藤田幸久編著 『9.11テロ疑惑国会追及 オバマ米国は変われるか』
クラブハウス (2009/03) の薦め
木村 朗 (鹿児島大学教授、平和学専攻)
本書は、藤田幸久参議院議員(民主党)による2008年1月10日の参議院外交防衛委員会での9.11事件の疑惑追及質問から今日までの粘り強い国会追及、
EU議会や豪州での9.11真相究明会議への招聘など世界を股にかけたダイナミックかつ貴重な活動記録を中心に、藤田議員とともに9.11事件の真相を追い続けてきた、
きくちゆみ、グリフィン博士(米国)、童子丸開(スペイン)、千早(豪州)各氏の論考も加えた共同作品であり、
9.11事件という世界を激変させた現代史の大きな謎に真正面から挑戦したという意味でまさに歴史に残る画期的な本である。
藤田氏は、9.11テロの疑惑について国会で追及した世界で最初の勇気ある現職の議員であるが(「9.11の疑惑を世界に持ち込む国会議員」
(「ジャパン・タイムズ」 2008.6.17の記事を参照)、そのきっかけは 「9.11テロの最大の犠牲者はアフガニスタンの罪なき人々である」
との認識・思いから現地での学校建設支援に取り組む人々(藤田氏自身もNGO出身である)や9.11テロで一人息子を亡くされた白鳥晴弘さんとの出会いであったという。
藤田議員がこれまで行った2回の国会質問と3回の質問趣意書提出に対する日本政府の答弁で明らかになったことは、「“24名の日本人が犠牲になっており、
テロとの戦いは他人事ではない” と日本政府が度々宣伝したにもかかわらず、捜査情報や事故調査委員会報告を米国側に求めた形跡も無ければ、
被害者家族の救済もまともに行っていない姿」 (藤田氏)である。
また、対テロ特措法の延長問題の審議を行う重要な参議院外交防衛委員会で、
日本が米国主導の 「テロとの戦い」 に参加・加担することになった原点である9.11テロの疑惑を真正面から取り上げて追求したことはそれ自体が実に衝撃的である。
その衝撃がいかに大きかったかは、藤田議員の真摯な国会質問がなされている間ヤジ一つ出ないほどの奇妙な静粛に包まれていたこと、
またNHKの生放送で全国中継された藤田議員のこの深刻かつ重大な国会質問が日本のすべてのマスコミによって完全に無視されたこと、
それとは逆に海外では藤田議員の国会質問が直ちに数ヶ国語に訳されてYouTubeで世界中に配信されて大きな反響を呼んだことなどが如実に示している。
藤田議員は、その後、EU議会、欧州や豪州などに招かれて講演を行い9.11テロの疑惑解明の鍵を握ると思われる人物と次々に面会するなど
迅速かつ精力的な活動を行うとともに、同じ志を持つ世界中の政治指導者によるネットワークの立ち上げで主導的な役割を果たしている。
現職の国会議員である藤田氏が9.11事件の真実を世に問うとともに、
世界的な政治指導者ネットワークを立ち上げて9.11事件の再調査と情報公開を求めていることの意義は計り知れないほど大きいと言えよう
(この間の活動については、藤田議員のサイト を参照)。
その成果は、藤田議員とともに、様々な圧力・困難に直面しながらも一貫してこの9.11事件の真相解明・疑惑追及を続けてきた他の執筆者の論考にも見事にあらわれている。
本書の第4・5章を分担執筆した童子丸開氏は、ペンシルバニア州シャンクスビルに墜落したとされるUA93便、ペンタゴンに突入したとされるAA73便、
飛行機の突入なしで 「沈んだ」 WTC第7ビル、全面崩壊したWTCツインタワーなどの謎を具体的に検証し、
明確な視点で隠しようのない事実を明らかにすることによって米国政府の公式見解の矛盾を浮き彫りにしている(より詳しくは、
童子丸氏の著作 『「WTCビル崩壊」 の徹底究明―破綻した米国政府の 「9・11」 公式説』社会評論社 〔2007/09〕 とサイト
「見ればわかる9・11研究」 を参照)。
きくちゆみ氏は、日本で9・11真相究明運動が広がるきっかけを作った人物であり、
彼女が中心となって開催された第1回および第2回の 「911真相究明国際会議」 の経緯・内容を説明するとともに、
デヴィッド・レイ・グリフィン博士の 「9・11調査委員会報告書への25の疑問」 を翻訳・紹介している。
千早氏は、豪州在住の平和活動家で、欧州とオセアニアへも広がる 「9・11トゥルサー」 の波を現地ならではの貴重な情報とともに伝えてくれている。
藤田議員は本書の中で 「世界に不幸をもたらしたブッシュのアメリカを変えるためには、その原点である9.11を直視し、検証することが不可欠である。
世界の様々な市民のネットワークが今、国境を超え、疑惑解明のダイナミックな活動を展開している」と述べているが、
まさに本書は、そのような世界的なネットワークの重要な一翼を担うものであり、その最良の成果の一つであることは間違いない。
本書の出版が、米軍と一体化してテロとの戦いに全面的に協力している日本政府の政策転換ばかりでなく、
これまで思考停止していた市民が目覚め、沈黙を続けてきたメディアが権力監視と真実を伝える本来の役割を果たすきっかけになることを期待したい。
不毛な対テロ戦争でこれ以上の犠牲者を出さないためにも…。
(『図書新聞』 2009年5月23日号に掲載)