2012.7.14

【 メ デ ィ ア 傍 見 】 24

前澤 猛
目次 プロフィール

「おもてなしの国」 から 「混沌の国」 へ
―中国の現状に心痛める―

  以下、中国での個人的な体験と感想で済みませんが…。

  10年ぶりに8度目の訪中をし、7月11日に帰国しました。パンダ生息地、四姑娘山麓、九寨溝、黄龍など、四川省のユネスコ世界遺産各地を回り、 最後は北京で囚人同様の缶詰になり、9日間の予定から1日遅れで無事帰宅です。

  中国の道路、建物、空港、携帯、コンピューターなど、この10年の間の物的インフラの発展には目を瞠りました。 しかし、その一方、社会的格差、組織人と個人のマナーなど心的基盤の荒廃には胸が痛くなりました。

  出入国手続きのスローぶり。空港で3時間4時間待ち、搭乗してからも機内での1時間2時間待ちの繰り返し。どこでも何の説明もお詫びもないまま。 そして、10日夕、北京空港の機内で 「あとは成田」 とほっとしたところ、いきなり 「悪天候で空港閉鎖」 の宣告でした。

  深夜運び込まれたホテルで、一部屋に3人詰め込まれました(小生は、「他の紳士との相部屋は hate」 と粘り、「満室」 と突っぱねていたホテルから、 やっと午前2時過ぎに一部屋もらいました)。翌朝5時集合。

  この間、ルーム、ロビーを含めて電話は意図的に全面的にシャットダウンされ、外部との通信は不可能。電話が利用できたのは、売店のみ。 そこが閉店したら、まったく陸の孤島置き去りか、囚人扱いでした。 ジャーナリストを自称する小生ですら報道機関との接触を絶たれたのですから、この首都空港の椿事はニュースになりませんでした。ご存知でしたか。

  産業経済と心のあり方とのアンバランスが広がり、今後ますます怖い国になると思いました。 成田に着いてから、ターミナル接続、入管手続き、そして都心へのアクセスと、あまりにもスムーズな流れに感激しました。 日本に住んでいて、当たり前になっていた、こうした日本での人為的作業のきめ細かさ、迅速さ、職員・一般市民の暖かい応対に接すると、 日本は、まさに 「おもてなしの国」 といわれるよう素晴らしい国だと思います。実に、良い体験をしました。

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  中国での個人体験の続き。

  ちょっとしつこいですが、心臓のやわい小生には刺激が強すぎたようでしたので。

  缶詰にされたホテルの良かった点は、内容はともかく、遅くまで食事を十分にとれたことです。 また、外部とのアクセスが遮断されていても、テレビは視られました。しかし、NHK初め国際放送は駄目。 唯一の映画番組は、日本兵が中国民間人を殺戮する内容で、テロップでは、盛んに 「日本鬼」 の文字が踊り、正視に堪えられませんでした。

  帰国後、「パンダは殺された」 「尖閣諸島問題では一戦も辞さない」 などという中国内の発言がニュースになっていることを知りました。 石原都知事のアジに刺激されたのかもしれませんが、国を挙げて反日感情を挑発しているかのような、中国政府の言論、情報コントロールは、 「大人」 の国らしくありません。両国の 「和諧」 (中国政府のスローガン)のために残念を通り越して悲しいです。

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  追記

  北京では、空港からどこのホテルへ運ばれたか、泊まったか、だれもわかりませんでした。というのは、すでに現地ガイドとは別れてしまった後でしたから。 運ばれた先のホテルは、「北京XX君X大酒店」 あるいは 「北京X栄君華大酒店」(注:Xは中国簡体字) とあって、日本人には読めなかったのです。 一人で一所懸命頑張った日本人添乗員は英語が堪能でしたが中国語は不可。ツアーメンバーには 「Golden Phoenix Hotelです」 と伝えましたが、 日本の留守宅にはホテル名の連絡は入りませんでした。

  帰国後、インターネットで検索したら 「北京豊栄君華酒店」 というのが出てきました。これですね。 HPでは、麗々しく 「国内長距離電話 国際電話 インターネット接続 110V電源 冷蔵庫…」 などと謳っています。 今回は電話料の不払いを恐れて、あえて遮断したのでしょうか。

  全員(16人)良くも無事で帰って来られた、と改めて胸をなでおろしています。パスポートはもちろん、チケット、出入国カード、 ボーディングカードなど多くの書類を、少数民族地域や空港で頻繁に提示しました。メンバーの一人が、そのひとつでも失くしたら、どうなったでしょうか。
  現に、初日、北京空港で入国手続きを終えた後、提出した小生のチケット半券がなくなっているのに気付き、検査ボックスに戻ってクレームをつけたら、 なんと、検査官が椅子の下に落としていたのです。ぞっとしましたが、係員は笑っていました。

  珍談、椿事には事欠きませんでした。なかなか平常心に戻れませんので、深夜に、再度メールしました。ご容赦ください。 気分転換には、四姑娘山系の峠のお花畑の写真と愚句をご覧下さい。富士山より高く、期待通り清明な空気でした。

  一万尺越ゆれば夏の花震へ 猛
(2012年7月12日夜から13日未明にかけて、友人に送ったメールです)