2013.8.28更新

痴漢えん罪西武池袋線小林事件(再審刑事事件)
事件名:痴漢冤罪西武池袋線小林事件(再審)
東京地方裁判所刑事6部 細田啓介裁判長
2011年2月14日再審請求
2013年8月28日、東京地裁は再審請求を棄却しました。
紹介者:田場暁生弁護士
連絡先:〒113-0034 東京都文京区湯島2-4-4
     平和と労働センター・全労連会館5F
     日本国民救援会 東京都本部内
     TEL 03-5842-6464 FAX 03-5842-6466
     小林さんの命を守るネットユーザーの会


【事件の概要】
  小林卓之氏(以下 「小林さん」 といいます)は、1965年から2001年3月まで36年間にわたり、 東京のいくつかの小学校で教諭及び教頭として勤務していましたが、手指の病気からチョークが握れなくなったため退職し、 その後は研究相談員として勤務していました。
  20055年3月18日(3連休の前日)、小林さんは、西武池袋駅22時35分発飯能行きの満員の急行電車に乗車し、その後石神井公園駅で下車したところ、 男性に逮捕され、同年4月、女性の陰部に指を3分間出し入れしたなどとして起訴されました。

  小林さんの当日の行動については下記をご覧下さい。日常が突然非日常に変わり、警察から犯人扱いされることの恐ろしさがご理解頂けるかと思います。
     こちら

【再審までの経緯】
  2005年 3月18日 西武池袋線石神井公園駅にて逮捕
             (罪名:強制わいせつ
              被疑者:小林卓之氏(当時62才)
  2007年 2月27日 東京地裁(刑事6部、白坂裕之裁判長)
             →懲役1年10か月の実刑判決
  2008年 1月17日 東京高裁(第8刑事部、阿部文洋裁判長)
             →控訴棄却
  2010年 7月26日 最高裁(第一小法廷)→上告棄却
  2010年10月19日 東京拘置所に収監
  2010年11月10日 静岡刑務所に移送
  2011年 2月14日 再審請求

  事件の経過の詳細については以下。
     こちら

【再審後の経緯】
  再審では、以下の新証拠等を提出しました。
@ 当時の小林さんの手指の状態で本件行為を行うことは不可能である旨の主治医の意見書、
A 供述心理学の専門家浜田寿美男氏による、女性及び逮捕者の犯人同定等についての供述の信用性についての鑑定書、
B 女性が供述する犯人の身長と小林さんの身長が異なることについての実験DVD

・2012年1月26日 仮釈放。
・2012年12月6日、東京地方裁判所刑事第6部は、同月28日に、専門医の事実調べをすることを決定しました。
・2012年12月28日、専門医の証人尋問が行われました。
・2013年1月31日、本人尋問(非公開)が行われました。
  弁護側、検察側ともに、2月中に最終意見書を提出することになりました。

・2011年2月14日再審請求
・2013年8月28日、東京地裁は再審請求を棄却しました。

【冤罪性】
  以下の点などから、本件が冤罪であることは明確です。
@ 小林さんは逮捕直後(被害女性の供述などを知り得ない段階から)から、一貫して逮捕者などが供述する 「犯人」 の場所と違う場所にいたと供述
A 被害者の女性や小林さんを逮捕した男性も 「犯人」 の顔を一切見ていないこと
B 被害者の女性が供述する 「犯人」 と小林さんの身長は大きく異なること
C 逮捕男性は 「犯人」 は 「お尻が隠れるハーフコート」 であると繰り返し断言したが、 小林さんが当日着用していたのは 「お尻が見えるジャンパー」 と服装が違うこと
D 逮捕男性によれば、「犯人」 は満員電車の車内を2メートルほど移動したと供述するが、 逮捕男性も女性も 「犯人」 の移動後 「犯人」 をずっと見ていたわけではなく、見失った可能性が高いこと
E 小林さんは、難病指定の全身性強皮症(膠原病の一種)を患うなど手指に障害があるため、本件行為を行うことは不可能であること

  このように、本件では冤罪性を疑わせる事情が数多くあるにもかかわらず、裁判所は、小林さんに実刑判決を下しました。

【裁判所が有罪とした根拠の脆弱性】
@ 上記のように、逮捕男性が 「犯人」 の服装について矛盾した後述をしているにもかかわらず、 裁判所は 「逮捕男性は服装がよく見えなかった」 などとして、逮捕男性の供述に明確に反する認定を行い、
A 犯行の不可能性について、上記事情があるにもかかわらず、1枚の不明確な写真で小林さんの手指が曲がっているように見えるということを殊更重視し、 また、カルテや診断書に右手中指のことが記載されていない(右手人差し指の障害があることは記載されている)ことを根拠として、 人差し指ではなく中指ならできないことはないという論理で、専門家(医師)の証言を裁判所は否定しました。

【捜査や裁判の不当性】
  以下のように違法・不当な捜査なども行われました。
@ 科学的捜査の懈怠:DNA(体液)鑑定などを行わない
A 繊維鑑定が行われたが、サンプルの採取方法に問題があったため鑑定結果は 「鑑定不要(=不能)」 という通常あり得ない記載の調書として出てきた
    (また、弁護人が再三にわたって繊維鑑定の結果の開示を求めたにもかかわらず検察官はこれを拒み続け、 「鑑定不能」 だった事実を1年以上にもわたって隠蔽)
  B 判検交流の弊害:東京地裁の白坂裁判官は元検察官で、本件判決後約1か月で検察官に戻ったこと

【刑務所での診療状況】
@ 主治医が小林さんの収監前に 「収監して適切な治療が行われなければ、手指の壊死ひいては生命に危険が生じる」 との診断書を提出したが収監され、 執行停止の申立も却下
A 収監以降専門医による診療は受けられず
B もっとも、報道や度重なる申し入れの結果、 弁護人及び主治医が小林さんに面会する度に刑務所医務官等との面接は実現して病状は一定の改善をみた

【支援のお願い】
  本件は報道等によって広く知らされたこともあり、収監から2010年末までのわずか2か月で 「小林さんの命を救え」 とネット署名約 1500通、 そしておよそ 100通もの手紙が静岡刑務所の小林さんに寄せられるなど支援が拡がりました。再審へのご支援も引き続きお願いします。

  ●再審開始・刑の執行停止を求める2.14集会
    弁護団のリレートーク (21分くらいから始まります) (動画・IWJ)


痴漢えん罪西武池袋線小林事件
難病の小林さんの生命を守る「刑の執行停止」 と 「仮釈放」 を!


法務省は人権を守ってください
――適切な難病治療を受けるため、一日も早く
小林さんを 「刑務所」 から出してください――

国民救援会 東京都本部事務局次長 酒井 2011.10.30


  10月26日正午から1時間ほど、霞ヶ関の弁護士会館前で、痴漢えん罪西武池袋線小林事件の支援者で、 難病の小林さんの生命を守る 「刑の執行停止」 と 「仮釈放」 を求める宣伝行動を行いました。 参加者は11名で行い、横断幕、ハンドマイクで訴えると道行く人の反応もよく、ビラ 500枚を配布しました。


   〈主催者連絡先〉
   痴漢えん罪西武池袋線小林事件支援する会
   〒113-0034 東京都文京区湯島2-4-4 平和と労働センター
   日本国民救援会東京都本部内
   TEL 03-5842-6464 FAX 03-5842-6466

文責 弁護士 田場暁生