとしても、
雇用継続への期待が合理的といえる場合の雇止めについては、解雇権濫用法理を類推適用するという判例法理が確立しています。
しかし、自治体では 「雇用期間が長くなったからやめてもらう」 という転倒した理屈がまかり通っているのです。
これまで、非正規公務員雇止めが問題になった著名な訴訟には、2006年3月に画期的な内容の地裁判決を経て、
2008年5月に最高裁決定が出た 「国立情報学研究所非常勤職員雇止め事件」、2006年6月に地裁判決、
2007年11月に高裁判決が出て全面解決した 「中野区保育士雇止め事件」 などがありますが、
本年に入ってからも、茨城県や杉並区の嘱託職員が、雇止め解雇について、仮処分や地位確認請求訴訟がおこされていると聞きます。
本件は、雇用年限制度が背景に存在する雇止めを問題にしている点で、注目されるべき裁判となります。
雇用年限制度は、結局は毎年大量の解雇を生み出すもので、人材育成の観点からも全く不合理な仕組みです。
原告も、本件訴訟が、雇用年限の法制度的問題と社会的弊害に注目が集まる契機になり、公務員も民間労働者も同じように雇用・生活が安定することを望んでいます。
今後の訴訟の展開にも関心をもっていただけるよう、お願いいたします。
【経過】
(武蔵野市は、原告と期限のない雇用契約を締結していた)
1、武蔵野市は、1987年 (昭和62年) 12月、原告を国民健康保険レセプト点検嘱託職員として採用し、口頭で勤務成績、
健康等に支障ないときは1年ごとの雇用契約を更新し、65歳まで継続して勤務できると約束した。
2、武蔵野市は、1988年 (昭和63年) の労働基準法の改正に基づき、嘱託職員の有給休暇制度を制定し、
原告に対しても勤続12年以上の場合の休暇日数等を所属長決裁文書により規定した。
3、武蔵野市は、1990年 (平成2年) 10月、地方公務員法が適用されない嘱託職員に対する 「武蔵野市非常勤嘱託職員取扱要綱」 を制定し、
その6条で雇用最長年限を5年と規定したが、継続的業務であり、専門的知識若しくは経験を要するレセプト点検嘱託職員に対しては、
臨時的雇用の嘱託職員が対象である同要綱の雇用最長年限の規定は適用しないとの説明をした。
4、武蔵野市は、1992年 (平成4年) 1月、職員任命権者である市長決裁文書により、原告を上記要綱6条の適用除外とすることを決定し、
今後も従来通り雇用期間を1年ごと更新して対応することを決定した (決裁書面あり)。
その後、原告は、武蔵野市より、労働条件を変更する提案及び説明は一切受けていない。
5、原告は、1996年 (平成8年) 4月より、所属長の指示により、月1日 (その後月2日) 医療扶助レセプト点検の業務も開始し、
週4日ないし5日武蔵野市に勤務することとなった。
6、武蔵野市は、2004年 (平成16年) 4月の契約更新より、嘱託職員から上記要綱の記載された誓約書の徴収を始めた。
しかし、その際も大竹は、武蔵野市より、労働条件の変更等の提案及び説明は一切受けなかった。
なお、2004年から2008年までの大竹に関する毎年の契約更新時の市長決裁文書には、Cの決裁文書が添付されている。
(しかし武蔵野市は本年に至って雇用を打ち切った)
7、武蔵野市は、2009年 (平成21年) 1月5日、原告に対し、突然、3月31日で雇用を打切ると口頭で通告した。
8、原告が雇用打切りの理由を説明するように求めたのに対し、武蔵野市は 「20年以上勤務しているから」 と言うのみで、
明確な解雇理由の説明も、他の職場の斡旋も行うことなく、2009年 (平成21年) 3月31日、原告を解職した。
9、なお、原告は、採用されて以来、非常に高い勤務評価を得てきた (複数の評価書類あり)。
【請求の内容】
主位的請求
1、 嘱託職員としての権利を有する地位にあることの確認
2、 バックペイの請求 (日額1万2400円)
予備的請求
慰謝料として900万円の請求
【今後の取組】
同様の問題で訴訟をおこした人たちを始め、多くの同様の問題で苦しんでいる仲間と交流をし、非常勤公務員の問題に少しでも光があてられるようにしていきたい。
初回の傍聴、報告集会にたくさんの方にお集まりいただきたいと願っています。
|